Photo by thredUP
アメリカで大人気のオンライン古着店「thredUP」が、新しい試みとして期間限定で実施しているJ.Crewの姉妹ブランド「Madewell」とのポップアップストアの現場レポートを中心に、古着市場や生活者のショッピングの仕方の変化について紹介する。
田原美穂 (タバルミホ)
サステナビリティコンサルタント / クロスボーダーマーケター
NY在住。Sustainable Journey 代表。 大学卒業後、投資アナリストとしてロンドンで勤務後、日本にて外資系ファッションブランドでマーケティングやEcommerceに15年…
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いま世界各国でサステナビリティへの関心が高まっていることもあり、生活者は新しい洋服を購入するのではなくレンタルサービスを利用したり、古着を購入したりするようになっている。「長く使う」「繰り返し使う」という考えが浸透してきているのだ。Z世代はリセールする際の価値も考えながら消費する傾向もあるという。
この記事で取り上げるオンライン古着店「thredUP」のレポート「2021 Fashion Resale Market and Trend Report」によると、古着市場は今後5年間で現在の2倍の規模である770億ドル(約8兆8000億円)に成長すると予測されている。これまでにファストファッションを購入してきた生活者の5人に2人は、古着を選ぶようになっているというデータもある。
需要に応えるように多くの古着に関するサービスがローンチされるなか、とくにアメリカで注目を集めているのがthredUPだ。
話は少し難しくなってしまうが、古着販売を含む二次流通のビジネスモデルは大きく分けてふたつある。まず、「メルカリ」のようなPeer to Peer(P2P)。中古品を販売したい個人が価格などを決定し、それを購入したい個人へと配送する仕組みだ。
thredUPが採用しているのはResale-as-a-Service(RaaS)とよばれるもの。膨大な洋服を効率的に回収、リセールできる仕組みを開発し、それをブランドに提供することで循環型モデルの確立をサポート。また、データ共有によるマーケティング施策の手助けもおこなっている。リセールをする際のわずらわしさをすべてサービスとして提供しているのが特徴といえるだろう。
ちなみに、古着のコンディションや価格は「Vue.ai」というAI搭載の画像処理システムなどを利用し決定している。
多くのブランドは生活者の変化に合わせて回収サービスやリセールサービスを強化しているため、こうしたサポートをおこなっているthredUPは頻繁にパートナーとして選ばれているのだ。
Photo by thredUP
Madewell Foreverのウェブサイトより引用
thredUPと「J.Crew」の姉妹ブランド「Madewell」の取り組みは、わかりやすい具体例だ。今年4月に、threadUPのバックアップのもとMadewellは古着販売サイト「Madewell forever」をローンチしている。
仕組みとしては、次の通り。
①不要になったMadewellのジーンズを顧客が店舗へ持ち込む。顧客は一律20ドル(約2200円)のクーポンをもらえる。
②回収したジーンズはthredUPのスタッフがコンディションなどを確認。
③Madewellの基準に沿って「Madewell Forever」で販売可能と判断されたものに関しては、撮影や採寸などがおこなわれたうえで再販される。基準を満たさなかったジーンズはthredUPで販売される。
④どちらでも販売されなかったジーンズは「Cotton’s Blue Jeans Go Green™」というプログラムを通して家屋の断熱材などに使用される。
thredUPのバックアップにより、不用品が有効活用されていることがわかるだろう。
Madewell Foreverが公開しているイメージ図
彼らの取り組みはオンラインだけにとどまらない。今年9月から2ヶ月限定で、ニューヨークのブルックリンでポップアップストアをオープンしている。
場所はMadewellのメンズストアがある店舗の2階部分。古着販売をするだけでなく、生活者に不要になった洋服を売り、古着の購入を促進するメッセージを発信している。
また、アパレル産業が地球に及ぼしている影響や、洋服を長く使うために必要な管理方法など、店舗に足を運ぶとそれらを楽しく学べる工夫もほどこされている。ジーンズの修理サービスを提供しているのも注目に値するだろう。
Photo by 田原美穂
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Madewellのウェブサイトより引用
ポップアップストアのオープン中に開催されるワークショップでは、「Patagonia」の「Worn Wear」から専門家を招いて、修理方法などを学べるようになっていた。競合ブランド同士としてもとらえられるかもしれないが、環境負荷を抑えるために協力しているのだ。
彼らは企業の利益を優先するのではなく、環境に配慮することが大切だと考えているようだ。責任ある行動を起こそうとしている強い意志を感じられ、生活者にもそれは伝わっているだろう。
Photo by 田原美穂
ポップアップストアでは隅々までサステナビリティに対するこだわりを感じられたが、なによりも驚いたのは日本の刺し子が注目されたことだ。
商品を購入したら余剰生地(デッドストック)でつくられた厚手のトートバッグをもらえるのだが、そこに洋服を楽しく修理してもらえるようにと刺し子セットがついていた。海外では金継ぎも注目されているし、日本のモノを長く使うという考えやアイデアはこれまで以上に価値を見出されるのではないだろうか。
ちなみに、ポップアップストアがクローズする際には、店内で使われていたインテリアなどは廃棄せず、そのままMadewellで再利用されるとのこと。
Photo by 田原美穂
thredUPとMadewellがポップアップストアを実施した目的は、生活者に循環型社会への参加を促す呼びかけだ。環境負荷抑制の重要性伝えながら、他企業へは耐朽性の高い洋服づくりをするように訴えた。
thredUPが公開しているクイズ形式のインタラクティブサイト「Fashion Footprint Calculator」によると、ひとつの洋服を修理することで年間約8.6kgの温室効果ガスの削減につながるという。また、新品ではなく中古品を購入すれば、60〜70%の温室効果ガス削減に貢献できる。
このような事実を知り、新たな価値を見出された古着を手に取れるポップアップストアは、古着購入に抵抗のある生活者を後押しすることにつながるし、Madewellのようなブランドを知る機会になる。
thredUPのリアル店舗での取り組みは、今回が初めてだったがこれからも多くのブランドとのパートナーシップで実現していくことに期待したい。
※参考
2021 Fashion Resale Market and Trend Report|thredUP
Vue.ai For Retail|Vue.ai
Madewell Forever|Madewell
Cotton’s Blue Jeans Go Green™
Fashion Footprint Calculator|thredUP
文/田原美穂、編集/小嶋正太郎(ELEMINIST編集部)
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