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難民問題とともに、難民受け入れ側の国にも注目が集まっている。難民受け入れ国ランキングと、そこからわかる世界の現状に迫る。難民の基礎知識や日本が抱える問題点についても、わかりやすく解説。現時点で最新の2020年のデータから学んでみよう。
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難民とは、「自国内で迫害を受けた、もしくは今後受ける可能性があるため、他国へと避難した人々」を言う。自身の意思で国外へと移動した「移住者」とは違い、自身の身の安全を守るために避難せざるをえなかった人々が「難民」と呼ばれる。
難民の定義は、1951年の「難民の地位に関する条約」にて明らかにされている。もともとの定義は、「人種や、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属することを理由に、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れた人々」だ。しかし近年、難民が生まれる理由はさまざまである。政治的な迫害以外に、武力紛争や人権侵害も難民を生み出す原因になりうるのだ。(※1)
国連難民高等弁務官事務所(The Office of the United Nations High Commissioner for Refugees:UNHCR)は、2020年末時点での「紛争や迫害により故郷を追われた人の数」を8,240万人と発表。そのうち、UNHCR支援対象者である難民は2,065万人で、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)支援対象者であるパレスチナ難民は570万3,521人である。(※2)
「難民」という言葉の定義や、世界が抱える難民問題の詳細については、以下の記事でも詳しく解説している。
先ほど挙げた、「紛争や迫害により故郷を追われた人」8,240万人のなかには、4,802万7,950人の国内避難民が含まれている。国内避難民とは、難民と同様に武力紛争や人権侵害、迫害によって故郷を追われるも、国外ではなく自国内で避難生活を強いられている人々を指す。難民と同様、困難を抱えながら生活するケースが多く見られる。(※3)
難民の発生数が多い国の上位3カ国は、以下のとおりである。
順位 | 国名 | 難民数 |
1位 | シリア | 670万人 |
---|---|---|
2位 | ベネズエラ | 400万人 |
3位 | アフガニスタン | 260万人 |
(※UNHCR「Global Trends in Forced Displacement – 2020」より)
もっとも多くの難民が発生しているのは、シリアである。難民が増加した原因は、シリア内戦だ。2011年にアラブ諸国で政府への抗議活動が活発化し、多くの国で政権交代が起きたでき事を「アラブの春」と言う。シリアにも政権交代を目指す動きが生まれたが、武力衝突が激化。その紛争の長期化によって、難民の数は増え続けている。世界の難民全体の27%が、シリア難民と言われている。
3位のアフガニスタンもシリアと同様に、長期化する内戦が難民増加の原因である。自国内の勢力同士の争いだけではなく、諸外国の介入も多くの混乱と武力衝突をもたらした。近隣諸国が多くのアフガニスタン難民を受け入れてはいるものの、社会経済状況の悪化から、受け入れ体制そのものが危機的状況に陥っている。
一方、ベネズエラ難民は政情不安が生み出した社会的な混乱が発生原因とされる。暴力行為のまん延やハイパーインフレによって、一般市民がごく普通の生活を営むことは不可能になった。安定した生活を取り戻すため、非常に多くの人々が国外へと脱出したのだ。上位3カ国の難民数を合計すると、世界の難民全体の半数以上に当たる。(※4)
上記の3カ国には入っていないが、現在多くのウクライナ人が避難を強いられている。2014年に発生した東ウクライナ紛争、2022年2月24日に起きたロシアによる軍事侵攻により、約710万人が国内で避難生活を余儀なくされている。(※5) また避難できずに現地にとどまっている人々は推定1,400万人にものぼる。
自国を逃れた難民たちは、どこの国へと移動するのか。UNHCRが発表した「Global Trends in Forced Displacement – 2020」よって、2020年の世界の難民受け入れ国ランキングをチェックしてみよう。
順位 | 国名 | 難民受け入れ数 |
---|---|---|
1位 | トルコ | 370万人(庇護希望者30万人) |
2位 | コロンビア | 170万人 |
3位 | パキスタン | 140万人 |
3位 | ウガンダ | 140万人 |
5位 | ドイツ | 120万人(庇護希望者20万人) |
6位 | アメリカ | 30万人(庇護希望者100万人) |
7位 | スーダン | 100万人 |
7位 | ペルー | 50万人(庇護希望者50万人) |
9位 | レバノン | 90万人 |
10位 | バングラデシュ | 90万人 |
2020年での、世界最大の難民受け入れ国はトルコである。トルコは2020年まで6年連続で、世界最大の難民受け入れ国に。その理由は、隣国であるシリアからの難民を多く受け入れているためだ。国際的に高く評価される一方で、過密化する難民キャンプやトルコ世論の反応など、多くの問題点も抱えている。(※6)
コロンビアはベネズエラの隣国であり、ベネズエラから逃れてきた難民を多く受け入れた。しかし2020年には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響によって難民を取り巻く経済状況が悪化。治安の悪化や栄養失調も問題視されている。
