デジタルガバメントで何が変わるのか 実行計画の内容と実現に向けた取り組み

スマートフォンをつかんで掲げる手

政府が推し進める、デジタルガバメントの実現。具体的に何がどう変わるのか、よくわからない……という方も多いのではないだろうか。デジタルガバメントの意味やメリット、実行計画の概要について解説する。デジタルガバメントの具体例も、学んでいこう。

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2021.04.30
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デジタルガバメントとは 目指す社会と現在の状況

ノートパソコンのキーボードをタイピングする手

Photo by Glenn Carstens-Peters on Unsplash

デジタルガバメントとは、2017年5月に発表された「デジタル・ガバメント推進方針」にて注目を集めたワードである(※1)。

行政の生産性向上のため、デジタル化の推進は急務である。しかし、これまで非デジタル社会で当たり前に行われてきた各種手続き・仕組みでは、デジタル化に対応できない部分も多い。デジタル技術の徹底活用はもちろん、行政機関の組織改革や官民協働を軸としたサービスの見直しを行うことで、デジタル社会に適応した「デジタルガバメント」の実現を目指す。

政府が積極的に取り組んでいる、「マイナンバーカードの交付」や「電子申請システム整備」も、デジタルガバメント実現に向けた取り組みの一つだ。

2020年3月時点での人口に対するマイナンバーカード交付枚数率は、15.5%を達成。地方公共団体における行政手続きのオンライン利用の状況は、平成30年度には、オンライン利用率が52.6%にまで上昇した。(※2)。

海外でも、デジタルガバメント実現に向けた取り組みは積極的に行われている。とくに、シンガポールや韓国においては、情報の一元管理や国民IDによる連携など、社会全体のデジタル化が急ピッチで進められている(※3)。

デジタルガバメント実行計画の概要

日本政府が「デジタルガバメント実行計画」を打ち出したのは、2019年のことである。社会全体でデジタル技術を活用し、それぞれのニーズに合った形でその利益を享受することを目的に発表された。その目的は、大きく2つだ。

・必要なサービスが、時間と場所を問わず、最適な形で受けられる社会の実現
・官民を問わず、データやサービスが有機的に連携し、新たなイノベーションを創発する社会の実現(※4)

計画の対象期間は、2019年12月20日から2025 年3月31日まで。推進状況によって、計画は随時見直し・改定される仕組みになっている。2020年12月には実際に改定されており、優先的に取り組むべき7項目の概要が具体的に示された(※5)。

・サービスデザイン・業務改革(BPR)の徹底
・国・地方デジタル化指針
・デジタル・ガバメント実現のための基盤の整備
・一元的なプロジェクト管理の強化など
・行政手続きのデジタル化、ワンストップサービス推進など
・デジタルデバイド対策・広報などの実施
・地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進(※6)

この計画方針にしたがって、行政サービスの100%デジタル化や行政手続きのオンライン化、ワンストップサービスなどの実現を目指す。

デジタルガバメント実現に向けた取り組み事例

両手でタブレットを操作する男性

Photo by NordWood Themes on Unsplash

各種書類のコンビニ交付サービス

住民票の写しや印鑑登録証明書を、身近なコンビニで受け取れるようにしたサービスである。サービスが開始されたのは2010年2月。現在では、参加市区町村は742団体、対象人口は1億人を超えている。

マイナンバーカードの普及により、面倒な手続きなしで、いつでもどこでも必要な書類を入手できるようになった(※7)。

マイナンバーカード機能、スマホへの搭載

現在進行形で普及が進むマイナンバーカードは、将来的にはスマートフォンへの搭載を目指す。これにより、スマートフォン一つで各種行政手続きが可能な社会が実現する。2022年度内のAndroid端末への搭載を目指し、現在計画が進められている(※8)。

キャッシュレス決済のより一層の推進

政府の大型政策の影響もあり、我々の生活に浸透したキャッシュレス決済。デジタルガバメント実現に向けて、より一層の浸透が求められている。生活の多くの場でキャッシュレス決済が可能になれば、業務効率改善につながる。

