誰もが一緒に遊べる「インクルーシブ公園」 日本各地の事例とその特徴

ブランコで遊ぶ外国の女児

インクルーシブ公園とは、障害のある子もない子も一緒に遊ぶことができる公園のこと。車イスで登れるすべり台、背もたれのついたブランコなど、誰もが分け隔てなく遊べるような遊具がそろう。欧米ではすでに一般的だが、日本でも2020年に国内初のインクルーシブ公園が誕生。現状と併せて紹介する。

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2021.04.30
SOCIETY
学び

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広がりつつあるインクルーシブの動き

公園の遊具から顔を覗かせる子ども

Photo by Bruce Warrington on Unsplash

インクルーシブとは、日本語で「包み込むような、包摂的な」という意味。英語で「除外(Exclude)」の対義語である「Include(含める)」が語源で、誰も排除しない社会を目指す考え方だ。

これまでの社会のあり方は、性別や人種、民族や国籍、出身地や 社会的地位、障害の有無などによって、多くの人々を分け隔ててきた。しかし、「誰一人取り残さない」をテーマに掲げるSGDs達成に向け、インクルーシブな考え方をさまざまな場面で採り入れる動きが社会全体で広がっている。

近年では、すべての人を社会を構成する一人とする「インクルーシブ社会」や、障害の有無にかかわりなくニーズに合った適切な教育的を、地域の通常学級で学ぶことができる「インクルーシブ教育」という言葉も生まれている。

インクルーシブ公園とは

「インクルーシブ公園」とは、障害の有無にかかわらず、子どもだちがみんなで一緒に遊べるように設計された公園のこと。みんなが一緒に楽しめるよう、インクルーシブ公園は次のような要素を持つ。

1. 公平にアクセスでき、自立して遊びに参加できる(アクセシビリティ)

2. 自分の好きな遊びを見つけられる(選択肢)

3. 遊びを通し相互理解が深まる(インクルージョン)

4. 危険にさらされることなくのびのびと遊べる(安心・安全)

5. ワクワクしながら自らの世界を大きく広げられる(楽しさ)

例えば、敷地内に段差がなく車いすやベビーカーが移動しやすかったり、遊具の高さを抑えることで体が不自由な子でもケガの心配がないなど。一般的な公園で遊びづらい子どもへの配慮が施されているのが特徴だ。障害のある子やない子、それぞれ違う能力を持った子どもたちが同じ遊具を共有して遊ぶことで、公園が遊び場であり成長し合える場となる。

公園で遊べない親子の現状

夕景の公園と遊具

Photo by Jay Mullings on Unsplash

市民に開かれている街の公園だが、パブリックスペース関連のベンチや公園遊具のメーカー・コトブキによると、子ども全体の1割以上が、通常の公園では思うように遊べていない傾向が見られたという。

障害がある子を持つ親からは、「聴覚障害があるので目を離せないし、周囲の目も気になってしまう」「ダウン症で筋力やバランス感覚に課題があり、転びやすいので公園の遊具は心配」「多動症なので急に駆け出したり、他の子をケガさせないか不安」など、障害があることで公園を利用できず、友達や家族と一緒に遊べないという意見が多く挙がっている。

各地の事例からみる工夫

欧米ではインクルーシブな公園づくりが広がっている。日本ではまだ事例が少ないものの、2020年3月に国内初のインクルーシブ公園が東京都世田谷区に誕生。2021年4月現在、関東に3つのインクルーシブ公園がオープンしている。

東京都世田谷区「都立砧公園 みんなの広場」

砧公園にできた、日本初のインクルーシブ公園。敷地内にはファミリーパーク、スポーツ施設世田谷美術館など多彩な施設があり、「みんなの広場」はその一角に誕生した。広場の遊具周りにはゴムチップ舗装がされ、全体を柵で覆うことで急な飛び出しによる衝突が起こらないよう配慮されている。

遊具のブランコは、一般的なタイプから皿形、イス型の3種類を用意。体を支える力が弱い子でも楽しむことができる。立体遊具は緩やかなスロープで構成され、てっぺんの滑り台は車いすからも移りやすいように高さが調整されている。

また互いに回したり回してもらったりして楽しめる回転遊具も。多様性のある遊具で、子どもたちが思い思いに遊ぶことができる広場になっている。

東京都豊島区「としまキッズパーク」

2020年9月26日、「としまみどりの防災公園」(愛称はIKE・SUNPARK)の横にオープンした「としまキッズパーク」。敷車イスに乗ったまま遊べる箱型の砂場や、2人で乗れるベンチ型のブランコなど、親子でも楽しめる遊具が整備されている。地中央にはミニSLが走る、都心に広がるインクルーシブ公園だ。

神奈川県藤沢市「秋葉台公園」

神奈川・湘南の「秋葉台公園」には、障害の有無にかかわらず誰もが遊べる「インクルーシブ遊具」4台が2021年3月に整備された。車イスでも登れるスロープの付いた複合滑り台や、スロープのついたスライド式遊具、ハーネスで体を固定できるブランコなど。藤沢市は、今後も段階的に整備を進め、誰もが一緒に楽しめる進化型の広場を目指していくという。

インクルーシブ公園から、尊重し支え合う社会へ

インクルーシブ社会

Photo by Artem Kniaz on Unsplash

従来の公園のあり方では、障害のない子とある子が交わり、一緒に肩を並べて遊ぶことは難しかった。そうした状況が、障害に対する理解を妨げていたのではないだろうか。子どもは遊びを通して成長する。同じ場所で遊ぶことで、互いに違いがあることを理解することができる。公園の環境を整えることが、誰も排除しない社会へ続く一歩となるかもしれない。

※ 参考ページ
インクルーシブ・プレイグラウンドに必要な要素
https://townscape.kotobuki.co.jp/inclusive/about/
ユニバーサルデザインによる 公園の遊び場づくりガイド
https://www.minnanokoen.net/mkwp/wp-content/uploads/2020/10/ud_koen_guide_201805.pdf
みんなのひろばの遊具紹介
https://www.tokyo-park.or.jp/announcement/004/pdf/kinuta_hiroba.pdf
いろんな子どもたちが一緒に遊べる夢の空間!としまキッズパークがオープン!
https://www.city.toshima.lg.jp/toshimanow/new/kidspark.html

※掲載している情報は、2021年4月30日時点のものです。

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