2023年3月18日に、味の素スタジアムにて「台所から始まる栄養循環 はじめてのコンポストとガーデニング講座」が行われました。初めて家庭菜園やバッグ型コンポストにチャレンジしたい人を対象としたこのイベントは、応募が殺到したことで定員を増やすほどの大盛況に。今回はこちらのイベントレポートとともに、味の素スタジアムや味の素グループのサスティナビリティに対する取り組みについて紹介します。
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エレミニスト編集部
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ごみ分別の最後に残る生ごみは、そのほとんどが水分なので、処分するために多くのエネルギーを必要とします。そのため大量の化石燃料を使用しなければないことから、エネルギー効率が悪く、環境負荷が大きいことが問題となっています。
そこで家庭でできる生ごみ削減対策の一つがコンポストです。コンポストとは、家庭からでる生ごみや落ち葉、下水汚泥などの有機物を、微生物の働きを活用して発酵・分解させて堆肥をつくることをいいます(※堆肥をつくるための容器を指すこともあります)。
コンポストをすることで、生ごみを捨てる手間がなくなったり、栄養豊富な堆肥を自作できたり、その堆肥を使って家庭菜園に活用できたりと多くのメリットがあることから、ここ数年で改めて見直されるようになりました。
家庭用コンポストに注目が集まってはいるものの、設置スペースやニオイ問題などを心配し、ハードルが高いと感じている人も少なくありません。そこで初めての人でもわかりやすく学べるようにと、「台所から始まる栄養循環 はじめてのコンポストとガーデニング講座」が開催されました。
本来の定員は50名でしたが、応募が殺到したため、急遽70名での開催になりました。
当日はバッグ型コンポストで知られる「LFCコンポスト」のスタッフによる「LFC講座『初めてのコンポスト講座』〜始めよう、すてない暮らし〜」を開講。楽しみながら継続してコンポストをやってほしいという思いから、コンポストの社会的意義や、LFCコンポストの使い方について実演を交えながら説明されました。
「LFCコンポスト」はトートバッグ仕様の都市型コンポスト。バッグのなかに備え付けの基材を入れて、日々生ごみを投入してかき混ぜて熟成させるだけという手軽さから、昨今人気を集めています。マンションのベランダでも簡単に始めることができるので、コンポスト初心者にもぴったりです。
参加した方々の感想はどのようなものだったのでしょうか。
「私が田舎育ちで、食べたあとに出た生ごみを畑に投げるような生活をしていたんです。『これで野菜がおいしくなるんだよ』とおばあちゃんがよく言っていた意味が、今回娘もわかったみたいなので良かったと思います」「学校でSDGsの授業を受けて、環境にやさしい生活に興味をもつようになりました。できた堆肥でさつまいもを育ててみたいです」(親子で参加したお母さん)
「回覧でイベントのことを知り、いい機会だと思って参加しました。いままでコンポストについて調べたことはなかったのでとても面白かったですし、息子も興味を持ったみたいです。できた堆肥で夏野菜を育ててみたいですね」(お母さん)
「ラグビーのイベントには来たことがあったけど、こういうイベントは初めてだよ。生ごみがたいひになるのは知らなかった。おねえさんたちが言っていたことはだいぶわかったよ」(息子さん)
メモをとる姿は真剣そのもの。「ふだんの勉強もこのくらい真剣だったらいいんですけどね(笑)。きっと今回は興味を持ったんでしょうね」とお母さん。
年間約50試合が行われる味の素スタジアム。2022年度にはサッカーが44試合、ラグビーが9試合行われた。コロナ禍前の年間来場者数は170万人以上(2018年度は約174万人)。
味の素スタジアムでは、2019年の豪雨災害で近くの多摩川が氾濫したのを目の当たりしたことで、自然災害への危機意識を一層強くもつようになりました。また、環境問題に対する世界的な動きや、東京都が「ゼロエミッション東京」の実現を目指すために本格的に動き出した背景もあり、環境や資源循環に関連する取り組みをしていかなければという想いが生まれました。
そこで、まずはトイレの水にろ過した雨水を利用するなどの施策を始めた結果、1.2万トンの水使用量を削減することに成功。この流れで、太陽光パネルの設置も進めます。さらにイベント開催時に売店から出る飲食廃棄物に着目し、食品ロス問題について考えるようになりました。味の素スタジアムでは、コンポストをすることで少しでも生ごみを削減していこうと、これまで2基のみだったスタジアム内のコンポストを、2023年3月に5基にまで増設(2023年秋頃には10基まで増設予定)。ゆくゆくは、そこでできた有機肥料を近隣地域の方々にも還元したいと考えており、その一環として今回のイベント「台所から始まる栄養循環 はじめてのコンポストとガーデニング講座」が開催されることになりました。
このように、味の素スタジアムはサステナビリティを促進していく場所として、さらには生活者の方々とつながるハブとなるように、さまざまな取り組みをしています。
味の素スタジアムの敷地内にある、あじペン広場に設置されたコンポスター。場内の飲食廃棄物を堆肥化している。
前述のとおり、場内売店で出た飲食廃棄物は、一部をコンポストで堆肥化して場内の植栽に活用しながら、近い将来には近隣の方々への配布を目指しています。ひと月に使うコンポスターは5基のうちの1基。いっぱいになったら熟成させるため、翌月には次のコンポスターに投入します。コンポストで処理できない分量の生ごみは、生ごみ処理機を通して微生物の力を借りながら液状化しています。
また、生活者の方々のWell-beingを積極的に推し進めるためにもさまざまな施策を行なっています。例えば、野菜の摂取目標1日350g以上の実践を応援する「ラブベジ®」、うま味やだしをきかせた“おいしい減塩”を提案する「Smart Salt(スマ塩)」といった味の素株式会社のプロジェクトを、スタジアムの場内売店のメニューにも採用。食事を楽しみながら自然と健康に近づけるような工夫をしています。
さらにスタジアムの外周は1周約1kmのウォーキングコースになっており、開門されている午前9時〜16時半の間はいつでも利用可能です(スタジアム休館日およびイベント開催日除く)。ところどころにQRコード付きのボードがあり、歩きながら「ラブベジ®」「Smart Salt(スマ塩)」などの健康情報を見ることができます。
「台所から始まる栄養循環 はじめてのコンポストとガーデニング講座」の後には、ふだんは見られないスタジアムの裏側を観覧できる“味の素スタジアム見学ツアー”が行われました。
味の素スタジアムは、近隣の生活者の方々とのタッチポイントとしての機能を果たすべく、サステナビリティやWell-beingに対する取り組みを通じて、さまざまな施策の実施やイベントの開催をしています。まずはコンポストの有機肥料を完成させて近隣の方々に配布するという目標を掲げつつ、秋にはスタジアム内の落ち葉を腐葉土にして還元することも考えています。よりよい環境づくりのために、味の素スタジアムの“ToDoリスト”は、今後も更新されていくことでしょう。
味の素グループのサステナビリティに対する取り組み
取材・執筆/河辺さや香 編集/後藤未央(ELEMINIST編集部)
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