マルポール条約とは 成立の背景と改正の目的

波立つ深い色の水面

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海洋汚染問題に視線を向けるとき、マルポール条約の存在は欠かせない。船舶を発生源とする海洋汚染はともすれば甚大な被害をもたらしてしまう。マルポール条約が海洋の環境を守る一助であることは紛れもない事実である。

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2022.02.28
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目次

マルポール条約とは?

マルポール条約(MARPOL条約)とは、国際海事機関(IMO)が採択した国際条約だ。船舶が発生源の海洋汚染を防止する目的がある。

海洋交通の発達にともなう大型タンカーの事故が増加し、相次ぐ海洋汚染が懸念されたことが条約発効のきっかけになった。採択されたのは1978年2月で、1983年から国際的に発効。日本は1983年6月に批准した。

マルポール条約は「MARPOL73/78」と表記され、英語での正式名称は「International Convention for the Prevention of Pollution from Ships, 1973, as modified by the Protocol of 1978 relating thereto」、日本語で「1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書」を意味する。

マルポール条約は船舶からの規制物質の投棄や排出の禁止とその通報義務、手続きについて規定している。規制物質とは油・化学物質・梱包された有害物質・汚水・廃棄物などである。

また、船舶からの硫黄酸化物の放出も削減が求められている。2020年1月1日以降には、指定海域以外の海域において、燃料油の硫黄分濃度が0.5%を超えてはならないと規定された。

条約成立の背景

マルポール条約は成立に至るまで少なからぬ時間がかかっている。発端は1954年に発効された「1954年の油による海水の汚濁の防止に関する国際条約」だ。

その後は一定の効力を発揮していたが、船舶の大型化、油以外の海洋汚染物質の輸送増大などから、改めて国際基準が必要であるという声が各国から高まった。

国際的な流れを受け、IMOでは1969年から国際基準の策定を開始。1973年にはマルポール条約の前身である「1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約」が提案されたが、技術力の問題で発効に至らなかった。(※1)

しかし提案が破棄されたわけではなく、「1973年の~」の内容は引き継がれ、1983年のマルポール条約の一部として採択された。マルポール条約を「MARPOL73/78」とするゆえんである。

マルポール条約の内容

マルポール条約の大きな目的は海洋汚染の防止である。条約本文と議定書に続く附属書はⅠ~Ⅵの6種類があり、規制対象となる物質について詳細に記載されている。

Ⅰ~Ⅵで取り上げられているのは、以下の規則である。「油」「ばら積みの有害液体物質」「容器に収納した有害物質」「船舶から発生する汚水」「船舶からの廃物」「船舶機関から発生する窒素・硫黄酸化物」。(※2)

積み荷だけではなく、船舶における生活排水・物質、動力燃料で発生する物質についても詳細に記載されていることから、IMOがいかに海洋汚染を危険視・重要視しているかがうかがえるだろう。

海洋汚染は地球の水資源の汚染であり、われわれの生活をおびやかしかねない。同時に、われわれも排水を意識しなければ海洋汚染に加担しかねないのだ。船舶を操縦する機会はなくとも、汚染物質を流さないよう注意したいものである。

マルポール条約が与えたその後の影響

マルポール条約の採択により、海洋汚染への意識は高まった。現代では海洋汚染だけではなく、自然環境への意識の高まりにも影響している。日本を含む国際社会での影響を見てみよう。

海洋におけるプラスチックごみの排出禁止

マルポール条約以前に発効された1972年の「ロンドン条約」から、海洋汚染防止に関する規制は改正を重ねて詳細になっている。成長を遂げていると言ってもいい。

ロンドン条約は水銀、カドミウム、放射性廃棄物などの海洋投棄を禁じる内容であった。以降も改正が続けられ、マルポール条約とともに海洋汚染に関する国際社会の意識を高めている。

マルポール条約も同様に改正を続け、海洋汚染にとどまらず、環境保護への意識も盛り込まれる傾向が出てきた。2013年にはⅤの附属書が改正され、プラスチックごみの排出も禁止された。(※3)

言うまでもなくプラスチックごみは環境に悪影響を与えることが知られている。また、海洋プラスチックごみは海生生物への加害原因にもなり得るのだ。

海洋におけるプラスチックごみの排出が禁止された事実は、海洋汚染と環境保護の両面に大きな影響を与えると言えるだろう。

日本主導による船舶のCO22削減策提案

気候変動対策として、IMOでは船舶からのCO2排出を削減する案を採択した。2030年までにCO2排出量を40%以上減少させる目的である。

日本は欧州、中東、アジア各国と共同で「現存船に新造船と同レベルの燃費性能を義務付ける新たな規制(EEXI)および燃費実績の格付け制度」を提案し、IMOでの採択を実現した。

該当制度の案はマルポール条約の附属書Ⅵの改正案として審議され、2023年の発効が予定されている。

※掲載している情報は、2022年2月28日時点のものです。

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