イタリアのデザイナーが、マイクロプラスチックを除去できる洗濯機「オーシャン(Ocean)」を発表した。使用した水を循環させ、洗濯で流れ出るマイクロプラスチックを除去する仕組みだ。国際エンジニアリングアワード「ジェームズ・ダイソン賞」を受賞した注目の洗濯機を紹介する。
染谷優衣
フリーランスライター
YouTubeのThrift Filp動画をきっかけにサステナブルに興味を持つ。最近は洋服のリメイクを勉強中。リサイクルショップで掘り出し物の古着を見つけるのが好き。
イタリアのデザイナー、マルティーナ・マンシーニが、マイクロプラスチックを除去できる洗濯機「オーシャン(Ocean)」を設計した。
「オーシャン」は、従来の洗濯機と同じようなデザインだ。洗濯物をドラムに入れ、前面のディスプレイで洗濯サイクルを選択。すると、遠心ポンプから浄化フィルターを通して水がドラム内に流れ込む。洗濯サイクルが終了すると、使用した水はフィルターでろ過され、再び利用できる仕組みだ。
使用済みの水をろ過するフィルターシステムは、3段階で設計されている。
まず最初はステンレス製フィルター、次にポリエステル製フィルタースポンジで大きなマイクロプラスチックを除去。続いて、ホローファイバー(内部が中空になっている化学繊維)フィルターでろ過。最後に殺菌・脱臭効果のあるオゾナイザーで浄化した後、その水を再び洗濯で使用する。
「オーシャン」の特徴は、洗濯に使う水を循環するシステムにある。また洗濯で除去したマイクロプラスチックは、回収してリサイクルできる点もユニークだ。さらに洗濯機は人間工学にもとづいて設計され、ディスプレイやフィルターなども使いやすくデザインされている。
マイクロプラスチックの除去機能に加え、デザイン面でも優れていることから、この洗濯機は2021年、次世代のデザインエンジニアの支援や育成を目指す「ジェームズ・ダイソン賞」を受賞。世界で注目を集めている。
マイクロプラスチックは、海洋汚染につながる深刻な問題だ。私たちが洗濯するたびに、ポリエステルやアクリルの衣類からマイクロファイバーが剥離し、排水に混じる。海で検出されるマイクロプラスチックのうち約35%は、洗濯によるものだという。
1回の洗濯で排出される量は少量でも、世界中の人が日常的に行うことを考えると、その影響力は大きいと容易に想像できる。
マイクロプラスチックの流出を防ぐために、洗濯ネットを使うという方法がある。
例えば、GUPPYFRIEND(グッピーフレンド)の『Washing Bag(ウォッシングバッグ)』。洗濯物を洗濯ネットに入れていつもと同じように洗うだけで、洗濯ネットについたフィルターによって、プラスチックファイバーがたまるように設計されている。
化学繊維の生地が使われた衣服の洗濯でも、マイクロプラスチックにカタチを変えて川や海に流れていくプラスチックファイバーを除去し、環境に配慮できる。
洗濯機「オーシャン」はまだ構想段階であるが、今後同じような機能を持った洗濯機が一般化する未来が近づいているかもしれない。その前に我々ができる方法として、洗濯ネットを使うことも考えてみてはどうだろう。
※参考
This Ergonomic Washing Machine Design Helps Save Our Oceans By Filtering Out Microplastics!|Yanko Design
Ocean - Washing System|The James Dyson Award
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