アーティスト西中千人によるコンセプトムービーがドイツ国際映画祭で金賞を受賞した。コンセプトは「リサイクルガラスの枯山水」。歴史ある空間に、資源のアップサイクルから生まれたオブジェを設置したアート空間は、持続型社会とアートの融合を表現し、「命の循環」を静かに伝えている。
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ガラス造形作家・西中千人氏の、持続型社会を新しいアートで表現したオブジェ『リサイクルガラスの枯山水』のコンセプトムービーが、ドイツのハンブルグで開催されたドイツ国際映画祭(Word Media Festivals 2020)で部門最高賞の金賞を受賞した。
オブジェは、使用済みガラスびんを回収、分別、洗浄、再溶融し、アップサイクルしたもの。コンセプトムービーでは、回収されたガラスびんがアート作品に生まれ変わるプロセスと「命も資源も、水や光のように循環してつながっている」というメッセージを、言葉に頼らず映像のみで静かに熱く訴えている。
ドイツ国際映画祭は、2000年にドイツ ハンブルグで設立された教育番組や企業映像を対象とした映像コミュニケーションメディアの国際コンペティションで、この分野において世界をリードするイベントである。
西中氏は今回、32カ国、795の応募のなかから「Television & Corporate Media Awards」「Public Relations」「Arts」 部門の最高賞の金賞を受賞した。
西中千人は2019年5月、京都法然院内に世界初のリサイクルガラスでつくられた枯山水『つながる』を創設。『つながる』には制作されたオブジェが山道に沿って40mの空間に配置されており、現代版枯山水庭園という新しいアート空間となっている。
法然院は、340年の歴史を持つ法然上人ゆかりの寺院で、小説家の「谷崎潤一郎」や哲学者の「九鬼周造」が眠る歴史ある場所だ。伝統文化に現代アートを融合させた新しい空間は、心の安らぎと同時に命のつながりや資源循環による持続型社会を提言していると言える。
枯山水のオブジェは、資源のリサイクルを推進する飲料用ガラスびんメーカー「日本耐酸壜工業株式会社」との共同研究によって生まれた。使用済みガラスびんを回収、分別、洗浄したのち、1400℃という高熱で再溶融し、鋳型に流し込んでつくりあげたものだ。
企業とアーティストのコラボレーションがもたらしたものは、資源のアップサイクルだけではない。ものづくりの現場にアーティストの創造力「アート思考」を取り込み、商品開発力向上等にも貢献するものになったという。
1964年和歌山市に生まれた西中氏は、薬科大学薬学部を卒業したのち、カリフォルニア芸術大学で彫刻とガラスアートを学ぶ。「命の煌めき・再生」をテーマに、古の日本の美意識から生み出した独自のガラス表現を追求している。
創作活動歴30年のなかで、第1回ガラスの美展 in 薩摩大賞、WIRED主催 CREATIVE HACK AWARD 2013グラフィック賞、ドイツWorld Media Festivals金賞など多くの受賞歴をもつアーティストである。
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