Photo by billionBricks
「パワーハイド(PowerHYDE)」は、人々が安心して暮らせる家を持つことと、ネットゼロの住宅を建設することの2つを支援し、貧困問題と環境問題を同時に解決できる。自家発電することで住宅のコストを下げつつ、地球への負荷を減らせると、世界で高い評価を受けている。
染谷優衣
フリーランスライター
YouTubeのThrift Filp動画をきっかけにサステナブルに興味を持つ。最近は洋服のリメイクを勉強中。リサイクルショップで掘り出し物の古着を見つけるのが好き。
Photo by billionBricks
世界には十分な住まいがないまま日々の生活を送っている人がいる。そんな住宅問題を、気候問題とともに解決するのが、「パワーハイド(PowerHYDE)」と名付けられた住宅だ。
パワーハイドは、シンガポールを拠点にネットゼロの住宅を手掛けるベンチャー、ビリオン・ブリックス(BillionBricks)がデザイン。過去5年間で、シンガポール大統領デザイン賞をはじめ、20以上の賞を受賞するなど、世界的に高い評価を受けている。その理由は、貧困などが原因の住宅問題と環境問題の2つを解決できるからだ。
パワーハイドはソーラーパネルを設置しており、生活に十分なエネルギーを確保。あまったエネルギーは電力会社に売って利益を得られるという。そのため、長期的にみて同等の住宅に比べて、最大で20%ほど低い価格での提供が可能になるのだ。しかも、年間6tの二酸化炭素を削減できる。
材料や建築については、ロボット技術を利用し組み立式の材料を大量生産しており、コストダウンを図っている。現地で簡単に設置できる組み立て式を採用しているため、遠方でも約6日で組み立てが可能だ。さらに自家発電だけでなく、雨水を100%利用し、汚水も浄化する。
各種のインフラサービスの整備を必要としないため、建設が完了したその日から住み始められる。
現在、パワーハイドの住宅約500戸からなるコミュニティをインドとフィリピンに建設予定で、将来的にはスマート・テクノロジーを利用し、さらなる性能の向上が計画されている。
Photo by billionBricks
パワーハイドを設計したビリオン・ブリックスは、今回のプロジェクトについて「一世代で貧困から脱却できる世界初のカーボン・マイナス・ソーラー住宅のコミュニティ」と述べている。
貧困状態にある人は、環境問題に気を配るほど生活に余裕を持つことはなかなか難しいかもしれない。だがこのような選択肢ができることで、人と地球にやさしい社会の実現が可能になっていくだろう。
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