ドイツ環境保護団体がBMWを提訴　「気候変動訴訟」が世界で増加

気候変動対策が不十分なため訴訟に

ドイツの環境NGOが2021年９月、自動車メーカーのBMWとダイムラーを相手取り、気候変動対策が不十分として訴訟を起こした。

９月上旬、国際環境NGOのグリーンピースとドイツのNGO「Deutsche Umwelthilfe (DUH) 」は、BMW、フォルクスワーゲン、ダイムラー傘下のメルセデス・ベンツ、ガス石油企業のWintershall Deaの４社に対し、気候変動対策の強化を求めた。

これに対し、BMWとダイムラーが要求を拒否したため、グリーンピースとDUHは提訴に踏み切った。

EUでは2021年７月、2035年にガソリン車やディーゼル車の製造と販売を禁止する方針を打ち出した。これに対しグリーンピースとDUHは、パリ協定の目標到達に向けて、それより早い2030年の電気自動車へのシフトを自動車メーカーに求めている。

一方、提訴された２社は、環境問題に対してすでに多くの取り組みを行なっている。BMWは、2030年までに全世界の販売台数の少なくとも半分を電気自動車にし、１台あたりのCO2排出量を40％削減することを目標としている。

ダイムラーは、2030年までに電気自動車のみを製造し、2025年までには全モデルで電気自動車の選択肢を提供することを目指している。

しかしグリーンピースとDUHは、BMWとダイムラーの目標値では不十分であると主張。「すでに適切な対策をとっており、2030年までに気温上昇を1.5度に抑えるパリ協定の目標に十分である」とする２社の意見に反論している。

現在、この訴訟はドイツ裁判所の審理結果を待っている状態だ。またグリーンピースとDUHは、フォルクスワーゲンには10月29日までの回答を求めており、Wintershall Deaに対しては訴訟は起こしていない。

ドイツなどの環境先進国で増える「気候変動訴訟」

近年、企業が行う気候変動対策に対して、市民が声を上げる「気候変動訴訟」が増えてきている。

類似のケースとして、石油大手のロイヤル・ダッチ・シェルの訴訟がある。温暖化ガス排出量をめぐる裁判で、オランダの裁判所は2021年５月、シェルに温暖化ガス排出量を大幅に削減するよう命じ、訴訟を起こした環境活動家たちが勝訴している。

同社は、2050年までに温暖化排出量を実質ゼロとする目標を掲げていたが、2030年までに45％削減するよう命じられ、より野心的な目標に変更した。

国連のレポートによると、世界での気候変動訴訟の件数は年々増加。2017年は24ヶ国で884件だったが、2020年には38ヶ国で1,550件以上になっている。日本では気候変動訴訟はあまりないが、欧州などの環境先進国を中心に、このような動きが活発になっている。

気候変動への対策として、市民から企業や政府に働きかける、新しいムーブメントが生まれているようだ。

※参考
Explainer: Why are BMW and Daimler being sued over climate change?｜REUTERS
https://www.reuters.com/business/autos-transportation/why-are-bmw-daimler-being-sued-over-climate-change-2021-09-21/
Climate NGOs in Germany threaten legal action against VW, Daimler, BMW｜REUTERS
https://www.reuters.com/business/sustainable-business/german-climate-ngos-take-legal-action-against-automakers-wintershall-2021-09-03/
Surge in court cases over climate change shows increasing role of litigation in addressing the climate crisis｜UN
https://www.unep.org/news-and-stories/press-release/surge-court-cases-over-climate-change-shows-increasing-role