EUタクソノミーとは 成立の背景と日本の事例

ビルを囲むように立っているEUの旗

Photo by Christian Lue on Unsplash

地球環境にとって企業の経済活動が持続可能であるかを判断する仕組み「EUタクソノミー」。地球環境への配慮と対応の必要性が高まるなか、その重要性が高まっている。グリーンな投資をうながす民間資金誘導の一環であり、その基準はEU加盟国すべてに遵守が求められている。

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2022.02.28
FASHION
編集部オリジナル

今春も続々登場!リサイクル素材「エコペット®」でできた最新ファッション

Promotion
目次

EUタクソノミーとは?

EUタクソノミーとは、地球環境にとって企業の経済活動が持続可能であるかを判断する仕組みだ。いわゆる「持続可能な経済活動」の体系化だ。不明確であった従来のグリーン投資の基準になるとして注目を集めている。

タクソノミーの和訳は「分類」である。EUが独自に制定したこのEUタクソノミーにより、持続可能な経済活動をおこなう企業が明確化されるようになった。

企業や投資家に対しては、タクソノミーを満たす事業、または投資関連の開示が求められるようになる。それにともない持続可能な経済活動への意識が高まり、グリーンな事業に舵を切りやすくなる効果と、グリーン事業への資金誘導が期待されているのだ。

原子力や原発、天然ガスについての扱いは各国のタクソノミーで違いがあるが、EUでは原発・天然ガスをEUタクソノミーに含める方針を打ち出している。(※1)

EUタクソノミーの効力は欧州諸国にとって非常に強いものであり、自国基準よりも優先されるべきものとして位置づけられているのが現状だ。

EUにおけるタクソノミー規則

EUタクソノミーには6つの環境目標と4つの判定基準がある。EUにおけるタクソノミー規則として取り扱われる項目だ。

6つの環境目標は以下の通りである。(※2)

1:気候変動の緩和
2:気候変動への適応
3:水と海洋資源の持続可能な利用・保全
4:サーキュラーエコノミーへの移行
5:環境汚染の防止・抑制
6:生物多様性と生態系の保全・回復

また、「持続可能な経済活動」の判定基準には以下の4つがある。

1:6つの環境目標のうち1つ以上に対し実質的な貢献をしている
2:1に該当する以外の環境目標に対して重大な損害を与えていない
3:環境だけではなく社会やガバナンスに関する国際基準を満たしている
4:欧州委員会が指定する技術水準を満たしている

判定基準「1」の6つの環境目標は適用開始時期が異なっている。気候変動の緩和と適応に関しては2021年12月末だったが、そのほかの4つの目標は2022年12月末を予定。「4つの判定基準」を考えるとき、注視するべき事項だと言えるだろう。

情報開示の対象となる企業と開示要件

EUタクソノミーにのっとって情報開示が求められるのは2種類の企業だ。

ひとつは欧州を拠点とし、金融市場に参加する企業である。もうひとつは欧州で経営する従業員500人以上の企業が該当する。

金融市場に参加する立場の企業は、取り扱う金融商品全体に対し、EUタクソノミー規則に合致する経済活動の割合の算出と公開が必要になる。

大企業の場合は、その割合の算出と公開の対象が経営活動全体に指定される。

この開示により、金融機関や投資家はグリーンな投資対象を探しやすくなる。取りも直さず持続可能な経済活動への民間資金が誘導される流れが生まれるのだ。

グリーン事業による民間資金の誘導は、欧州委員会と世界の多くが目指すパリ協定の関連活動資金として大いに役立つだろう。(※3)

現在、開示義務は欧州企業に適用されている。しかし今後、適用範囲が拡大されるという予想もあり、欧州内に株主を持つ他国企業も情報開示の可能性を考慮しておくべきである。

EUタクソノミーと世界や日本への影響

EUタクソノミーはあくまでEU圏内でのタクソノミーであり、世界基準ではない。当然、日本も基準としているわけではないのだ。しかしEUが掲げたタクソノミーは、サステナブルを推進する現代社会において意識せざるを得ない存在である。

前述の通り、今後の動向によっては開示義務の範囲が広がり、外国企業も無縁ではいられなくなる可能性が考えられる。そのときにタクソノミーを満たしていないという判定が出てしまえば、企業として少なからぬダメージを受けるだろう。

また、カナダや中国をはじめとしたEU圏外の国家においても独自のタクソノミー案がある。EUタクソノミーが自国企業に適用された場合、混乱が起こる可能性がないとは言い切れない。

その流れを受け、「サステナブルファイナンスの基準共通化を進める国際的プラットフォーム(IPSF)」では、国際共通基準の制定が議題に上がっている状況だ。

日本において独自のタクソノミーは制定されていない。日本は「グリーンかどうかの基準だけでは企業努力の正当評価が難しい、移行段階の取り組みにも注目・評価するべきだ」という立場であり、今後の動向が注目されるところである。(※4)

EUタクソノミーによって高まるサステナブルな経済活動意識

EUタクソノミーは、世界に先行したタクソノミーであると言える。地球環境への配慮と経済活動を同時に実現し、持続可能な開発目標を達成するための資金確保につながる画期的な仕組みだろう。

一方ではEUタクソノミーに適合するため、企業努力が必要となり、負担が増える可能性も考えられる。いまだ発進したばかりのEUタクソノミーにこれからも注目したい。

※掲載している情報は、2022年2月28日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends