悪名高き刑務所がグリーンエネルギーハブへ NY市の脱炭素化を促進

ソーラーパネルが並ぶ様子

Photo by American Public Power Association on Unsplash

2027年に完全閉鎖されるニューヨーク市ライカーズ島刑務所。その跡地をグリーンエネルギーハブとしてリユースする計画が進行中だ。環境面の利点はもとより、元受刑者の就職を促す訓練機関としての機能もある。

今西香月

環境&美容系フリーライター

慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中

2023.02.03
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2027年の閉鎖後 再エネハブに変える新計画

アメリカ・ニューヨーク市、イースト川のほとりに浮かぶライカーズ島刑務所をご存じだろうか。暴力や虐待、ネグレクトといった劣悪な環境で長年恐れられてきた、米国屈指の悪名高い刑務所だ。2027年の完全閉鎖後、その跡地をグリーンエネルギーハブに変える新計画が進んでいる。

刑務所と島の所有権を、ニューヨーク市矯正局から市全体の行政サービス局に移管することで、400エーカーの土地を太陽光エネルギーや、リサイクル・コンポスト、廃水処理などの設備に再利用できるようになる。

これにより、クイーンズとブロンクス地区の貧しい地域にある発電所と下水処理施設が撤去され、182エーカーにおよぶコミュニティースペースが解放される。非営利の市民団体であるRPAのバイスプレジデント、モーゼス・ゲイツ氏は以下のように述べている。

「新しいエネルギー施設と廃棄物施設の建設は、ニューヨーク市が脱炭素化の目標を達成するためのまたとない機会だ。イースト川沿いの環境汚染が減少し、近隣コミュニティが健全化され、ウォーターフロントに沿った緑地利用の準備も整うだろう」

加えて、この計画はニューヨークの脱炭素化に役立つだけではない。元受刑者に就労機会を創出するという面も担う。コンポストやリサイクル、太陽光発電設備の設置や修理に関するスキルの提供やトレーニング機関もあるという。

刑務所跡地で持続可能なまちづくりへ

今回紹介したニューヨーク市のように、世界でも刑務所跡地をリユースする事例がある。

例えば、オランダ・アムステルダムでは閉鎖したベイルマーバーエス刑務所の跡地が、オランダ屈指のサーキュラーエコノミー都市として生まれ変わる計画が進行中だ。刑務所の建物を解体して出た廃材の約98%を再利用し、サーマルグリッドと呼ばれる熱交換システムなども導入される。

刑務所跡地は負の遺産と捉えられる側面がある。しかし、一定の広さがある土地であることから、持続可能な街づくりや社会課題の解決に活かすことも十分可能だ。その地域が、グリーンエネルギーに大きく舵を切るひとつの機会になると考えられる。

※掲載している情報は、2023年2月3日時点のものです。

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