いずれは、すべての個人金融資産の電子アカウント上での一元管理や、国や地方自治体からの給付金受取を、オンライン上で即座に完結できる仕組みの確立を目指している(※9)。

このように、デジタルガバメント実現に向けた取り組みは、すでに我々の生活のなかで行われている。すでにある程度の結果を出した取り組みもあれば、今後より一層の推進が求められる内容も少なくない。

デジタルガバメントを実現するメリットとは

デジタルガバメントの実現によってもたらされるメリットは、以下のとおりだ。

・利用者中心の行政サービスの実現
・面倒な作業の簡略化
・ニーズに即した政策立案と、素早い対応
・ビジネスチャンスの増加
・オンラインサービスのさらなる充実
・多様化する社会への対応力強化
・コスト削減

このほかにも、社会全体の仕組みが変わることで経済効果が生まれたり、デジタルビジネスの誕生による雇用創出効果が現れたりすると予想されている。

乗り越えるべき課題・問題点

一方で、デジタルガバメントの実現のためには、乗り越えるべき課題も少なくない。情報セキュリティ対策の徹底や、IT人材の確保・育成は急務である。デジタル化が進めば進むほど、重要性が高まる分野だが、政府内のセキュリティ・IT 人材は、依然として不足している。

また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により社会全体が変化したいま、新たな生活様式を実現できる仕組みが求められている。必要な仕組みがわかっていても、法令の影響により、速やかに改革できない点も多い。こうした点も、今後の活動における問題点と言えるだろう。

デジタルガバメントの市場規模・経済への影響

2台のノートパソコンの間に置かれた書面

Photo by Scott Graham on Unsplash

デジタルガバメントで社会全体の仕組みが変われば、市場経済への影響も大きくなるだろう。デジタル技術を活用したワークスタイルが一般的になり、ペーパーレス・テレワーク化に向けた取り組みも、より一層進んでいくはずだ。オンライン診療や遠隔授業などの進展も予想される。

オンラインでやりとりできる情報量が増えれば、情報通信業はさらに発展していくだろう。一方で、ペーパーレス化やオンライン化が進めば、業績悪化が見込まれている業種もある。

印鑑業界もその一つだ。現在の市場規模は1,700億円にも上ると言われているが、今後の市場規模は縮小せざるを得ないだろう(※10)。

デジタルガバメント計画が進むことで、我々の生活にもたらされるメリットは非常に大きい。その一方で、さまざまな課題があるのも事実だ。今後の流れに注目していこう。

※1 デジタル・ガバメント推進方針
https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/densei_houshin.pdf
※2
地方公共団体における行政手続のオンライン利用の状況
https://www.soumu.go.jp/main_content/000696370.pdf
マイナンバーカードの市区町村別交付枚数等について(P1)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000674166.pdf
※3デジタル・ガバメントに関する 国際動向について(P3)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/dejigaba/dai2/siryou4.pdf
※4 デジタル・ガバメント実行計画(P5)
https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/densei_jikkoukeikaku_20191220.pdf
※5 デジタル・ガバメント実行計画(P8)
https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/densei_jikkoukeikaku_20191220.pdf

※6【2020年改定版】デジタル・ガバメント実行計画の概要
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/201225/siryou8.pdf
※7 コンビニ交付サービスに学ぶ誰もがICTの恩恵を受ける社会の実現
https://wisdom.nec.com/ja/feature/government/2020033001/index.html
※8 マイナンバー制度とデジタル化のこれから(P33~34)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000720303.pdf
※9 デジタルガバメントが切り拓く近未来(P22~23)
https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/knowledge/report/cc/digital_economy/20210215_1.pdf?la=ja-JP&hash=9125B41651DC618949C91239F2084538A76C5357
※10 「デジタル・ガバメント実行計画」に関する要望書
http://www.shimadu.net/youbousho.pdf

※掲載している情報は、2021年4月30日時点のものです。

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