Photo by Hubbub
タバコの吸い殻は、世界で年間4兆5,000億本も捨てられているという。そこでタバコのポイ捨てを46%も減少させ、約400万本もの吸い殻を回収できたというイギリス発のアイデア対策を紹介しよう。
染谷優衣
フリーランスライター
YouTubeのThrift Filp動画をきっかけにサステナブルに興味を持つ。最近は洋服のリメイクを勉強中。リサイクルショップで掘り出し物の古着を見つけるのが好き。
Photo by Hubbub
タバコのポイ捨て防止対策として、イギリスの街中に設置されているのが「Ballot Bin」。これは、吸い殻を入れることでアンケートに参加できる投票式吸い殻入れで、イギリスの環境保全団体「ハバブ財団(Hubbub Foundation)」が考えたアイデアだ。
吸い殻入れにはアンケートの質問が書かれていて、2択ある回答のどちらかに吸い殻を捨てて、誰でも自由にアンケートに参加できる。吸い殻入れは透明になっていて、たまった吸い殻の量を外から確認できるため、タバコを吸う人も吸わない人も、アンケートの回答結果を見て楽しめる仕組みだ。
質問は、「ロナウドとメッシ、どっちがうまいサッカー選手?」「AppleとAndroid、いい電話はどっち?」「アヒルサイズの馬1頭と、馬サイズのアヒル100羽、どっちと闘いたい?」など。どれも思わず、アンケートに参加したくなるようなものばかりだ。
実際、この吸い殻入れによるタバコのポイ捨て予防効果は絶大。第三者機関による評価で、この投票式吸い殻入れを設置し、タバコのポイ捨てが46%減少したという。その成果から、現在ではイギリスのほか、韓国、マケドニアなど世界38カ国で3,300個以上が販売され、約400万本の吸い殻を回収しているそうだ。
「Ballot Bin」の効果は、タバコのポイ捨て防止だけでなく、海洋プラスチックの問題解決にもつながっている。
私たちが適切に処理しないことで海に流れついてしまう海洋プラスチックごみ。その原因のひとつとしてよく耳にするのが、ビニール袋やプラスチック製カトラリーなどだ。しかし、それら以上に海洋プラスチックの原因と言われるのが、タバコの吸い殻。
タバコのフィルターは、セルロースアセテートというプラスチックの一種が使われており、分解に13年もかかるという。それにタバコの吸い殻からは有害な毒素が環境に放出されるうえ、子どもや野生動物が吸い殻を口にする危険もある。実際、魚、鳥、クジラ、その他の海洋生物の胃の中から吸い殻が発見されることも多いという。
世界では年間4兆5,000億本ものタバコの吸い殻が捨てられていると推測されている。それらを道端に投げ捨てるのではなく、適切に処理することがいかに大切かわかるだろう。
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ハバブ財団では「Ballot Bin」について、楽しくて魅力的なプロジェクトを通じて、人々の行動の変化を促進することを目指しているという。罰則的な手段ではなく、なぜごみを捨てるのか人々が考えることが大切だ。
環境にかかわる問題は特に、複雑で難しいものが多い。だが、このようなユーモアあふれるアプローチがあると、心が豊かになって生活できるだろう。社会が抱えるさまざまな問題にも、このようなアプローチや考え方が求められるのではないだろうか。
※参考
Ballot Bin
Hubbub Enterprise gets the royal vote: Queen’s Award presented to Ballot Bin creators|Commercial Waste
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