Photo by Kelly Sikkema on Unsplash
本物の肉と遜色のない代替肉。アメリカでは急激に市場を伸ばし、大きな関心を寄せられている。日本でも注目を集め、いまでは身近な店でも手に入るようになった。国内の代替肉市場の動向は、今後も気になるところだ。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート
代替肉はフェイクミートとも呼ばれている。種類は二つに分類できる。一つは「植物肉」だ。原料は主に植物性たんぱく質で、一般的には大豆からつくられた製品がよく知られている。日本では大豆ミートとして販売されている製品を見かけることが多い。
もう一つは「培養肉」と呼ばれる種類。動物の細胞を科学的な環境で培養して製造される。まだ多くの市場では出されてはいないため、ポテンシャルを測るのは難しい。
植物ベースの代替肉は動物の肉を摂取できない人・しない人に歓迎され、市場でも大きな飛躍を遂げた。米国では2018年から2019年にかけては19%、2019年から2020年にかけては45%も売上を伸ばすという驚異的な結果を残している。(※1)
環境保護に強い関心を持つ人にとって、動物の肉を食用とすることは大きな懸念となっている。食肉用の家畜を育てる過程でメタンガスをはじめとした温室効果ガスが大量に発生し、環境への負荷が大きいと言われている。また家畜の飼料として木が伐採されるため、森林もおびやかされる。
動物肉から代替肉へ切り替えることにより、地球温暖化防止や、森林の保護につなげられるという考えから代替肉を選ぶ人がいる。
動物愛護精神が強く、その生命を食することはしのびないと考える人がいる。その人たちのなかには食肉に加工される過程に抵抗を覚える人も多い。植物肉を選べば、この二つの問題がクリアされる。
特定の宗教において、一部の動物、または動物全般の肉の食用を禁じる教義がある。イスラム教徒や、厳格な仏教徒、キリスト教徒の一部の宗派にそのような教義がある。(※2)
グローバル化が進み、多様性との共生が望まれる現代では、そのような宗教を信仰している人々と同じ食卓を囲むときがあるかもしれない。そのとき、代替肉が役に立つだろう。また代替肉を扱う店が増えれば、彼らも外食の選択肢の幅を広げられる。
肉体は加齢とともに衰える。老齢になると動物肉の食事が身体の負担になることがある。老齢ではなくても、病気や健康管理などの身体的な事情で動物肉の摂取を控える人もいる。
動物肉よりも消化器官への負担が少ないと言われる植物肉があれば、そのような人たちの食生活を貧相にせず、豊かに満たす手伝いができるだろう。
地球の人口は増加の一途をたどっている。必然的に消費する食料も増加しているだろう。生産が間に合わない危険や、自然環境の破壊などの問題が懸念されている。代替肉にはこの問題に対応できるポテンシャルがあると考えられている。
代替肉を選ぶことによって生じるデメリットもある。まず、経済面でのデメリットだ。代替肉は動物肉と比較すると価格が高い。家計を考えると頻繁には取り入れにくい人がいるかもしれない。
社会的なデメリットも懸念される。この先、代替肉が広く普及することによって、精肉業者の仕事が失われる可能性がある。大量の失業者が出てしまいかねないという懸念は、代替肉の知名度が上がれば上がるほど顕著になるだろう。
代替肉の世界市場は日増しに拡大している。2018年に119億ドルだった規模は、2025年には212億ドルにもなると予想されている。実に78%もの成長を遂げると考えられているのだ。(※3)
とくに健康管理や生活習慣病の予防のためとして、欧米人の間では「脱ミート」の流れが加速している。
マクドナルドやバーガーキング、KFCなど、世界的に有名なミートフーズチェーンは代替肉を取り入れたメニューをすでに採用している。代替肉の認知度の高まりとともに、今後はさらに市場を拡大させていくだろう。
一方、日本国内での普及状況はどうだろうか。大豆を原料とした代替肉(大豆ミート)をはじめ、商品のリリースや外食産業での採用はたしかに進んでいるが、欧米と比較すればにぶい成長だと言える。
その理由として考えられるのは、原材料に大豆が使われていることだと考えられる。日本人はその食文化の歴史的に大豆を摂取し慣れている。豆腐や、油揚げ、味噌などがごく自然に日々の食卓にのぼっているだろう。
しかし健康志向が高まるなか、大豆ミートに興味を持つ人が増えているのはたしかである。大手コンビニやコーヒーチェーンで代替肉を用いたメニューが増え、スーパーでも一般食品と同様に売られていて手に入れやすくなっている。
にぶい成長とはいえ、大豆ミートのニーズが確実に増大していることは事実と言えるだろう。
日本で現在食べられている代替肉(大豆ミート)の多くは国内製造である。製造企業にはマルコメ、大塚食品、伊藤ハム、日本ハムといったそうそうたる大企業をはじめ、スタートアップ企業やベンチャー企業も少なくない。
数々の企業が関心を示し、参入しているということは、日本における大豆ミートの需要拡大が見込まれているからだと考えられる。
販売戦略の工夫や製品のさらなる改良によっては、日本の代替肉市場が今後拡大する可能性は十分にあるだろう。必要とする人々がいまよりもはるかに手軽に大豆ミートを手に入れられる日が近いのかもしれない。
ELEMINIST Recommends