世界最大規模を誇るオーガニックフードとナチュナルコスメの国際見本市「ビオファ/ヴィヴァネス」が、ドイツ・ニュルンベルクで開催された。ドイツのオーガニックコスメメーカーをはじめ、世界各地から176社が出展。その現地レポートをお届けする。
宮沢香奈(Kana Miyazawa)
フリーランスライター/コラムニスト/PR
長野県生まれ。文化服装学院卒業。 セレクトショップのプレス、ブランドディレクターを経たのち、フリーランスでPR事業をスタートし、ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積…
「ビオファ/ヴィヴァネス(BIOFACH / VIVANES)」は、これまで毎年2月に開催されてきたが、コロナ禍により2022年のみ例外として7月開催(7月26日から29日)となった。異例の夏開催にも関わらず、世界94カ国から2,276社が出展し、24,000人を超える来場者数を記録。世界規模でオーガニックへの関心がさらに高まっているのを実感した。
今話題のCBDオイルを使用した製品も紹介されていた。
会場となったドイツの「ニュルンベルク・メッセ」は、9つのメインホールと会議室などがある別館、広大な中庭、レストランなどを併設した巨大な敷地面積を誇る。同じ敷地内にありながら、「ビオファ」と「ヴィヴァネス」間の移動のためにバスが巡回していたほど。
9ホール中2ホールが「ヴィヴァネス」の会場となっており、ヨーロッパ諸国をメインとしたナチュラルコスメメーカー176社が出展していた。
ドイツのブラシメーカー「KOST KAMM」のブース。コスメだけでなく、メイクブラシやヘアブラシ専用メーカーも出展。
ナチュラルコスメと聞いて、真っ先に浮かぶのはドイツとフランスが多いかもしれない。だが、残念ながら今回の展示に参加していたフランスのメーカーは少数で、ドイツのメーカーが半数以上を占めていた。
厳しい基準を設けていることで知られるベルギー拠点のオーガニックコス認証機関「ネイトゥルー(NATRUE)」は、”ネイトゥルーパビリオン”として、数ヵ国合同で出展。ここに参加していたのは、イタリアの「オフィチナリ・ディ・モンタウト(Officinali di Montauto)」、ドイツの「ヘイ(Hej)」、スイスの「ヴェディック・アロマ(Vedic aroma)」、ペルー「ミシュキ(Mishki)」の4社のみだ。
ネイトゥルーといえば、「ヴェレダ(Weleda)」、「ラヴェーラ(Laverana)」、「プリマヴェーラ(PRIMAVERA)」といったドイツ、スイスの代表的なオーガニックコスメメーカーが創設した団体である。
しかし、それらの有名メーカーの参加はなく、ネイトゥールに限らず、ヴィヴァネス全体的にマーケット拡大を目指す比較的新しいメーカーが多い印象を受けた。「ビオファ /ヴィヴァネス」はB2B目的であるため、すでに世界的認知とマーケットを持っているメーカーは出展する必要がないのかもしれない。
ヴィヴァネスで、筆者が注目したコスメブランド3つを紹介しよう。
一際目立つ大きなブースで出展していたのが、ドイツの「ビオトゥルム(BIOTRUM)」だ。
「ビオトゥルム」は、自然食品とコスメの研究を続けてきたマルティン・エヴァ―ス氏によって2002年に設立された。乳清の性質と肌への効果に注目し、独自の方法でオーガニックラクト集中活性コンプレックス(発酵した乳清)をベースとした製品を開発。頭からつま先まで身体のそれぞれのパーツに合う専用のケア製品を展開していることでも認知されている。
興味深いのは、デリケートゾーンケア専用の「INTIM」シリーズがもっとも人気だという点だ。ソープだけで3種類あり、その他に、保湿、デオドラントスプレーなど豊富に取り揃えている。オーガニックコスメ大国ドイツであってもここまでデリケートゾーンに特化した製品をシリーズ化しているメーカーは珍しい。
ビオトゥルムのデリケートゾーン専用「INTIM」シリーズ。
