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海外で広く認知されているソーシャルグッドの概念が、日本でもじわじわと注目されている。ソーシャルグッドは現代を生きる人々に欠かせない意識であり、企業や個人としての取り組みが求められている。本記事では、ソーシャルグッドについてわかりやすく解説。取り組むメリットや企業事例も紹介する。
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ソーシャルグッドとは、社会に対してプラスの影響を与える活動や製品・サービスを指す。地球環境を考えてのボランティア活動や地域コミュニティに配慮したエシカルな商品などをイメージするといいだろう。
近年は、地球や社会のための姿勢や取り組みを「ソーシャルグッドな〇〇」と表現することも多い。ソーシャルグッドの概念がおよぶ範囲は広く、製品やサービスだけにとどまらない。ソーシャルグッドの考え方が浸透しはじめている現代、経営やマーケティングの領域にソーシャルグッドを絡めて取り組んでいる企業も少なくない。
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ソーシャルグッドは2010年頃に誕生し、世界的に少しずつ浸透してきた言葉とされている。いま、ソーシャルグッドが求められる背景にはさまざまな情勢が関係しているが、ここでは3つ紹介しよう。
2015年9月に国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」は、ソーシャルグッドと関わりが深い。SDGsが採択されたことで、世界共通の目標を達成するために、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みが広まっている。
SDGsを達成するためには、企業を含め、一人ひとりのソーシャルグッドなアクションが欠かせない。2030年のSDGs達成年に向けて、世界中で、ソーシャルグッドな考え方にのっとった取り組みが加速しているといえる。
地球温暖化や海洋汚染、森林破壊などの地球環境問題が世界的にも深刻化しており、早急な対応が求められている。貧困や飢餓といった社会問題も同様で、世界的に取り組むべき課題として問題視されているのが現状だ。
これからも地球上で豊かに暮らしていくためには、地球や社会をよりよくするためのソーシャルグッドな取り組みが必要だ。課題意識を持って、できることから積み上げていくことで、着実に未来は変わる。
海外では、ソーシャルグッドが浸透している国も多い。とくにヨーロッパでは、生活のなかでもビジネスにおいても、ソーシャルグッドの認知が広がっており、人々の行動と紐づいている。
この流れは、日本でも今後広がっていくと考えられる。ソーシャルグッドな意識を持った生活者によって、ソーシャルグッドな企業が評価される時代がくるだろう。「時代遅れ」にならないためにも、いまが舵を切るタイミングなのかもしれない。
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日本におけるソーシャルグッドの現状を見てみよう。ソーシャルグッドを取り入れる企業が増えつつあり、成果がある一方で課題も残されている。
近年、ソーシャルグッドな商品や取り組み、企業を選定し、表彰するイベントが複数開催されている。このことからも、日本においてソーシャルグッドな企業が増えてきたことがよくわかる。
「ソーシャルプロダクツ・アワード」は、持続可能な社会の実現につながるソーシャルプロダクツに特化して、社会性と商品性の両面を評価する表彰制度。エコ、オーガニック、フェアトレード、寄付、地域の活力向上、伝統の継承・保存、障害者支援、復興支援などに関連する人や地球にやさしい商品・サービスが対象だ。2012年から「一般社団法人 ソーシャルプロダクツ普及推進協会」が主催で行われている。(※1)
ほかにも、ソーシャルグッドなクラウドファンディング「For Good」が主催で社会をよくする取り組みを選定する「For Good アワード」(※2)、各企業のプレゼンテーションによって注目企業を選定する「ソーシャルグッド・カタパルト」などが開催されている(※3)。
株式会社電通と電通総研が、日本・イギリス・アメリカ・中国・インドの5カ国において実施した「ソーシャルグッド意識調査」によると、各国とも企業のソーシャルグッド活動への共感層が多数派ではあるものの、日本は全体的に反応が低めということがわかっている。とくに、商品を購入して応援する分野への意識が低く、他国に比べて遅れをとっている状況だ。
一方で、SNS利用との関連性の調査では、日本においては、SNS投稿頻度が高い層のソーシャルグッド意識が高いこともわかっている。(※4)今後、SNSの影響でソーシャルグッドの意識が広がることも考えられるだろう。
ソーシャルグッドな発信には、多様な視点や配慮が必要とされる。過去には、メッセージ性の強いCMに対して賛否を巻き起こしたケースもある。紐づく課題がセンシティブであればあるほど、受け手が発信者の意図と異なる受け止め方や読み解き方をしたときに、ネガティブな反応が出る可能性が高くなる。とくに、プロモーションの領域においては発信のハードルが高く、敬遠する企業も多いだろう。
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世界的にも日本でも、ソーシャルグッドを意識した企業が増えてきている。企業がソーシャルグッドに取り組むメリットとは何だろう。以下で3つ挙げる。
1つ目は、企業イメージが向上する点だろう。ソーシャルグッドな取り組みは、社会に貢献できるだけでなく、同時に、社会貢献に積極的な印象を世間に与えることが可能だ。サステナビリティを重視する層やエシカルな価値観を持っている層が増えている現代、社会課題を解決に取り組む企業は好感度が高いといえる。ソーシャルグッドな企業になることで、ブランド力を強化でき、新しい顧客の獲得にもつながるだろう。企業のイメージが向上すれば、人材の確保や資金調達もスムーズになるかもしれない。
ソーシャルグッドは、CSVの考え方と通じるものがある。CSV(Creating Shared Value)は「共通価値の創造」と訳される、経営戦略に関する概念だ。社会課題の解決に取り組むことで、企業価値も高める考え方であり、社会価値と企業価値の両立を意味する。
