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ベルリンのコミュニティビル「Lobe Block」が目指す“未来の建築” あえて2%傾斜、排水設備も不要に

アーティストのスタジオやクリエイターのオフィス、レストランなどが入居するテナントビル「Lobe Block(ローブ・ブロック)」は、ミニマルなコンクリートビルと周りを囲む豊富な自然の中で、アーティストやクリエイターたちが互いに協力し、共有するために誕生した。都会に暮らす私たちにとって、いまこそ必要なライフスタイルのヒントが詰まった場所だ。

2020.08.05

広大な自然とミニマル建築からストレスフリーな生きかたを提唱する

アーティストのスタジオやクリエイターのオフィス、レストランなどが入居するテナントビル「Lobe Block(ローブ・ブロック)」は、ベルリンの中心地とは思えないほど広々したオープンスペースと豊富な自然に囲まれている。

トルコ系やイスラム系移民が多く住むウェディング区に建設され、創設者オリビア・レイノルズさんが提唱する「人と自然と動物が共生できる環境づくり」を目的としたコミュニティビルとして、2018年に誕生した。

この取り組みはロンドンとベルリンのアートを繋げるためのアートプロジェクトとして、スタートした。当時は別の場所でもっと小さなスペースで、無利益で商業目的でないアートを広げるために、両都市のアーティストを交換して活動させるアーティストチェンジプログラムを行っていた。

そこから、完成された大都市ロンドンではなく、未知の可能性を秘めたベルリンだけにフォーカスし、もっと大規模なプロジェクトを手がけたいというオリビアさんの考えにより、現在に至る。
店舗パース

Photo by ©Future Documentation

無駄を削ぎ落とした剥き出しのコンクリートビルをデザインしたのは、ドイツを代表するミニマリストの建築家アルノ・ブランドルーバー、マーカス・エムデ、トーマス・バーロン(Brandlhuber + Emde, Burlon)、マック・ペツェット(Muck Petzet)の4名。

広さ約3,400平方メートルに19戸の部屋、各部屋には南向きに6mの広々したテラスが付いており、ビルは別名”Terrassenhause(テラスハウス)”と呼ばれている。パッと見ただけではわからない、実に多くのエコロジカルな仕かけが隠されており、出入り用のメインエントランスやエレベーターがなく、ビルの両サイドにある階段からのみ各階へ行き来できるのが、このビルの特徴だ。
「パーマカルチャー」を取り入れた有機ガーデン

ビルに隣接する贅沢な広さの有機ガーデン(農園)もLobe Blockのコンセプトに欠かせない重要な場所。当初、一般の人も利用可能なコミュニティガーデン(共同ガーデン)にする予定だったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で計画がストップしてしまった。

そのため、知人の農家に依頼し、「パーマカルチャー」を取り入れた有機ガーデンをデザインしてもらったという。パーマカルチャーとは、パーマネント(永久)とアグリカルチャー(農業)をかけ合わせた造語だ。農業と動物や住居との関係が生態学的にも健全な循環システムであり、経済的にも成り立つことを目指すデザイン手法である。
放し飼いのモルモット

Lobe Blockのガーデンは、有機栽培の野菜や果物、植物が多数植えられ、石造りの大きなファイヤーピット、コンポスト置き場などがある。放し飼いの鶏やモルモット、蜜蜂の巣といった動物も飼っており、都会にある小さなジャングルのようだ。

現在は、創設者のオリビアさんをはじめ、入居者が毎日交代で世話をしているが、のちには、再度コミュニティガーデンとして開放する予定となっている。
各テラスのガーデニングスペース

敷地内に豊富な自然を持つことは、オリビアさんがLobe Blockをつくる際にもっとも重要視した点だ。ビルの各テラスにもガーデニングスペースが設置されており、ビル全体を植物でいっぱいにしたいという夢があるのだという。

電力に頼らないミニマルでサステナブルな建築構造

階段のようなデザインのセットバック建築

Photo by ©Future Documentation

階段のようなデザインのセットバック建築の内部には、エレベーターや自動ドア、エアコンなどの電力を使う設備はなく、南向きに面した一面のガラス窓から差し込む太陽の光がコンクリートを暖める役割を果たしている。
南向きに面した一面のガラス窓

Photo by ©Future Documentation

テラスから吊るされたカーテンは、土木工事で補強・排水用に使用される繊維シートのジオテキスタイルでつくられている。夏は直射日光を防いでクーラーの代わりになり、雨の侵入を防いで防寒の役割りを果たす。

テラスは2%だけ外に向かって傾斜しており、雨が降ると自然と水が流れ落ちるように設計されている。こうすることで水を排出するための設備が不要となる。
オーガニックレストラン「Baldon(バルドン)」

1階には、季節の野菜を使ったメニューを得意とするオーガニックレストラン「Baldon(バルドン)」と隣にはアーティストのアトリエがある。レストランは開放的な吹き抜けの2階建ての店内と、共有スペースのオープンテラスで食事を楽しむことができる。
YOGA at Lobe Block

2階の「YOGA at Lobe Block」では、ベーシックなヨガクラスだけでなく、リズミカルなダンス、ワークショップなども行なわれている。コロナ禍により、スポーツジムが営業できない間にも、ここでは広々したテラスでヨガクラスを行っていたという。
「HUND HUND」の店内

2階の「HUND HUND」は、デザイン、生産、生地、輸送費といった製造過程におけるすべてのコストを消費者に明かすトランスペアレンシーを導入しているファッションブランド。デザイナーズブランドが不要とみなした余剰生地を格安で仕入れて使用しており、そのなかでも質のいいオーガニック素材を中心に選んでいる。
アトリエやオフィス

またLobe Blockには建築家のオフィスやデザインオフィスなどもある。ベルリン・ヴァイセンゼー芸術大学のアーティストはLobe Blockにアトリエを構え、エキシビジョンやインスタレーションを開催している。

女性が活躍できる場所

エルケ・ファラットさん(左)とアナ・ザテラロ・シェンクさん(右)とガーデンの鶏

エルケ・ファラットさん(左)とアナ・ザテラロ・シェンクさん(右)とガーデンの鶏

また、Lobe Blockでは、オリビアさんを筆頭に多くの女性が活躍している点にも注目したい。取材に対応してくれたエルケ・ファラットさんは、最初のアートスペースからオリビアさんと働いている創設メンバーの1人であり、ずっと一緒にプロジェクトを手がけてきた。

同行してくれたアナ・ザテラロ・シェンクさんもオリビアさんが発掘した人材の1人で、オリビアさんは、同じ思想を持つ優秀な女性スタッフをつねに求めているという。

その他、ビルのオフィシャル写真を撮影した”Future Documentation”名義で活動するフォトグラファーで建築家のエリカ・オーフェルメールさんやレストラン「Baldon」のオーナーも女性2人である。

健康を維持するためには、1日の大半を過ごす仕事場の環境は非常に重要である。豊かな自然に囲まれた開放的なスペースで、さまざまな人や植物、動物と触れ合うことができたら毎日がもっと楽しくなるのではないだろうか。Lobe Blockは、現代社会とコロナ時代の狭間に生きる私たちにとって、理想的な環境が揃っているといえるだろう。

Lobe Block(ローブ・ブロック)
https://www.lobe.berlin/
※掲載している情報は、2020年8月5日時点のものです。