Photo by 岡田ナツ子
環境配慮の観点から近年さらに注目を集める古着。興味はあるけど、どこで買ったらいいのか、何から手を出したらいいのかわからない。そんな古着初心者に向けて、古着と古着屋の楽しみ方をショップオーナーに教えてもらいました。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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"個性として1点ものの服を楽しみたい"という人はもちろんのこと、環境配慮の観点からも盛り上がりを見せる古着市場。数年後にはファストファッション市場を上回るとまで言われています。着なくなった服やデットストック品を循環させて、もう一度誰かのおしゃれに活用できる、これもひとつのサステナブルではないでしょうか。
そこで、「古着に興味があるけれど、まだ手を出したことがない」、「大人はどんな古着屋で買うのがいい?」、「古着をおしゃれに着こなしたい」、と思う古着初心者に向けて、基本の基をご紹介。生活を彩るファッション。楽しみながら、気負わずに、微々たるものでも環境配慮につながっていけば、それもまた嬉しいですよね。
Photo by 岡田ナツ子
今回その指南役をお願いしたのは、ヴィンテージショップ(古着屋)「Witty Vintage(ウィッティ ヴィンテージ)」オーナーの赤嶺れいこさん。アパレル業界を経て、2017年に夫・優樹さんとお店を開始。オンラインストアからスタートし、2020年に実店舗を祐天寺にオープンさせました。古着初心者の視点から、根掘り葉掘り聞かせてもらいました。
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「Witty Vintage」は共同オーナーである夫・優樹さんがアメリカまで足を運び、1点1点その目で確かめて買い付けた、目利きのアイテムが並びます。主な顧客層は30〜50代。1点ものを自分らしく着こなしたいと思う、大人なユーザーの支持を集めています。
「きれいめとカジュアルのMIXが当店っぽさ。どちらも揃え、着こなしの幅が広がることを意識しています」と話すれいこさん(以下、「」内はれいこさんコメント)。買い付けは、「夫がアメリカのフリーマーケットや古着屋、ディーラーの倉庫、ときには家までお邪魔して買い付けてきます。コロナ禍前は約2ヶ月に1回、2週間ほどかけて。西から東まで、北から南までと、車を借りて車中泊をしながら買い付けの旅に出ています」。日本人バイヤーがあまり足を運ばない田舎町まで行くこともあるそう。
買い付けのポイントは、「一番はもちろんデザイン、そしてタグの有無、ブランド名、製法やつくりの丁寧さ、状態のよさです。ダメージがあっても直せそうなもの、汚れがあっても落とせそうなものは、デザインがすてきならOK。自宅で洗濯やリペアを丁寧に行っています」。と語る通り、状態がよく丁寧につくられたアイテムが、個性的なものから定番品まで店内に並びます。
古着屋によって仕入れ方はさまざま。「Witty Vintage」のようにオーナー自ら海外から買い付けてくるお店も多く、掘り出し物や思いが詰まったアイテムが揃う。お気に入りのお店を探すときは、商品のテイストの好みと併せて、買い付けの裏話しを聞いてみるのもおもしろいかもしれません。
また、古着やヴィンテージと聞くと奥が深く、知識が少ないと足を踏み入れることに躊躇してしまいがち。けれど、「古着屋のオーナーは、自分で買い付けているのでアイテムに思い入れがあり、詳しい。気になるアイテムがあったら、気軽に聞いてみるのがおすすめです。喜んで説明してくれると思いますよ」、とのこと。
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1900年代もののブラウス。手縫いのプリーツがたくさん入った丁寧な仕事がなされている。
アパレル業界から古着屋オーナーに転身したれいこさん。古着の魅力を聞くと、「(時代背景的に)手縫いのものが多く、つくりが丁寧でデザインが面白いものが多いところです。こちらの1900年代もののブラウスも、手縫いのプリーツがたくさん。丁寧に時間をかけてつくられたことが想像できます」。素材もリネン100%。
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オーナー自ら大きな穴を裏からつまんで縫い、リペアしたスウェットシャツ。
もう一つの魅力は、「リペアをしながら大切に、長く着られること。少しぐらいボロボロでも、逆にそれがかっこいい。古着らしい"味"になります」。例えばこちらのスウェットシャツ。「小さい穴や袖のほつれはあえて残し、大きな穴は、裏からつまんで縫ったり、当て布をしてリペアしました。縫い目がまたデザイン的で新鮮ですよね。個性にもなるし、そこも楽しめます」。
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着こなしやすい長さに丈をカット。切りっぱなしでデザイン性を持たせている。26,400円
こちらのブラウスは膝丈まであったものをれいこさんがカット。あえて切りっぱなしにしてデザイン性を持たせている。「丈感が微妙だったので、着回しやすいウエスト丈でカットしました。わたしのように身長が高くない人でも着やすい丈になったと思います」。
古着と言っても洋服。「デザインを楽しみながら、自由に選んで好きなものを着てほしい」、というのが大前提。その上で、古着初心者におすすめなのが、着やすくて合わせやすく、扱いやすいのが魅力のヴィンテージのスウェットシャツ。
