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「レスポンシブルツーリズム」や「責任ある観光」と聞くと観光客が何かしら”我慢する”というイメージが浮かぶ方が多いのではないだろうか。本記事では、沖縄県竹富町西表島の取り組みを通して、観光客が我慢するだけではなく楽しめる持続可能で新しい観光の可能性について、考えてみたい。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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西表島では、文化を知るために伝統的な民具作りも体験することができた。今回、西表島一番の民具作りの達人、星さん(通称のーじ)に、昔から島の子供が作っていた、植物一本だけでできるおもちゃの作り方を教わることができた。出来上がりには様々なバリエーションがあるのに、実際に作ってみると、その基礎となる植物の扱いがほとんど同じだということに驚く。同じように草を整え、同じように草を編んでいき、あくまで最後のアレンジで、あっという間に全く違うものができるのだ。「大人に教わったんじゃないんだ。子どもたちが、自分たちで考えて教え合ったんだよ。必要なものは、自然からもらって、なんでも自分たちで作った。赤ちゃんが眠るかごも、作ったなあ」と思いを馳せた。その顔からは、大人になっても変わらず、心から西表の植物との関わりを楽しむ西表島んちゅの姿がそこにあった。
ニュージーランドをはじめ、様々な地域を旅し、先をいく知床の事例を学んで一般財団法人西表財団*6を立ち上げたメンバーの一人、徳岡さんは「私も始めは、自然を目的に西表島にやってきました。でも、本当にこの島に魅了されたのは、文化を知ってから。独特の文化があまりにも素晴らしく、のめり込んでしまい、住み着いてしまいました」と語る。西表島は、エコツーリズムを日本で初めて提唱した場所*7でもあり、兼ねてから自然と共にある文化が根付いていた。この財団では、この美しい島民生活を守りながら観光業を両立するため、行政と共に日本で初めてとなるガイドの免許制度を整備するなど、島民が中心となって、納得いく形の観光業を目指している。まさに、責任ある観光の道標となる活動だ。
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事務局長の徳岡さんも、この島に魅了されたひとり
ここまで紹介してきた通り、自然と向き合ってきた島民たちの暮らしは、限りなくサステナブルに見える。しかし充分に持続可能かと問われると、答えはNOのようだ。その答えは、世界中から漂流するごみで溢れるビーチが教えてくれた。
前編でも登場したベテランネイチャーガイドの森本さんは、「自然体験は人生の縮図だからね」と口癖のように私たちに語りかける。溢れる緑の中で見逃してしまいそうな小さな命ひとつひとつに手を止めて、愛おしそうにその生態や歴史について説明してくれる。森本さんの手にかかれば、短い山道が宝箱のようだ。「知るということが、大切なんです。自然は美しいというだけじゃない。毒を持っていることもある。相手を知らなければ、自然と一緒には生きていけない」単に見るだけでは分からない島の魅力は、一歩踏み込んで知ることから始まるという。「自然は自由だということも知ってもらいたい。自然には決まりごとなんてないんですよ。真っ直ぐじゃなくてもいい、色々生き延び方があっていい。西表島の植物を見ればよく分かります。まさに人生を教えてくれています」
今回の取材を通じて、今まで持続可能な観光とは「できるだけ自然に関わらない」ことだと思い込んでいた自分に気がついた。人間が少しでも入り込むと、自然が壊れてしまうと思っていたが、ここ西表島では、例えば適度な木の伐採や稲作などを通じて、当たり前に自然の循環の中に人間が入り込んでいる。むしろ、人間が入り込まなくなったことでまた循環のバランスが崩れているところも目にすることができた。
また、観光の概念そのものが「造られた楽しさ」を味わうことから、「暮らしのおすそ分け」を有り難く受け取ることへとシフトしていくのではないかと感じた。
観光地にとって良い観光客になるためには「より正しい知識を得る」ことが大事になる。単純に金額や写真映えでガイドやオプショナルツアーを選ばず、地元愛溢れるベテランガイドから、本当の島の姿を伝え聞いて、体験してもらいたい。そして「積極的に知ること」こそが、責任ある観光へ繋がる希望となるのだ。
さあ、次は、どこへ行く?
撮影/uma
企画・取材/田畑珠理(ELEMINIST編集部)
編集/後藤未央(ELEMINIST編集部)
※出典
*1 一般社団法人 西表財団ホームページ
https://iriomote.or.jp/
*2 NPO法人 西表島エコツーリズム協会ホームページ
https://www.iriomote-ea.com/
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