オーストラリア新興企業 波力発電での一般家庭への送電に成功

波力発電を開発するオーストラリアの新興企業「Wave Swell Energy」の発電装置

Photo by Wave Swell Energy

「波力発電」とは、海で自然に生まれる波をエネルギーに換える発電方法。そんな波力発電のプロジェクトに、オーストラリアのスタートアップ「Wave Swell Energy」が成功した。カーボンニュートラルを積極的に進める同国の波力発電プロジェクト最前線を紹介する。

今西香月

環境&美容系フリーライター

慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中

2022.08.18
SOCIETY
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イベントや商品の魅力を広げる エシカルインフルエンサーマーケティング

再生可能エネルギーのひとつ「波力発電」とは

脱炭素化の流れの中、化石燃料の供給不足、原油をはじめとするエネルギー価格の高騰と、さまざまな要因により世界で未曾有のエネルギー危機が起きている。

そのような状況下で、温室効果ガスを排出しない再生可能な代替エネルギーへの転換に注目が集まる。なかでも「波力発電」は、再生可能エネルギーのひとつとして、精力的に研究が進められている分野のひとつだ。

波力発電の仕組み

波力発電を開発するオーストラリアの新興企業「Wave Swell Energy」の発電装置

Photo by Wave Swell Energy

そもそも波力発電とは、海上で自然に発生する波のエネルギーを用いてタービンを回し発電する方法。ご存知のように、波の力は非常に大きい。そのエネルギーを利用しようという方法だ。

主な発電施設は「波動水柱型」「可動物体型」「越波型」「ジャイロ式」に分類される。発電装置は、海中に浮遊させるタイプや、沿岸に設置するタイプがあり、アプローチはさまざまだ。

波力発電のメリット

波力発電のメリットは、自然エネルギーを動力とするため枯渇の心配がないことだ。現在主力となっている太陽光や風力、バイオマス、地熱など他の再生可能エネルギー源と比較すると、面積あたりのエネルギー発電効率が優れている特徴もある。波は常に自然発生するため、発電量が安定的であることも強みだろう。

津波や台風といった変化しやすい海洋環境に耐え得る設備が必要だが、日本のように周辺を海洋に囲まれた島国であれば、広範囲で波力を確保しやすいアドバンテージを活かせる。そのため、日本をはじめ、世界各国で波力発電の開発が進められている。

オーストラリアで一般家庭への電力供給に成功

波力発電の実用化が秘める無限のポテンシャル

Photo by waveswell

こうした機運を背景に、オーストラリアのスタートアップ企業である「Wave Swell Energy」が波力発電による電力供給に成功した。

「ユニウェーブ200(UniWave200)」と名付けられた装置を、同国タスマニア州キング島のグラッシーという港町の沿岸に設置。送電網に電気が供給され、キング島の一般家庭や企業の電力として実際に利用されているという。

この波力発電装置は遠隔操作が可能なものの、制御システムの改良のため、まだ人の手による操作が必要とのこと。しかし同社のプロジェクトの成功は、炭素排出量の削減につながると期待できる。また、波力発電装置を効果的に沿岸部に設置することで、海岸浸食から保護する役割もあるそうだ。

波力発電の課題と将来のポテンシャル

波力発電を開発するオーストラリアの新興企業「Wave Swell Energy」の発電装置

Photo by Wave Swell Energy

多くの可能性を秘めている波力発電だが、デメリットや課題として挙げられているのがコストの問題だ。波力発電の装置は、台風や津波などを受けても、それに耐え得るものが求められる。塩害などに対する耐久性も必要だ。そのためには、装置にかかるコストが高くなりやすい。

また波力発電装置を設置する海域で、漁業に影響を与えることも懸念される。安全性の確保、海域利用ルールの策定など課題も多く抱える。

一方で、波力発電の本格的な実用化がもたらす再生可能エネルギーへの貢献度は未知数だ。ブルーエコノミーの促進、パリ協定の実現に寄与する可能性を秘めた波力発電のポテンシャルに引き続き注目したい。

※掲載している情報は、2022年8月18日時点のものです。

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