「選ぶならアメリカ製の1950〜60年代のもの。コットン100%でつくられているのが特徴です。そのため(洗濯により)少し縮んでいたり、着丈が短めのものが多く、オーバーサイズはあまり見かけません。必ず試着してサイズ感を確かめてください。ボリュームのあるボトムスを合わせるのが、着こなしのバランスもよくおすすめ」。
80年代以降のものは、技術的に浸透したこともあり、ポリエステルが含まれているものが多いそう。サイズ感も大きめで着丈も身幅もゆったりしている。スウェットアイテムひとつとっても、つくられた年代で個性が出ます。
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そして"服の循環"という視点からみると、「メゾンブランド(サンローランやエルメスなど)に手を出してみるのもいいですね。次のもらい手がある、売れるという視点を加えて買うのも、ひとつの楽しみ方だと思います」。
「ノーブランドのものなら、手が込んでいるもの、リペアをしながら着られるものという視点がサステナブル。リペアは専門のお店に頼んでもいいし、自分でやるのも愛着が湧いて楽しいです。手放したくなったらフリーマーケットや買取専門店、友人や家族に譲りましょう」。
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数々の古着を見て、着て、楽しんできた古着屋オーナーは究極の一枚に何を選ぶのか。気になったので、手放したくない"わたしの永遠の一着"を聞いた。見せてくれたのは1950年代ものの黒のウエスタンパンツ。
アメリカ製で5〜6年前に知り合いの古着屋さんで見つけたものだそう。価格は3万円程度。「サイドジップでハイウェストなので、足が長く見えるシルエットがお気に入りです。デザインもかっこいいし、どんなトップスでも合わせやすい。頻繁に着こなしに登場します」。
ウール素材できれいめ。「上はスウェットやTシャツでカジュアルダウンしてもいいし、ブラウスできれいめコーデにしてもいい。足元はブーツでもサンダルでも合わせられ、そこまで厚手ではないので夏でも着られます」。お気に入りのコーデがこちら。
Photo by 岡田ナツ子
トップスは、インナーに現行のミリタリーアイテムのボーダーカットソーを、上に古着の白地のスウェットシャツを重ねたスタイル。1950〜60年代もので、白地に"どこかの誰かがチャーリーブラウン風な絵を書き加えた"、遊び心が溢れる一着。
Photo by 岡田ナツ子
ご自身もサステナブル・エシカルな暮らしを実践しているれいこさん。食材や日用品はオーガニック専門店で、添加物が少ない商品を選んでいる。食卓にお肉が並ぶことも少なくなり、大豆ミートやプラントベースのもので代用しているそう。
いまでこそサステナブル・エシカルと上手に付き合えるようになったが、数年前まではストイックなまでに追求していた。「SNSで不安を煽るような投稿をしたり、パーム油が使われているものを自分の中でNGにしたり。振り返ると、ネガティブな発言が多かったですね。だんだん苦しくなってしまって、いまでは商品購入時に成分表を凝視することはやめました」。
「なんでも100%って難しい。人によっても判断基準が違う。まずは自分にやさしく、そうでないと人にも動物にもやさしくなれないですよね。そして、足りない部分を指摘して叩くんじゃなくて、ちょっとでもよくなった、進んだ点を認めて、前向きに捉えていきたい」と、一周まわってポジティブに向き合えるようになった心境を語ってくれました。
お店でも可能な範囲でエシカルな取り組みを行っている。お店に来るお客さんにはエコバッグの持参をお願いし、通販用のショッパーはサトウキビ由来80%のものを独自に開発。「海外から輸入したプラントベース100%のものを使用してきましたが、経年劣化で破れやすくなることがわかりました。今後、耐久性を考慮した自社製作の袋に移行予定です」。こちらは業者向けに販売もしている。
Photo by 岡田ナツ子
Mサイズ:27,500円、Lサイズ:35,200円
もう一つ、オリジナル商品として扱うのが、インド産のキルト地のブランケット。繊維工場で出る残布を使い、インドの農村の女性たちの手によって生み出されている。「フェアトレードの点に賛同して仕入れました。100歳のおばあちゃんがつくっていたりと、現地の女性雇用に貢献しているアイテムです」。
大量生産・大量消費が問題視されるアパレル業界。最近では、環境負荷の低い素材やリサイクル素材の開発、回収システムやリペアサービスの充実など、あらゆる改善策を講じるブランドが増えています。
環境に配慮するなら究極のところ"つくらない・買わないのが一番"となってしまうけれど、ファッションは生活を彩る上で必要なもの。サステナブルファッション、エシカルファッションへの関心が高まるなかで、古着もひとつの選択肢として、上手に活用していけたらいいですね。
Witty Vintage(ウィッティ ヴィンテージ)
電話番号
03-6876-8198
住所
〒153-0053 東京都目黒区五本木2丁目13-1 1F
営業時間
不定休(インスタグラムのプロフィール下、”営業日時”のストーリーズをご確認下さい) https://www.instagram.com/witty_vintage/
撮影/岡田ナツ子 取材・執筆・編集/角彩佳(ELEMINIST編集部)
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