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ロンドンで導入されている「超低排出ゾーン」が拡大される予定だ。CO2排出量削減のほか、大気汚染、渋滞の解消に向けた取り組みの一環として行われる。ロンドンでは2030年までにネットゼロを達成する目標を掲げており、車の交通量を27%削減する必要がある。
今西香月
環境&美容系フリーライター
慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中
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イギリスのロンドン市長であるサディク・カーン氏は2022年3月、ロンドン交通局に「超低排出ゾーン(The Ultra Low Emission Zone、ULEZ)」の拡大を要請した。二酸化炭素排出量、大気汚染、渋滞の問題に取り組む施策の一環だ。
超低排出ゾーンとは、区間内に乗り入れる自動車で一定の排出ガス基準を満たしていない場合、1日12.50ポンド(約2,000円)の通行料を求める制度。違反車への罰金は160ポンド(約25,000円)で、14日以内に支払うと80ポンド(約12,500円)に減額される。
ロンドン市では2016年以降、渋滞や大気汚染の緩和策として超低排出ゾーンを導入してきた。超低排出ゾーンによって、窒素排出物は約54%、PM(粒子状物質)は40%、二酸化炭素は5%削減するという。
しかし、2022年2月に発表された新たな分析結果で、都心部の医療機関、ケアホームで、世界保健機関(WHO)が定める二酸化窒素に関するガイドラインを満たさない地域があると判明。ロンドン特別区では50万人以上が喘息に苦しみ、有害な大気の影響を受けやすくなっているという。
また、都心部と郊外の地域格差も深刻だ。超低排出ゾーン区間外にあたるロンドン郊外では、大気汚染の改善率が低く、大気汚染に起因する死亡割合は都心部より高い。肺の発育不全に悩む児童数は減らず、年間4,000人近くが若年死亡に至る。
今回の超低排出ゾーンの拡大計画は、こうした地域格差の解消や、ロンドン市民全体の利益向上を目指す決断だ。
ちなみにロンドンの都心部では、交通渋滞緩和の目的で、2003年より渋滞税の制度が導入されている。平日の午前7時から午後6時までと、土・日と祝日の午後12時から午後6時までの間、区間内を自動車で走行するためには1日15ポンド(約2,400円)の支払いが必要だ。
しかし近年の交通量が増加しており、この制度の効果が出ていないと指摘する声もある。超低排出ゾーンでは、この渋滞税と二重支払いが必須となる。
ロンドン市長は、2030年までのネットゼロ達成に向けて、車の交通量を少なくとも27%削減する必要性を主張。大気汚染、気候変動、渋滞という3つの課題の同時解決には、区間内における車の交通量削減が根本的な解決策と捉えるからだ。
新たな措置が講じられない場合、今後30年間で約55万人のロンドン市民が、大気汚染による疾患を発症し、それにともなう社会医療システムの累積費用は推定104億ポンド(約1.6兆円)に達する見込みだ。
次世代にツケを残さないためにも、歩行者や自転車を優先し公共交通機関が充実したカーフリー社会への転換が喫緊の課題となる。
※参考
Plans announced for city-wide expansion of London’s Ultra Low Emission Zone| IntelligentTransport
Ultra Low Emission Zone Cars |Transport for London
Congestion Charge |Transport for London
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