ELEMINISTでは全5回にわけて、『サーキュラー・エコノミー 企業がやるべきSDGs実践の書』に書かれている内容について紹介。第5回目は「企業の成長戦略としての“サーキュラー・エコノミー”」について。
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「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」──行政や企業を中心に浸透してきた概念ではあるが、いま個人でも正しい知識を身につけ、一刻も早くその実現を達成できるようアクションを起こしていく必要がある。
使い終わったらモノを廃棄する「リニアエコノミー(直線型経済)」や、まだ使える廃棄物を循環資源として再利用する「リサイクリングエコノミー」など、私たちが経済成長の過程で取り組んできた生産や消費のあり方は、いずれにせよ廃棄物が生まれてしまう方法だった。それらに対して、まずは廃棄物と汚染を発生させないことを前提とするのが「サーキュラーエコノミー」の考え方だ。
紹介するのは『サーキュラー・エコノミー 企業がやるべきSDGs実践の書』(中石和良)。タイトルからビジネスパーソンひいては企業向けと捉えてしまう人もいるかもしれないが、内容は予備知識が少なくても問題なく読み進められるようになっている。
また、サーキュラーエコノミーの実現に向けて取り組みをおこなっている先進企業の事例も紹介されているので、ひとりの消費者として商品やサービスを購入する際の企業やブランドを選ぶ基準も得られるはずだ。
ELEMINISTでは全5回にわけて、『サーキュラー・エコノミー 企業がやるべきSDGs実践の書』に書かれている内容について紹介。第5回目は「企業の成長戦略としての“サーキュラー・エコノミー”」について。
日本では、ある誤解が生じているというサーキュラーエコノミー。本書ではGAFAMをはじめ先進的な考え方で取り組みをおこなっている企業の実例をとりあげながら、詳しくわかりやすく、そして正しくその仕組みやシステムを紹介。“サステナブルやエシカルといった社会貢献にはコストがつきもの”という誤解を紐解いている。
欧米企業ではSDGsの17の目標を達成するための具体的な方法論として注目を集めるサーキュラーエコノミーについて、ビジネスパーソンだけでなく一個人として具体的なアクションを起こすきっかけとなり得る1冊だ。
最終章では、リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの移行に関するヒントが記載されている。筆者によると、NIKEが実践したようにトップが将来に向けた明確なビジョンを掲げ、その理想のゴールに向けて長期的な展望で進むことが大切とのこと。つまり「成長戦略」が必要になるのだ。
サステナビリティ施策は社会貢献を軸に考えられることも多いが、決してそれだけではない。ビジネスの軸にすることで、これまでのリニアエコノミーを変えられる可能性がある。事例として紹介されている長野県上田市の住宅メーカー「アトリエデフ」は、これを体現しているといえるだろう。
そして、サーキュラーエコノミーへの移行を推し進めていくには、消費者である私たちもその変化に意識を向ける必要がある。いまや消費をするうえでも知識をつけなければいけないのだ。
Photo by Louis Renaudineau on Unsplash
サーキュラー・エコノミーを原動力に社員の意識を変え、業界の風を変え、自社の業績を伸ばしてきた中小企業を紹介しましょう。長野県上田市に本社を構えるアトリエデフは、社員30人規模の戸建て住宅をメインに手掛ける住宅メーカーです。
アトリエデフの設立は1995年。当時、自然素材の家はおそらく日本ではほとんどなかったと思われます。昭和の高度経済成長と共に、日本のハウスメーカーが取った手法は安い・早い・大量生産の家づくり。注目されたのが集成材や石膏ボードなどの「新建材」と呼ばれる建築材料です。安価で手に入り、和洋問わずいろいろなデザインに対応できるなど使い勝手もいい。建物の構造部材から仕上げ材まで、あらゆる部分で多用されました。
ただ、新建材には大きな問題がありました。塩化ビニールやポリエステルなどのプラスチック、さらには化学合成接着剤や塗料も大量に使われているのです。また、外国産には防虫剤が散布されており、当時の家は化学物質で満載と言っても過言ではなかった。やがて、こうした化学物質が住む人たちにシックハウス症候群といった重大な健康被害をもたらすことが明らかになっています。
大井氏自身もその怖さを身をもって体験したひとりです。念願のマイホームを新築したところ、子どもたちの体調が相次いで悪くなったのです。「どうやら家に使った新建材が原因だったよう」。新建材の安全性に対する疑念が確信に変わったそうです。
さっそく、当時勤めていた建築会社に自然素材でつくる家のプランを提案しました。ところが、新建材ブームの最中、誰も耳を貸そうとしません。そこで、ならば自分でと38歳で起業することになったわけです。
「社内や取引先に対して、使う木材は国産のみ、そして化学合成の新建材や接着剤は一切使用禁止と通達した。いわば、当時ではありえない家づくり。当然、現場の大工たちから今までのような仕事ができなくなると反発があったし、社員も戸惑った」と当時を振り返ります。
大井氏はそうしたスタッフ一人ひとりと向き合い、なぜ自然素材にするのか、どうして日本の山を守っていかなければならないのか、自分の考えや信念を熱く語りました。半年、1年と根気強く説得を続けていくと、業界では異例だったものが「社内の当たり前」になり、社員たちも自然素材の家づくりに共感し、支持する仲間も集まるようになりました——。
ポプラ社
サーキュラー・エコノミー
946円
※2021.03.04現在の価格です。
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