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ベルギーで、美容室で出る髪の毛を回収し、環境汚染物質を吸着させるマットが開発された。これまで廃棄されていた髪の毛を再利用する新しい選択肢について紹介する。
今西香月
環境&美容系フリーライター
慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中
知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート
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日本では、美容室でカットされた髪の毛は、事業系一般廃棄物として回収業者に処分してもらう流れが一般的だ。近年ではヘアドネーションとして髪の毛を寄付するケースも増えているが、処分されるケースがほとんどだろう。
そんななか、ベルギーの非営利団体Dung Dungが行う「ヘアリサイクルプロジェクトでは、循環経済をサポートする廃棄物回収スキームを開発。髪の毛を利用して、環境汚染物質を吸着させる素材に加工する取り組みを進めている。
髪の毛は1㎏で7〜8Lの油と炭化水素を吸着する可能性があるという。また水溶性で伸縮性に優れているほか、髪の毛は自身の重さの最大1,000万倍まで支えられる特性があるそうだ。
そこで、美容室から回収した毛髪をマットに加工して、排水溝に設置。水質汚染につながる油や炭化水素などを、川に流れる前に吸着しようという試みだ。
このような毛髪を利用したマットは、これまでに世界の多くの都市で、実用化されているという。ベルギーでもこのプロジェクトが一般的になっていけば、他の国やエリアに広がる可能性は十分にあるだろう。
これまで廃棄されていた髪の毛は、今回紹介したマット以外にも、さまざまな場面で活用されている。例えば、髪の毛は窒素を豊富に含んでいるため、肥料として利用可能だ。
さらに、多くの企業が毛髪を建築材料に生かす実験を試みているそうだ。ロンドンを拠点とするバイオ製造会社のバイオームは、美容室で廃棄される髪の毛を使って、木材ベースのシート素材や3Dオブジェクトの代替品を製造。
2022年のロンドン デザイン ウィークでは、髪の毛が原料のロープを採用した家庭用品も提案されたという。
人間の髪の毛を単なる廃棄物とみなすのはもったいない。ごみを減らし、資源として再利用する循環型社会の実現が求めらるなか、髪の毛という身近なごみも、うまく活用できるアイデアが今後も生まれていくと期待したい。
※参考
Circular economy: Human hair recycled to clean waterways in Belgium|euronews.green
Belgian NGO Uses Human Hair to Absorb Environmental Pollutants|TECH TIMES
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