バルセロナの緑化計画 気候変動への対応と市民のメンタルヘルス改善が目的

緑地化計画が進められるスペインのバルセロナ

Photo by Miquel Migg on Unsplash

スペインのバルセロナでは緑化計画が進められている。2037年までに市の表面積の30%を樹木で覆う予定だ。緑地を増やすことで、気候変動に対応し、市民のメンタルヘルス問題の減少に役立てる目的である。

今西香月

環境&美容系フリーライター

慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中

2023.06.21
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2037年までに都市の樹木被覆率を30%へ

ヨーロッパ有数の人口と交通密度の高さで知られるスペインのバルセロナ。そんな同市は、2017年から2037年までの都市樹木に関する基本計画を進めている。

2037年までに市全体の樹木被覆率(樹木に覆われる地面の割合)を5%増加させ、市の面積の30%を樹木で覆う計画だ。樹木被覆率を高めることで、都市環境と市民の健康福祉を改善する意図がある。

自然環境とメンタルヘルスの関係

近年の研究で、都市部に多くの木を植えることで気温が下がり、猛暑や熱波に関連する死亡者数の減少につながる可能性があることがわかっている。

さらにバルセロナでは、樹木を増加させることで、3万人以上の市民の健康が改善され、抗うつ薬の使用も減少。その結果、メンタルヘルスに関連する年間コストが4,000万ドル(約56億円)以上節約できる見込みだ。

研究報告によると、人々が緑地、公園、自然保護区から300メートルのエリアに住むだけで、満足感と幸福感が高まることがわかっている。緑が30%以上ある都市部の地域に住むと、緊張感や絶望感などの心理的苦痛が生じる可能性が低くなるという。また、木にとまる鳥を観察できる環境下にある人々は、うつ、不安、ストレスの軽減が見られ、憂鬱な気分も改善されやすいそうだ。

いわゆる森林浴や森林セラピーのような効果があり、幸福感を高めたり、心拍数や血圧が下がったりするため、心身の健康にもいい。

車道をベンチ・花壇へ

現在、バルセロナ市は大気汚染が深刻なバルセロナの通りで、歩行者と自転車の交通を優先させる工事を行っている。これまで車道だった多くのエリアが、花壇やベンチになるそうだ。

緑化について調査している研究者たちは、こうした取り組みが同市でのメンタルヘルス問題の症例数減少につながると確信している。

公園や庭園といった緑地は、美的な景観を与えるだけでなく、リラックス効果をもたらし、医療や健康増進の観点からも重要である。先進国、途上国を問わず、心理的幸福感の高い社会の実現に向けて、戦略的に都市緑化を進める必要があるだろう。

※参考
Barcelona’s Plan to Increase Urban Tree Cover|Happy Econews

※掲載している情報は、2023年6月21日時点のものです。

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