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性別や国籍、宗教を超えて多様性を認め合う時代を迎え、インクルーシブ社会の構築が必要とされている。現在、社会の中でのマジョリティとマイノリティーとの共生は、世界的に必須となっているアジェンダだ。共生する社会の形成に向けた課題や、それを実現している具体例に注目する。
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社会を構成する人々は多様性に富んでいる。性別・国籍・宗教の違いや障害の有無にかかわらず、互いを認め合い、排除せずに共生する社会をインクルーシブ社会と呼ぶ。(※1)
インクルーシブとは「包括」という意味だ。インクルーシブ社会はすべての人々が尊重し合い、支え合う共生社会とも言える。
多様化への理解が進む昨今、インクルーシブ社会の実現には多くの人が注目している。マイノリティーとされる属性を持つ人をはじめ、まさに多様性の集合体とも言える教育現場で働く人からの視線はとくに多い。
もともとは心身に障害を持つ人や、身体的能力が衰えた高齢者でも不自由なく暮らせる「バリアフリー社会」を構築しようという考えがあった。
インクルーシブ社会とはバリアフリー社会を必要とする人々に加え、さらにマイノリティーな存在に目を向け、彼らを多様性として包括し、互いに認め合うべきであるという考えへと発展したものである。
インクルーシブ社会の反対の意味を考えるのであれば、イクスクルーシブ社会という言葉が妥当だろう。イクスクルーシブは「締め出す」「排他的な」という意味を持つ。そこに「社会」が付加されれば、どのような意味になるかは想像にかたくない。「排除される人がいる社会」だ。
イクスクルーシブ社会では大多数の人の都合が優先され、一部の人の都合は排除される。マイノリティーを理由に社会の恩恵から切り離されたり、教育を受ける権利を侵害されたりすることがあり、人権問題にもなりうる社会である。
イクスクルーシブ社会となってしまう原因は、「最大多数の幸福」を追求することだと考えられる。いわば功利主義である。
社会全体の幸福を追求するあまり、一部のマイノリティーに我慢をさせる、もしくは彼らを無視したり排除したりするという現実を容認することを強要する形にならざるをえない。
功利主義のすべてを否定するわけではないが、イクスクルーシブ社会の実現につながりかねない要素を有していることは確かだろう。
インクルーシブ社会の実現に向け、日本を含む世界中が歩みを進めている。世界ではマイノリティーに視線が向けられ、彼らが声を発する機会が増えた。たとえばLGBTをはじめとする性的マイノリティーとされる人々だ。彼らは果敢に意見を表明し、行動しているため、急速に彼らへの理解と受け入れが広がっている。
国連やユネスコの主導で、障害を持つ子どもも平等な教育を受ける権利を有するというのが基本的人権であると啓発され続けている。インクルーシブ教育として各国政府が力を入れているところだ。(※2)
日本でもインクルーシブ教育の重要性が認識されている。文部科学省がインクルーシブ社会の実現に向けた教育システム構築の推進を強化しつつある。
インクルーシブ社会へ向けた行動は、先進国において着々と進められている。しかしその一方、途上国での理解は進んでいるとは言いがたい。経済力や、ジェンダー、居住地域などによってはイクスクルーシブ社会が根強く継続している。
インクルーシブ社会が実現した具体例には、どのようなものがあるだろうか。以下に紹介する。
・教育2030アジェンダ……インクルーシブ教育の紹介・分析を示した行動計画書
・サラマンカ宣言……属性によって分離されない教育の実現の指針
・バディシステム……地域の人と外国人をつないで相互理解を深める仕組み
・車いす街歩き……車いす体験を通じて推進したバリアフリー社会
・包括的支援体制構築事業……各種相談機関窓口の連携を図る事業
・庁内連携の強化……福祉を必要とする人を取りこぼさないための包括支援
・まめきちカフェ……さまざまな社会的立場の人々が交流できるイベントを開催するグループ
・農福連携……休耕地の活用を通じた、地域の人と障害を持つ人の交流
・子どもの村JAPAN……社会的養護を受ける子どもたちを家庭的な環境で育てる村
・HUBchari……ホームレスを脱した人々への就労支援
・難民支援協会……難民が抱える問題を啓発するイベントを主催する協会
・工房まる……障害を持つ人のアート作品を販売する工房
・映画「ハーフ」制作……多国籍のルーツを持つ人の悩みの啓発
・重層的支援体制推進事業……行政と民間組織の連携による弱者支援事業
・みま~も……高齢者が元気なうちから地域とのかかわりを深める場
日本でもインクルーシブ社会の実現に向けた行動が持続的に行われている。しかし、完全な実現にはまだ課題がある状況だ。その課題と解決への取り組みを紹介する。
平等を意識するあまり、「生徒は同じ場所で学びさえすればいい」と考えるのでは双方に負担がかかる。授業の単元や教材は共有するが、多様化に合わせた修得を目指す、個人の能力に応じた教育が可能になりつつある。(※3)
心身に障害を持つ人へのサポートもいまだ十分とは言いがたい。彼らをしっかりサポートし、彼らの生産性を高めることが重要である。ただし、生産性の高い人が価値のある人なのではなく、一人ひとりが違うことに価値があると伝え、彼らの市場参加を促す。
インクルーシブ社会実現への道のりは決して平坦なものではないが、その必要性への理解が広がっていることは確かな事実である。
社会の未来をになう子どもたちへのインクルーシブ教育をはじめ、進めていくべき取り組みは数多い。あらゆる人が取り残されない未来を願い、今後も課題解決に向けた取り組みを続けていくだろう。
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