地域の課題解決のために生まれる、コミュニティビジネスが注目されている。地域の人々や会社が積極的に取り組むことで、多くのメリットが生まれるだろう。コミュニティビジネスをわかりやすく解説するとともに、メリットや課題、実際の導入事例を紹介する。
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コミュニティビジネスとは、地域が抱える課題を「ビジネス」の形で解決する事業を指す。主体となるのは市民であり、ビジネスの資本となるのは地域の人材や資金、それぞれが有しているノウハウや施設である。
コミュニティビジネスを行う組織形態はさまざまで、地域が抱える課題に沿って参加することが可能である。株式会社やNPOはもちろん、個人や任意法人でコミュニティビジネスを手がける例もある。コミュニティビジネスの事例は以下のとおりだ。
・農家民泊(過疎化地域の人口減少を食い止め、より多くの人にその魅力を発信するための事業)
・郷土料理の体験型観光の提供(地域の伝統工芸品や食文化の継承と地域経済活性化のための事業)(※1)
コミュニティビジネスという言葉は和製英語で、コミュニティビジネス総合研究所・所長を務める細内信孝氏が提唱したと言われている。1999年に出版した自著のなかで、コミュニティビジネスという言葉と概念を紹介した(※2)。
コミュニティビジネスが成り立つまでの大まかな流れは以下のとおりだ。
1.解決するべき地域の課題を知る
2.それを解決するために、何ができるのかを考える
3.協力者を募る(サポートセンターや自治体窓口も活用)
4.ビジネスモデルの立案(商品開発や各種試算など)
5.創業準備(資金調達や場所の確保、備品の準備など)
6.事業スタート
コミュニティビジネスの第一歩は、コミュニティが抱えている問題を「知る」ところにある。知った上で、どのような解決策を誰と実現できるのか考えていこう。
コミュニティビジネスの立ち上げは個人でも可能だが、サポートしてくれる存在は必須である。各種サポート窓口も上手に活用していこう。資金や活動場所など、乗り越えるのが難しい点についても、なんらかの助言がもらえるだろう(※3)。
コミュニティビジネスのメリットは以下のとおりだ。
・地域経済の活性化(創業機会・就業機会の増加)
・地域産業のさらなる発展
・地域コミュニティの再生
・住人にとっての生きがい創出
市民が主体となって行うコミュニティビジネスが成功すれば、地域経済は活性化するだろう。中小企業が主体となってビジネスを立ち上げれば、その企業の発展にもつながる。ビジネスが広がれば働き口も増え、地域課題が解決されれば行政コストを削減できる可能性もある。
市民が一体となって活動することで、地域のコミュニティは新たに生まれ変わっていく。また「地域のために働く」「誰かとつながり合う」という仕組みが、中高年世代にとっての「生きがい」になるケースも多い。
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一方で、コミュニティビジネスにも問題点はある。具体的な例は以下のとおりだ。
・人材不足(活動分野の専門知識を有している人材や確かな経営スキルを持つ人材が不足している)
・資金不足(金銭面で自立できていない活動団体が多い)
・つながりの不足(コミュニティビジネス同士が孤立しがちで、成功・失敗それぞれの事例を共有しにくい)
地域課題のため、誰もが挑戦できるコミュニティビジネスではあるが、ビジネスとして成り立たせるためには、専門知識を有する人材の確保が必須である。しかし現実には、地域内での人材育成が間に合っていないケースも多くみられる。
また、慢性的に資金が不足しており、「助成金・金銭的援助がなければ成り立たない」というビジネス事例も存在している。そもそもコミュニティビジネスとは、大きな収益を上げるためのビジネスではない。事業内容によっては、収益を上げるのが難しいケースもあるだろう。
とはいえ、コミュニティビジネスを持続可能型の取り組みにしていくためには、経済的な自立は必要不可欠である。どういった方法で自立への道を探っていくのかも、コミュニティビジネスそのものが抱える課題と言えるだろう。
静岡県浜松市北区三ヶ日町の特産品は「みかん」だが、規格不適合によって、年間2万トン以上が処分されていた。中村健二氏が代表を務める株式会社フードランドは、2004年頃からこれらのみかんの加工をスタート。ジュースやシャーベット、お菓子などの食品類はもちろん、アロマオイルや香料も開発した。
株式会社フードランドはもともと食肉卸売業を営む会社であったが、自社のノウハウを他業種にも生かすことで、地域が抱える問題の解決へとつなげられた(※4)。
全国第2位の規模の耕作放棄地を抱える山梨県。都市部との交流の減少を問題視した曽根原久司氏は、2001年にNPO法人「えがおつなげて」を設立した。
耕作放棄地を利用して農作物の生産・販売を手がけている。活動の支援者を徐々に増やし、都市・農村交流イベントを積極的に開催した。開墾ボランティアに参加した人は合計で1,000人にもおよび、わずか3年間で3ヘクタールの耕作放棄地の再生につながった(※5)。
農村部におけるコミュニティビジネスとして人気が高い、農泊。農業と観光をセットで提供する観光ビジネスだが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響で、利用客が激減した。撤退を余儀なくされた事業者も多い(※6)。
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地域が抱える課題を、地域主体の事業で解決へと導くコミュニティビジネス。さまざまな課題を有しているものの、地域のために地域の人や経済が動くことによって、多くのメリットが生まれるだろう。コミュニティビジネスが広がれば、地域の魅力発信につながるだけではなく、多くの雇用の機会が創出される。
ただし、コミュニティビジネスを軌道に乗せるのは、決して簡単ではない。人材育成や各種サポートの利用など、入念に準備を整えるべきだろう。地域が抱える課題が明らかになったときには、コミュニティビジネスを通じた解決への道筋を探ってみるのも、一つの方法である。
※1 コミュニティビジネス事例集2016(P8~P11)
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/cb/data/2016jirei-seihonprint.pdf
※2 本県のコミュニティ・ビジネスの現状及び必要な支援策について
https://www.pu-kumamoto.ac.jp/kokenkenkyu/h15gaiyo/15akamatsu.pdf(P1)
コミュニティ・ビジネス関連書籍のラインナップ
http://www.hosouchi.com/book2.html
※3 NPO法人 コミュニティビジネスサポートセンター
https://cb-s.net/service/
※4コミュニティビジネス事例集2016(P14~P15)
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/cb/data/2016jirei-seihonprint.pdf
※5 コミュニティビジネス事例集2016(P28~P29)
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/cb/data/2016jirei-seihonprint.pdf
※6 新型コロナで農泊がピンチ 今年の宿泊収入、50%超減
https://www.at-s.com/news/article/economy/national/785555.html
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