Photo by TEGEL PROJEKT
ドイツのベルリン郊外にあり、2020年に閉鎖したテーゲル空港。ベルリン市民が愛した空港跡地がいま、カーボンニュートラルな近未来都市へ生まれ変わろうとしている。
今西香月
環境&美容系フリーライター
慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中
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ドイツの首都ベルリンの北部に位置するテーゲル空港。1948年に開港してい以来、ベルリンの玄関口として長く愛されてきた。しかし建物の老朽化などの問題から、新空港であるブランデンブルク国際空港のオープンにともない、2020年11月に閉鎖された。
そのテーゲル空港跡地をカーボンニュートラルなエコシティにする再開発プロジェクト「Tegel Projekt(テーゲルプロジェクト)」が進行中だ。
空港設備の一部は再利用されて、古いターミナルビルは研究用の商業スペース、新興企業のオフィスへと刷新。名門のベルリン工科大学が入るほか、オフィススペースには大小1000社が入るという。滑走路があった100エーカー以上のエリアには、5,000戸の新たな集合住宅、公園、学校、商業施設などが誕生する。
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再開発プロジェクトには、カーボンニュートラルを達成するため、いくつかのガイドラインが設定されている。
1つ目が、車ではなく人を主役とした街づくりだ。通りや広場は、基本的にカーフリー。道路には幅広の自転車専用レーンが設けられ、幼稚園・学校などの教育施設、スーパーマーケットは徒歩圏内に集中しているため、多くの人が徒歩で簡単にアクセスできる。近隣にはマイクロモビリティや公共交通機関もあるため、それらの利用も可能だ。
2つ目は、建物には複数の木材を組み合わせた「マスティンバー」と呼ばれる建材を使用することだ。木材はCO2を長期貯蔵できるサステナブルな天然素材だ。環境への負荷が軽く、構造的にも強い。木材はドイツ国内で調達し、建築時のCO2の排出量を80%削減可能と見込んでいる。
また街のなかで必要となるエネルギーは、すべて太陽光発電や地熱発電などで発電する。隣接する商業施設からの廃熱を利用した住宅暖房システムも導入される予定だ。
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3つ目は「アニマル・エイデッド・デザイン」のコンセプトだ。「アニマル・エイデッド」とは動物の保護や救護を意味し、生物多様性を取り入れた街づくりが進められている。
例えば、オープンスペースと建物は、コウモリやバッタなど14種の希少種が生息できるよう設計されている。コウモリは植物の種を運び木々の授粉を助けるなど、生態系にとって大切な役割を担っている。そのためコウモリを開発エリアに定住させ、他の生物も呼びよせることで生態系の保護や回復、気候変動対策に貢献する狙いがある。
この街づくりは2022年から開始され、完成は2027年の予定。
遊休地や工場などの跡地を利用した都市開発では、このようなサステナブルをテーマにしたプロジェクトのニーズが今後ますます高まっていくだろう。経済成長と環境保全を両立する再開発プロジェクトがキーワードになっていくのではないだろうか。
※参考
Tegel Projekt
An abandoned Berlin airport is being transformed into a climate-neutral, car-free neighborhood|Fast company
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