「INTIM」シリーズは、オーガニック乳清から抽出されるラクトインテンシブアクティブコンプレックスを高濃度に配合していることから保護機能をサポートし、カモミールとキク科のハーブ、カレンデュラのエキスによって刺激や赤みを和らげる効果があるという。
また、赤ちゃんからお年寄りまで年齢問わず誰でも使用することができる点も利点だ。事実、「ビオトゥルム」の製品はすべてドイツ国内で製造され、合成香料、染料、シリコン、パラフィン油など身体に有害な物質を一切使用していない。さらに、BDIH、COSMOS Natural、ICEA、Nature Thanxといったオーガニックコスメに関する厳しい認証基準を満たしている。
ミュンヘン発の「キア・シャルロッタ(KIA CHARLOTTA)」は、スキンケアコスメが大半を閉めるドイツのオーガニックコスメ業界において、メイクアップとネイルケアに特化した希少なメーカーだ。ドイツには、100%オーガニックでヴィーガンのスキンケアは安価なものから高級なものまで、充分過ぎるほど揃っている。
しかし、メイクアップとなると数えるほどしかない。ドイツ人女性の多くは、スッピン、もしくは、ナチュラルメイクを好む傾向にあるという”お国柄”が影響している可能性も否めない。
そんななかで誕生したのが「キア・シャルロッタ」だ。創設者のキアは、100%ヴィーガンで、良質かつ適正価格のメイクアップコスメがないことを理由に、自身でブランドを立ち上げることを決めたという。
「キア・シャルロッタ」の一番人気のネイルリペアとネイルオイル。
同メーカーは、ベルリンでも大手ドラッグストア「dm」やコスメチェーンの「DOUGLAS」などで一部取り扱いがあるが、現在はまだオンラインが主流。ドイツ全土で市場を広げていきたいとのこと。
「オフィチナ・ナトゥーレ」メンズのシェービングケアシリーズ。
賑わいを見せていたのはイタリア発の「オフィチナ・ナトゥーレ(Officina naturae)」のブース。2004年にイタリアのリミニで設立され、ヘアケア、スキンケア、ボディケア、オーラルケアといった全身のケア製品から、洗剤、ペット専用のケア製品に至るまで幅色く展開している。
今回、同メーカーが大きく紹介していたのが、タブレット型歯磨き粉だ。まだ馴染みが薄いかもしれないが、世界展開しているLUSHでも商品化されており、タブレット型歯磨き粉は今後ナチュラルコスメメーカーから徐々に浸透していくと感じた。
タブレット型歯磨き粉は、レモン味とミント味の2種類。
使い方は、錠剤を口の中で噛み、水で濡らした歯ブラシで磨いていくといったシンプルな方法。ペースト状の歯磨き粉と同様に、泡立ちが良く、きめ細かい泡で磨き残しも少ないという。また、旅行時に飛行機内で製品がこぼれる心配がなく、どこでも持ち運べる利便性もある。
ミント味は、オーガニックメントール、ペパーミント精油、ハイドロキシアパタイトによってつくられており、ヴィーガン対応。容器は、プラスチックを使用しないようにガラス瓶とアルミキャップでできている。こうしたエシカルな開発は自社が所有する製造ラボにて、研究から開発、製造に至るまで行われている。
「Officina naturae(オフィチナ・ナトゥーレ)」のブース。
ドイツのナチュラル&オーガニックコスメ市場は、2021年の時点で売上高が1.8%増の14億8000万ユーロ(約2042億円)に達している。これは、ドイツの化粧品市場の全売上高の約11%を占めており、今後も売上が伸びていくことだろう。
大手コスメチェーンからドラッグストアまで、オリジナルのナチュラル、もしくはオーガニックコスメ製品を取り扱っており、わざわざ自然派コスメ専門店に出向かなくても購入できる時代がやってきた。
手頃な値段で良質なオーガニックコスメを手に入れられるのは喜ばしいが、数多くあるオーガニックのマークに踊らされることなく、次々誕生する新製品をきちんと見極めて使用していきたいと思う。
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