Photo by Climeworks
スイスのClimeworks(クライムワークス)は、大気中の二酸化炭素を回収し、石に変えて地中に埋める技術を開発。第三者機関による認証を受けた信頼度の高い技術として注目されている。すでにマイクロソフトとは10年のオフテイク契約を締結し、1万トンの二酸化炭素を除去する予定だ。
神本萌 |Moe Kamimoto
フリーランスライター
大学時代に南アジア文化を学んだことをきっかけに、環境や人権の問題に関心を持つ。それ以降、より自分と地球にやさしい暮らしを目指して勉強中。趣味は写真。
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アイスランドにあるクライムワークスの施設。
地球温暖化の主な原因といわれる二酸化炭素。温暖化を食い止めるため、その排出量を減らす取り組みが世界各国で行われている。
それに加え、いま、大気中の二酸化炭素を回収する技術が注目されている。その先駆者といわれているのが、スイスの企業、Climeworks(クライムワークス)だ。
同社は、大気中の二酸化炭素を直接回収する「Direct Air Capture(DAC)」と呼ばれる技術を採用している。具体的には、扇風機のような装置で空気を吸い込み、フィルターを通して二酸化炭素の粒子を集める。
Photo by Climeworks
集めた二酸化炭素を100℃まで加熱し、二酸化炭素分子を分離。これを水に溶かし地中に送る。すると周囲の岩石と反応し、およそ2年後には石(炭酸塩鉱物)へと変化するのだ。このプロセスは、自然界で起こる炭素鉱物化という反応を再現しているため安全性も高い。
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大気中から集めた二酸化炭素でできた石。
同技術は、アイスランドのスタートアップ企業、Carbfix(カーブフィックス)との協力で開発された。2023年1月には、第三者機関である独立監査法人DNVの認証の検証で、その技術が確認されたことで、一気に世界で話題となっている。
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クライムワークスのスイスの施設。
クライムワークスの技術には、世界中から期待が集まっている。その証拠に、マイクロソフトやShopify(ショピファイ)などの大手企業や、数々の投資家から資金を集め、技術革新を続けてきた。
そして2022年には、マイクロソフトと10年間のオフテイク契約を締結。同社はマイクロソフトにとって、初の長期契約を結んだ二酸化炭素回収企業である。クライムワークスは、マイクロソフトに代わって1万トンの二酸化炭素を除去する。
マイクロソフトは、2030年までにカーボン・ネガティブを実現し、2050年までにこれまで排出したCO2をすべて取り除くという目標を掲げている。クライムワークスは、この野心的な目標を達成するための重要な役割を担うだろう。
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クライムワークス創業者のクリストフ・ゲバルド氏(左)とジャン・ブルツバッカー氏(右)。
クライムワークスではアイスランドに、2つめの施設を建設し、年間3万6000トンの二酸化炭素を回収する予定だという。世界で日々排出されている二酸化炭素の量から比べると、ごくわずかではあるが、二酸化炭素の回収技術に今後も注目したい。
※参考
Climeworks
Swiss company that counts Microsoft as a customer says it’s removed CO2 from the air and put it in the ground|CNBC
Climeworks becomes first supplier of long-term, technology-based carbon removal to Microsoft, as the companies sign a 10-year offtake agreement|Climeworks
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