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森林破壊が問題になっているが、最新の研究で熱帯林はおよそ20年で再生できることが判明した。これは、「二次遷移」と呼ばれる自然のプロセスの一つが働いて起こるものだ。
染谷優衣
フリーランスライター
YouTubeのThrift Filp動画をきっかけにサステナブルに興味を持つ。最近は洋服のリメイクを勉強中。リサイクルショップで掘り出し物の古着を見つけるのが好き。
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熱帯林がある開発途上国などでは、人口増加にともない農地の確保や木材の輸出のために森林破壊が進み、熱帯林が失われている。
だが2021年12月にサイエンス誌に発表された共同研究チームの研究結果によると、熱帯林は自然に、しかも比較的早く再生できることがわかった。人間が20年ほど手を加えない状態を保てれば、熱帯林が再生する可能性はかなり高いという。この発見は、荒廃した森林の再生に向けて世界に希望を与えるものだ。
その内容によると、回復にかかる時間は、土壌については平均10年、植物や動物の生物多様性は60年、バイオマスは120年だ。この回復は、古い熱帯林の動植物が新しい熱帯林の成長を助ける多次元的なメカニズムによるもの。「二次遷移」と呼ばれる自然のプロセスが働いているそうだ。
熱帯林が自然現象や人為的に破壊されたとき、土壌や種子などの植物体が残っている状態から植物が変化していく過程を「二次遷移」という。
熱帯林が原生林のレベルまで回復する時間は、長くかかる場合と短い場合があるが、平均わずか20年で原生状態の約78%まで回復できると判明した。
本研究の筆頭著者であるオランダ・ワーゲニンゲン大学のローレンス・ポーター教授は、熱帯林再生の驚異的な速さに驚いたことを明らかにした。「20年という時間は、私たちの世代にとっても、子どもたちの世代にとっても、そして森林保護制度などを整備する政治家にとっても、現実的な時間だ」とコメント。
環境問題では「未来のため」と語られることが多いが、その未来がいつのことを指すのか曖昧でわかりにくい。その点、「熱帯林の回復には20年かかる」と、具体的かつ想像しやすい期間が示されたことは、喜ばしいニュースと言えるだろう。
またポーター教授は、「熱帯林の自然再生は、新しい木を植えるより、生物多様性、気候変動の緩和、栄養分の回復の面ではるかに優れている」と述べている。破壊された熱帯林には、再生活動の一環で植樹活動などが行われているが、植樹された木の30〜50%が枯れてしまう上、生物多様性は以前のようには元に戻りにくいという。
そのため、この研究チームは破壊された後に再生する「二次林」と自然再生の大切さを改めて強調。「できる限り自然再生を利用し、必要な場合には積極的に植林していくことが大切」と、ポーター教授は述べている。
※参考
Multidimensional tropical forest recovery|Science
Tropical forests can partially regenerate in just 20 years without human interference|The Guardian
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