パキスタンが多く受け入れているのは、アフガニスタン難民である。パキスタンとアフガニスタンが隣接しているためだ。多くの難民が北西辺境州の難民キャンプに滞在。難民を帰還させる動きがあるものの、アフガニスタン国内の状況が不安定なため、あまり進んでいない。
アフリカ最大の難民受け入れ国がウガンダである。主に南スーダンで発生した難民を受け入れている。紛争によって行き場を失った女性や子どもたちが多く生活しているが、貧困や育児放棄、教育不足の問題を抱えている。
トルコとともに、ヨーロッパで多くの難民を受け入れているのがドイツである。シリアや中東国で発生した難民を多く受け入れる理由は、少子高齢化や人口減といった、国内の問題を解決するためでもある。ただし国内には、難民の受け入れに反対する声も多く、支援体制の確立が求められる。
アメリカでは、1980年の「難民法」に基づいて難民受け入れ政策を実施。長期にわたってさまざまなグループの難民を数多く受け入れてきたアメリカだが、旧トランプ政権下においては受け入れ数削減を決定。その後、バイデン政権へと交代したため、受け入れ数は引き上げられている。
南スーダンからの難民を数多く受け入れているのがスーダンである。9カ国と隣接するスーダンでは、多方面からの陸路を使った難民流入を避けられないという現状がある。
中東に位置するペルーは、ベネズエラ難民を積極的に受け入れてきた国の一つである。とはいえ、難民を受け入れる側の負担は重く、ベネズエラ難民の流入数を減らす動きも見られる。
シリア難民を数多く受け入れているレバノン。レバノンの国民は460万人と決して多くはない。また「難民の地位に関する条約」の加盟国ではないため、UNHCRとレバノン政府が協力し、難民支援体制の確立を目指している。(※8)
バングラデシュでは、多くのロヒンギャ難民を受け入れている。ミャンマーの隣国であるバングラデシュには、少数民族のロヒンギャ族がミャンマーで迫害されて数多く入国した。ただし、バングラデシュは決して裕福な国ではなく、政府が難民の定住を認めていないこともあり、この難民問題を将来的にどう解決していくかは課題となっている。
難民受け入れランキング上位10カ国に、日本は入っていない。ちなみに、2020年に日本が難民と認定した外国人はわずか47人であった。難民認定申請者数は3,936人で、認定率は約1%にとどまっている。(※出入国在留管理庁発表データより、※9)
では、なぜこれほど少ないのか。ランキングからわかる理由は以下のとおりだ。
自国内で深刻な問題を抱えた難民の移動は、決して簡単ではない。ランキングからもわかるとおり、多くの難民は隣国へと避難し、そこで受け入れられている。日本の場合、周囲を海に囲まれており、徒歩での移動は不可能である。そもそも難民認定申請者数が少ない理由には、この地理的要因が関連していると思われる。
難民認定申請者数よりもさらに際立って低いのは、難民認定率である。日本で「難民」として認められるためには、非常に狭き門をくぐらなければならないのだ。
難民認定は、1951年の「難民の地位に関する条約」で明確化された定義によって判断される。しかし、その解釈は国によってさまざまである。日本は、難民の本来の定義を非常に厳しく判定している国の一つだ。たとえば「迫害」に関する定義に「重大な人権侵害」や「累積する差別」を含めないし、もともとの定義に含まれない「武力紛争」や「人権侵害」を理由に逃れてきた場合は難民と認めないのだ。
また、手続きや審査の仕組みが十分に整っていないことも、認定数が低い要因の一つと言われている。難民として日本にやってきた人が、認定を受けるための資料を自力で集めるのは難しい。言葉の壁も決して低くはないだろう。
日本が難民の認定基準を厳格化する理由は、偽装難民の予防にある。就労目的で難民申請する人を跳ねのけるため、非常に厳しい審査が行われているというわけだ。国際社会からの反発や国民の意識変化により、少しずつ変化の兆しが見えてきてはいるものの、現状はまだまだ厳しい。
SDGsの16番目の目標は「平和と公正をすべての人に」である。この目標を達成するためには、難民問題の解決が必要不可欠と言えるだろう。日本で暮らす私たちにとっても、決して他人事ではない。いま、自分に何ができるのか。非常に難しい問題だが、これを改めて考える必要がある。
まず何よりも大切なのは、世界が抱える難民問題を知り、興味関心を抱くことだ。日本の難民受け入れ制度が変わらない理由の一つは、私たち国民の無関心とも言われている。実情を知り、何かを変えようとして声を挙げることは、私たちがいまできる行動だ。そのほかにも、身近な場所でできる行動や、考えるべき内容は多い。SDGsについてまとめた以下の記事も参考にしながら、自身の今後の活動を決定していこう。
※1 難民の地位に関する1951年の条約|UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)
※2 数字で見る難民情勢(2020年)|UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)
※3 数字で見る難民情勢(2020年)|UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)
※4 Global Trends in Forced Displacement – 2020(3ページ目)|UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)
※5ウクライナ|国連UNHCR協会
※6 数字で見る難民情勢(2020年)(8ページ目)|UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)
※7 難民の出身国・受入国|国連UNHCR協会
※8レバノン共和国(Lebanese Republic)基礎データ|外務省
※9 令和2年における難民認定者数等について|出入国在留管理庁
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