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サステナブルな社会の実現に向けて、注目されるのがゲームチェンジャーである。今後の社会はどう変わっていくのだろうか? ゲームチェンジャーの意味と、我々の身近にある、サステナブルな視点におけるゲームチェンジャー的事例を解説する。
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ゲームチェンジャーとは、もともとスポーツの世界で使われていた言葉だ。1人の選手の登場によって、試合の流れを一気に変えてしまうことがある。ゲームチェンジャーは、こうした選手を意味する言葉として使われてきた。
このゲームチェンジャーという言葉がビジネスの世界で注目されるようになった裏には、2015年に内田和成氏の著書『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』の影響がある。市場の流れを一変させるような製品・アイデア・企業のことを、ゲームチェンジャーという言葉で表したのだ。
業界には業界のルールがあり、それに則った形で製品やアイデアが供給される仕組みが一般的だ。しかし、ひとたびゲームチェンジャーが登場すると、業界全体の流れは一気に変わってしまう(※1)。
非常に大きな改革の波が押し寄せ、社会全体の変化につながっていく一方で、既存の製品・アイデアを供給していた企業にとっては、早急な対策を求められる。
たとえば、一昔前までは「ゲームと言えば据え置き機」という認識が一般的であった。各社がしのぎを削るなか、登場したのが「アプリゲーム」というゲームチェンジャーである。手元のスマートフォンを使えば、誰でも低価格でゲームを楽しめる時代が到来し、ゲームメーカーは根本的な販売戦略を再検討せざるを得なくなった。
市場に大きな変革を起こすゲームチェンジャー。今後もさまざまな業種において、革新的なアイデアが生み出されていくだろう。また環境・社会問題を考える意味でも、ゲームチェンジャーは注目の存在である。
SDGsの影響もあり、近年注目されているのが「サステナブルな社会の実現」である。「サステナブル」とは「持続可能な」を意味しており、日本だけではなく世界中で注目されているキーワードだ。
環境破壊やさまざまな社会問題が注目されるいま、このままの状態を続けていけば、さまざまなリスクが上昇する。たとえばこのまま二酸化炭素の排出量を増やし続けていけば、2100年の気温は、最大で4.8度も上昇すると言われている。
また、人口急増も、憂慮するべき事象のひとつだ。2015年には、世界の人口は約73億人であった。発展途上国では急速に人口が増加中で、2100年には約110億人に達するだろうという予測もある(※2)。
いま、適切な対策を取らなければ、世界の状況が一気に悪化していく可能性が高い。こうした事態を防ぐため、2015年に国連で採択されたのがSDGsである。SDGsには持続可能な社会の実現に向けた17の目標と169のターゲットが示されており、2030年までの達成を目指している。
SDGsは、世界中の企業・個人を含め、「誰1人取り残さない」ことを強調している。さまざまなメディアでSDGsが取り上げられ、各企業が積極的な取り組みを行うようになった。こうした流れは、我々個人にも波及している。サステナブル社会の実現に向けて、より積極的な取り組みをスタートする個人も増えてきている。
サステナブルな社会の実現に向けた意識が高まれば、人々の生活様式も大きく変化していくだろう。日用品ひとつを選ぶ際にも、環境・貧困・ジェンダーなど、製品の裏に隠されたさまざまな問題を意識するようになる。
人々の意識が変わり、購買活動に変化が現れれば、経済全体の流れも大きく変わっていくだろう。こうした影響は、今後もさらに強まっていくと予想される。2021年は、まさにその過渡期にあるのだ。
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持続可能な社会の実現に向けて、我々はさまざまな問題を解決しなければならない。経済活動全体を変えていくなかで、注目されるのがゲームチェンジャーの存在である。サステナブルな視点におけるゲームチェンジャーの事例を2つ紹介しよう。
ファッション業界において、長らく慣習となってきた大量生産・大量消費。毎シーズン新たなデザインが投入され、「新しく流行に乗った商品ほどいい」という価値観が一般的で、短期間に大量の廃棄物が出るところも問題視されていた。人々の意識の変化とともに、ファッション業界全体にも、サステナブル社会の実現に向けた取り組みが増えてきている。
H&Mグループは、「2030年までにすべての使用素材をリサイクルまたはサステナブルに調達された素材のみを使用する」という目標を公表。Nikeが掲げる目標は、「2020年までに持続可能なコットンを100%使用すること」である。また、二酸化炭素排出量を大幅に削減するための素材選定にもこだわっている。
各社がSDGsに向けてどのような取り組みを行っているのか積極的に公表し、消費者はそうした情報をもとに、商品を選ぶ時代が到来している。(※3)
発展途上国の資源・労働力を搾取することなく、適正な価格・対等な関係のもとで提供されているフェアトレード商品。コーヒーや衣類など、さまざまな分野でフェアトレード商品が注目を集めるようになったことも、ゲームチェンジャー事例のひとつである。
これまで消費者は、モノの「価格」や「品質」にこだわっても、モノが生まれるまでの過程に注目する機会は少なかった。フェアトレード商品の登場によって、「価格」や「品質」以外の商品選定のポイントが生まれた。
各企業は、製品の「価格競争力」や「独自の魅力のアピール」だけではなく、モノを生み出すまでの過程についても、努力・公表を求められることに。市場全体の変革につながった。
サステナブルな社会を実現させるためには、我々にとって「当たり前」だった社会を、一つひとつ変えていく必要がある。それぞれの努力や意識改革はもちろん、世のなかの流れ全体を変える「ゲームチェンジャー」の存在は、今後ますます重要になっていくだろう。これから先の社会において、どのようなゲームチェンジャーが登場するのか注目しよう。
※1 『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』
https://www.itc.or.jp/guidance/special/download/uchida.pdf
※2 世界人口の増大が鈍化、2050年に97億人に達した後、 2100年頃に110億人で頭打ちか
https://www.unic.or.jp/news_press/info/33789/
※3 持続可能な素材とイノベーションhttps://www.nike.com/jp/sustainability/materialshttps://about.hm.com/ja_jp/news/general-2021/hm-group-game-changers-.html
※4 第18回 株式会社チチカカ
https://www.fairtrade-jp.org/interview/18.php
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