2つ目は、新しい視点をビジネスに取り入れられること。ソーシャルグッドに取り組むために新しい知見を手に入れることで、より広い視点でビジネスを進められるようになるだろう。取り組んだことのない領域や社会貢献度の高い事業へのチャレンジが叶うかもしれない。
また、環境問題や社会問題に積極的に関わることで、これまで関わったことのない企業との接点が生まれる可能性も大いにある。
3つ目は、従業員のモチベーションが上がり、エンゲージメントが向上することだ。ソーシャルグッドな活動に共感する人が増えており、社会貢献度の高い企業に属していることはモチベーションに直結する。
従業員がやりがいを感じて働けば、生産性が上がるだろう。結果的に業績へも影響する。離職率の低下につながれば、採用コストも軽減できる。
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以下では、ソーシャルグッドに取り組む企業の事例を5つ紹介する。さまざまな企業の取り組みからヒントを得よう。
妊娠・出産・育児に関する情報を発信している「たまひよ」は、「たまひよとつくるこどものミライ」を新設。子どもたちの未来のために何かしたいと考える人向けに、ソーシャルグッドな活動に関する内容をメインで発信している。男性の育児休業問題や貧困事情、難病治療などテーマは多岐にわたり、幅広い情報の提供を通して読む人に考える機会を与えることが目的だ。(※5)ベネッセは、この取り組み以外にも、学習環境支援や障がい者支援など、多くの社会貢献活動に力を入れている。
社会問題をビジネスで解決するソーシャルビジネスを通じて、より良い会社を築いていくことを使命とする株式会社ボーダレス・ジャパン。国内外でさまざまな分野の30以上のソーシャルビジネスを展開している。
循環型社会を実現するための「LFCコンポスト」や、失業率が高いバングラデシュで雇用を創出するための「ビジネスレザーファクトリー」、障がいの有無に関わらず活躍できる社会を目指す「UNROOF」など、事業内容はさまざまだが見ている方向は同じだ。社会にとってより良いことを追求し、持続可能な社会を実現するために挑戦し続けている。(※6)
ビジネスと社会貢献を両立することを大切にしているスターバックス。「人」「地球」「コミュニティ」の3つを軸に、店舗に訪れる人も含め、関わるすべての人と一緒になってさまざまな取り組みを実践している。
代表的な取り組みのひとつが「エシカルな調達」。スターバックスでは「C.A.F.E. プラクティス」というプログラムを通して、生産者と地球に配慮したコーヒー豆の調達を行っている。毎年9月8日から10日と毎月20日には、生産地とのつながりに思いを馳せる「Ethically Connecting Day」を実施。これからもずっとおいしいコーヒーを楽しみ続けるための取り組みだ。(※7)
「無印良品」を展開する株式会社良品計画では、2018年2月にソーシャルグッド事業部を発足。地域の活性化を目的とした新規事業を担当する部署であり、手がけるプロジェクトは、自社商品の販売にとどまらない点が特徴だ。
千葉県鴨川市の「里のMUJI みんなみの里」は、地元の農産物直売所を兼ねている。また、「無印良品 直江津」では、移動販売の取り組みを実施。高齢化やコロナ禍の課題に向き合ったプロジェクトであり、生鮮品を取り扱わない点や運行を地元のバス会社に委託する点で地域経済に貢献する仕組みを徹底している。(※8)
良品計画が目指すのは「感じ良い暮らしと社会」。ほかにも、自治体や地域住民を主役とする数々の取り組みを推進している。(※9)
株式会社ユーグレナは、バイオ燃料の研究開発や18歳以下のCFO(最高未来責任者)を募集する先進的な経営などで、たびたび注目されている。そんな同社が2014年4月から取り組んでいるのが「ユーグレナGENKIプログラム」。創業のきっかけとなったバングラデシュの子どもたちが抱える栄養問題を解決するためのプロジェクトであり、栄養豊富なユーグレナが入ったクッキーを提供するというものだ。活動は、対象商品の売上の一部を協賛金として充てることで運営されている。2023年4月時点での配布数は累計1,500万食を突破した。(※10)
世界ではすでに浸透しているソーシャルグッド。日本でも徐々に意識が根づきはじめており、大企業をはじめ、さまざまな企業がソーシャルグッドな体制へと移行している。ソーシャルグッドな意識を持つ生活者も増えてきたいま、サービスや商品を選択するときの基準として、企業の姿勢が含まれてきていることをおさえておきたい。
ソーシャルグッドな企業になるために、何からはじめればいいか迷う場合は、伴走してくれるパートナーを探してみるのもひとつの手だ。「ELEMINIST」では、サステナブル・エシカル分野の知見を活かした視点やプロモーション戦略の立案を通して、さまざまな企業の事業活動をサポートしてきた。事例は以下のページにまとめているので、興味がある場合はチェックしてみてほしい。
参考
※1 ソーシャルプロダクツ・アワード|一般社団法人 ソーシャルプロダクツ普及推進協会
※2 【FOR GOODアワード2022】2022年を代表する受賞プロジェクト及び各部門賞を発表|For Good
※3【予告】「ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決に挑戦-」に登壇する14名をご紹介!2月17日はライブ中継あり!(ICC FUKUOKA 2022)|INDUSTRY CO-CREATION
※4 電通と電通総研、ソーシャルメディア利用×ソーシャルグッド意識の5か国調査を実施|dentsu
※5 「たまひよとつくるこどものミライ」で、ソーシャルグッドな活動を発信しています!|株式会社ベネッセ ホールディングス
※6 ボーダレスとは?|BORDERLESS
※7 ETHICALLY CONNECTING DAY 想いをつなぐコーヒー|STARBUCKS STORIES JAPAN
※8 無印良品、ソーシャルグッド事業部は何をしているのか|日本経済新聞
※9 地域社会とのつながり|株式会社良品計画
※10 ユーグレナGENKIプログラム|ユーグレナ
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