社会の結びつきの上に成り立つ「ソーシャルキャピタル」とは メリットをもたらした2つの事例を解説

スマホを操作しながらデスクトップパソコンに入力している人

地域や企業において注目される「ソーシャルキャピタル」。具体的な意味やメリット、必要性を解説する。より快適な暮らしを実現し、企業活動のより一層の活性化のため、ソーシャルキャピタルは必要不可欠である。これを機に、正しい知識を身につけておこう。

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2021.05.31

ソーシャルキャピタルとは

ノートパソコンを見ながら笑顔で話す三人の男性

Photo by Priscilla Du Preez on Unsplash

ソーシャルキャピタルとは日本語で、「社会的資本」もしくは「社会関係資本」と訳される。社会的資本という言葉から、道路や橋など、人が生活を送る上で必要不可欠な社会的インフラを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。

しかし、ここ数年で注目されているソーシャルキャピタルは、全く別の概念を示している。ソーシャルキャピタルのソーシャルとは、社会・地域における人々の信頼関係・ネットワークを示すものだ。

これまで、会社経営や地域の発展で注目されてきた概念には、以下の2つがある。
・フィジカルキャピタル(物的資本)
・ヒューマンキャピタル(人的資本)

ビジネスの場における、フィジカルキャピタル・ヒューマンキャピタルについて、具体的にイメージできる方は多いだろう。しかし、それだけで会社をうまく回せるわけではない。

新たに必要な資本として加わったのがソーシャルキャピタルであり、「物的・人的資本と同様に、社会における人間関係や信頼関係が資源になり得る」という考えを示している。

ソーシャルキャピタルの概念と定義

厚生労働省では、ソーシャルキャピタルについて以下のように説明している。

・人々の協調行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることのできる、「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織の特徴

・物的資本(PhysicalCapital)や人的資本(HumanCapital)などと並ぶ新しい概念
(※厚生労働省発表資料「ソーシャルキャピタル」より)(※1)

地域や会社など、特定の社会に属する人々が、協調行動(付き合いや助け合いなど)を行う頻度が高くなれば、新たな活動・ネットワークが生まれる。そしてそうした活動やネットワークの中で、ソーシャルキャピタルはさらに高まっていくだろう。

新たな活動を立ち上げたり、ネットワークを構築したりと、「仕組み」をつくるのはそれほど難しくない。しかし、それを活性化させるためには、人同士のつながりが必須である。これこそが、ソーシャルキャピタルの基本的な概念だ。

提唱された背景と歴史

ソーシャルキャピタルを定義したのは、アメリカの政治学者、ロバート・パットナムである。彼は1993年に出版した自著「Making Democracy Work( 哲学する民主主義)」の中で、イタリアにおける地方政府のパフォーマンスの差を生み出した要因の一つとして、ソーシャルキャピタルを挙げた。(※2)

イタリアにあった20の地方都市のなかには、大きく発展したところもあれば、そうではないところもあった。成功している地域に共通していたのは、「地域活動への積極的な参加」や「地域クラブ・サークルへの所属」など、豊かなソーシャルキャピタルである。その後パットナムは、「アメリカにおけるソーシャルキャピタルの低下とその影響」について考察し、大きな話題となった。

ソーシャルキャピタルの重要性は世界中で注目されるようになり、日本においても例外ではない。地域再生や出生率の向上にも役立つ理論として、さまざまな地域・企業において、積極的な導入がスタートしている。

ソーシャルキャピタルから生まれるメリット

果物が陳列された市場

Photo by Roxanne Desgagnés on Unsplash

ソーシャルキャピタルが豊かになると、いったいどのようなメリットが生まれるのだろうか。地域・企業それぞれについて、具体的なメリットをまとめてみよう。

地域社会における5つのメリット

ソーシャルキャピタルが豊かな地域においては、以下のようなメリットを実感しやすいと言われている。

・地域活性化
・暮らしやすい環境の実現
・出生率の向上
・犯罪発生率の低下
・災害からの早期復旧

住民同士の関係が良好で、ふだんから積極的にコミュニケーションがとれていれば、地域は自然と活性化していく。住民同士の助け合いや見守り活動が活性化すれば、赤ちゃんからお年寄りまで、すべての住民にとって暮らしやすい環境を実現できるだろう。

また、住民同士の関係性が密な地域においては、不審人物やふだん見かけない人が認識されやすい。大災害が発生した場合でも、「いま自分たちにとって何が必要なのか?」を、地域全体で考えられる土壌がある。平常時から災害時まで、ソーシャルキャピタルがもたらすメリットは、非常に大きいと言えるだろう。

企業経営における3つのメリット

ソーシャルキャピタルは、ビジネスの現場においても、さまざまなメリットが期待されている。近年、さまざまな企業がソーシャルキャピタルを豊かにするための取り組みを行っているのは、このためだ。具体的には、どのようなメリットがあるのだろうか。

・従業員同士の連携強化
・組織運営が円滑になる
・離職率の低下

従業員同士の関係が良好になれば、自然とパフォーマンスは向上していく。コミュニケーション不足によるミスの発生も、予防できるだろう。何らかの変革が必要な場合でも、すみやかに意思疎通を図っていける。

また、「職場の人間関係」を理由に、退職する人は少なくない。ソーシャルキャピタルが高ければ、こうした退職も食い止めやすくなるはずだ。

「企業内」だけではなく、「企業×地域」のソーシャルキャピタルを高めようとする動きも、近年活発になってきている。企業と地域が積極的に関わることで、企業の知名度や好感度をアップできれば、地域に根付いた事業展開も円滑に進めやすくなるだろう。

※掲載している情報は、2021年5月31日時点のものです。

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