大丸松坂屋百貨店は「Think GREEN」をテーマに、これまでさまざまな環境活動を実施してきた。この夏、新たに注力して取り組むのは「コスメ」だ。2016年に開始した衣料品回収キャンペーン「ECOFF」の仕組みを生かし、化粧品空き容器を回収する「コスメdeエコフ」を実施する。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
大丸・松坂屋の店頭では、春と秋の衣替えシーズンに合わせ、不用な衣料品を回収するリサイクルキャンペーン「ECOFF(エコフ)」を半年に一度開催している。
SDGsに取り組む企業が増えたいまでこそ、こうした活動もなじみやすいものとなったが、このキャンペーンのはじまりは2016年にまでさかのぼる。百貨店としても一企業としても、時代に先駆けた取り組みだった「ECOFF」は、年々回収量を伸ばし消費者と百貨店をつなぐ新たなタッチポイントとなった。
2020年4月には「Think GREEN(シンクグリーン)」というキーテーマを設定。「ECOFF」のほか、マイバックの推進やエシカルフレグランスを用いたアルコール消毒の設置、サステナブルなコスメブランドの誘致など、さまざまに環境活動を広げながら「お客さまと一緒に考え、行動していく」姿勢を大切にしてきた。
そして2021年夏に向けて、新たに注力するのは「コスメ」だ。6月から全国8店舗の大丸・松坂屋の店頭で、プラスチック製化粧品空き容器のリサイクルキャンペーン「コスメdeエコフ」を開催する。
「コスメdeエコフ」では、不要になったプラスチック製の化粧品空き容器を特設カウンターで回収する。持ち込みは1人あたり5点まで可能で、1点につき(最大1人5点)「ショッピングサポートチケット1,000円分(500円×2枚)」が進呈される。
コロナ禍での実施にあたって、衣料品回収のECOFF同様、非接触にこだわった回収ボックスを製作した。「都内を中心に各地で緊急事態宣言が出されるなか、実施タイミングの判断には慎重になった」と、大丸松坂屋百貨店本社営業企画部部長の永井滋さんは語る。
「お店にお越しくださるお客さまと従業員の安心安全を考えると、“コスメdeエコフ”の開催タイミングは非常に悩みました。同時に、コロナ禍だからこそSDGsや環境問題への意識が一層高まっているとも感じていました。
おうち時間で断捨離が進んでも、『ごみとして出る衣料品や化粧品の空き容器はどうしたらいいのか』と感じている人も多いでしょう。安心して来店いただき、回収させていただける仕組みさえ我々がつくれば、お客さまの課題を一つひとつ解決できるのではないかと考えて、実施に踏み切りました」
“お客さま思い”の百貨店らしさは、細やかな回収フローにも活かされている。例えば、持ち込む空き容器のブランドは指定せず、どこで購入したものでも持ち込み可能とし、参加のしやすさにこだわった。もちろんドラッグストアで購入した化粧品の空き容器でもいいのだ。
日頃、多種多様なブランドの商品・サービスを提供する百貨店だからこそ、ブランドの垣根を越えた取り組みにしたいという思いが込められている。
大丸・松坂屋が店頭で化粧品空き容器の回収キャンペーンを行うのは、実は今回が2度目になる。1度目は2018年、「エコフ」で協業する日本環境設計株式会社が環境省の実証事業として実施した、使用済みプラスチック製品の回収を行う取り組みに、大丸・松坂屋が回収場所として参画していたのだ。
この経験から、消費者の「捨てるに捨てられない。でもどうしたらいいかわからない」というニーズが顕在化されたことで「お客さまと一緒にやれることを百貨店として取り組もう」という気運が社内で醸成され、今回の「コスメdeエコフ」につながっている。
「小売の立場でできることは限られます。だからまずは、百貨店の根幹となる分野から取り組みたいと考え、衣料品とコスメから始めました。
取り組むからには、お客さまの環境活動に対するニーズもキャッチしたいと考えています。例えば、回収後にお配りしているショッピングチケットが、すべて利用されているわけではないことにもスポットを当てました。
ショッピングに使わなかったチケットを、もしどこかに寄付できるとしたら、お客さまはどんな活動や団体を支援したいと思っているのだろうかと考え、スタートしたのが『チケットポスト』です。
WWFジャパンをはじめとする4つの環境活動団体を選ベるようにし、投函いただいた枚数により各団体へ寄付されます(※)。もちろん今回のコスメdeエコフの会場にもチケットポストは設置されます」(永井さん)
※ 寄付額は合計上限100万円まで
今年の春先に行われた衣料品回収の「ECOFF」もコロナ禍でありながら、多くの参加者を集めた。参加した人からは「お買い物のついでに環境活動に参加できる便利さ」に加え、「参加する楽しさがある」という声も多い。
「私たちが常に意識しているのは、店を訪れたときの特別感。こうした環境活動も店頭での体験価値につながっていたらうれしいです。
4月から、手指のアルコール消毒時にエシカルフレグランスの香りを感じられる、嗅覚を意識した取り組みもしていますが、今後も五感を意識した取り組みは続けていきたいです。オンラインでは提供できない、リアル店舗ならではの価値を生かして、百貨店としての“提供する責任”を表現したいと思います」(永井さん)
ELEMINIST Recommends