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「グッチ」「サンローラン」「バレンシアガ」などの親会社であるケリングは11月26~28日、「Fashion&Biodiversity:ケリングと共に考えるファッションと生物多様性」展を東京・表参道のケリング本社で開催した。展示は6つのセクションで構成し、前半のセクション1~3では、ファッションと生物多様性の関係を具体的数値とともに紹介し、後半の4~6では自社の取り組みを解説した。
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エレミニスト編集部
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「グッチ」「サンローラン」「バレンシアガ」などの親会社であるケリングは11月26~28日、「Fashion&Biodiversity:ケリングと共に考えるファッションと生物多様性」展を東京・表参道のケリング本社で開催した。
事前予約すれば誰でも無料で訪れることができるもので、業界関係者だけでなく、学生など若い世代の来場も目立った。展示に加え、ボードゲームを用いたワークショップも開催。参加者はアパレル企業の社長になったつもりで、トレンド(消費者からの支持)と生物多様性の保全を考えながらいかに収益を伸ばすかを、ゲームを通じて体験することで理解をより深めていた。
展示は6つのセクションで構成し、セクション1~3では、ファッションと生物多様性の関係を、カシミヤセーターを例にしながら具体的数値とともに紹介し、後半の4~6では自社の取り組みを解説した。同イベントの様子を前編と後編に分けてお届けする。
セクション1では「ファッションのルーツ」をテーマに、ファッションはどのように自然とつながっているかを1枚のカシミヤセーターを例に示した。
何によってつくられ、どこからやってきたのか──1カ月前にイタリアで編まれたセーターが空輸で日本に運ばれ、その糸は6カ月前に乾燥したカシミヤヤギの毛から紡がれ、そのカシミヤヤギの毛は1年前にモンゴルのゴビ砂漠で遊牧民によって放牧された4頭のヤギから毛がすかれた。
250年前にヒマラヤ山脈周辺でつくられたカシミヤ製品がシルクロードや海を経てヨーロッパで愛されるようになり、さらに5万年前には南ゴビ砂漠に遊牧民の祖先がやってきた。5000万年前にはヒマラヤ山脈ができたことで、南ゴビ砂漠が広がっていった、46億年前の地球誕生からいま私たちがカシミヤセーターを手にするまでをたどった。
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セクション2は「私たちが直面している危機」として、ファッション産業がどれほど環境に影響を与えているかを具体的なデータを示した。
例えばファッション産業が排出した2018年の温室効果ガスは世界全体の4%を占める21億トンで、日本の年間排出量の2倍に相当する(編集部注:最近のデータではファッション産業の温室効果ガス排出量は世界全体の8~10%ともいわれている)。
綿花生産から店舗に並ぶまでに必要な水使用量は、コットンTシャツ1枚で2700リットル、ジーンズ1本で3781リットル擁することなどだ。そして地球上でいま起きている危機として「現在絶滅の危機にある生物種が3万8500種以上」「2010~15年までに熱帯の3200万ヘクタールの原生林や二次林(原生林が伐採や山火事などによって破壊されたあと、自然または人為的に再生した森林)が消滅」「1700~2000年までの多様な生き物や特有の生態系を育む湿地の85%が消失」「過去150年でサンゴ礁の50%が消滅」という具体的かつショッキングな数値を示した。
セクション3はケリングが開発した環境損益計算書(EP&L)の紹介で、企業がもたらす環境への負荷を測定し定量化することで、どの工程が環境への負荷が高いか、また、それが環境保全や経営戦略の指針にできることを示した。
セクション1~3まででは、私たちが手にするアパレル製品と、環境危機がつながっていること、また、環境危機に本気で取り組もうとするには、環境負荷を測定することが大切であることを示した。
アパレル産業の与える環境への負荷は極めて大きく、私たち生活者ができることは優良な製品を選択し、長く使い続けることだが、どの製品が環境への影響が小さいかを知る術は皆無といっていいだろう。
完璧な製品はない。大切なのは、いま、世界で起こっていることと、企業がどのような活動をしているかを知ることではないだろうか。
後編では、ケリングの生物多様性戦略や各ブランドの先進的事例などを紹介したセクション4〜6の内容をお届けする。
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