性的感情を抱かない「アセクシャル(エイセクシュアル)」とは

夕日を見ながら手をつなぐカップル

アセクシャルとは、恋愛感情の有無に関わらず、他者に対して性的欲求を抱かないセクシャリティのことである。人に対する愛情や結婚願望がないと誤解をされることもあり、アセクシャルへの理解や価値観の尊重を広める必要がある。

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2021.04.30
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アセクシャルの意味とは

自転車をこぎながら手を取り合うカップル

Photo by Everton Vila on Unsplash

アセクシャル(エイセクシュアル)とは、他者に対して性的欲求を抱かないセクシャリティを意味する。日本では無性愛者と呼ばれることもある。

世界最大級のアセクシャル・コミュニティー「the Asexual Visibility and Education Network(AVEN)」は、アセクシャルを「恋愛感情の有無に関わらず、他者への性的欲求を経験しない人」と定義している。

そのためアセクシュアルの人のなかには、他者に対して恋愛感情はあるが性的欲求は抱かない人(ロマンティック・アセクシュアル)もいれば、恋愛感情も性的欲求も抱かない人(アロマンティック・アセクシュアル)もいる。日本でアセクシャルという言葉は、アロマンティック・アセクシュアルの意味合いで使われる場合が多い。

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アセクシャルの特徴、人口の割合

米国の作家ジュリー・ソンドラ・デッカーによると、人口100人のうち1人はアセクシャルであるという。また、厚生労働省の研究チームが2019年に大阪市民を対象におこなったアンケートによると、4285人の回答者うちアセクシャルであると回答した人は0.8%(33人)であった(※)。

AVENによると、アセクシャルの人々は性行為自体に魅力を感じない一方で、パートナーに対して恋愛的な関係を望む人もいれば、友達のような関係性だけで満足する人もいるという。また、性的興奮を経験する人もいる一方、パートナーとの性的関係は望むことはないとされている。

また、恋愛感情を抱かない場合は、友人同士の恋愛話やラブストーリーに興味がない・共感できないといった特徴が考えられる。あるいはそういった話題に対して抵抗はないが、恋愛に必要性を感じられない、ない方が好ましいと感じる人もいる。

アセクシャルは多様にあるセクシャリティの一つであり、性欲自体を持たない無性欲や、性的行為に嫌悪感を抱く性嫌悪、性的欲求低下障害(HSDD)などの病状とは異なる。また、後天的に性的欲求を抱かなくなる場合もあり、いつから・どういった人がアセクシャルになるのかといったことは断言できない。

アセクシャルと似ているセクシャリティ

セクシャルマイノリティの人々を表す言葉として「LGBTQIA」があるが、この「A」にあたるのがアセクシャルだ。以下のような、アセクシャルと関連・類似するセクシャリティもある。

アロマンティック

性的欲求の有無に関係なく、他者に対して恋愛感情を抱かないセクシャリティのことを指す。アセクシャルでも恋愛感情を抱かない場合はあるが、性的欲求はない点がアロマンティックとは異なる。

ノンセクシャル(ロマンティック・アセクシャル)

ノンセクシャルとは、恋愛感情はあるが他者に対して性的欲求を抱かないセクシャリティのことを指す。恋愛感情がある場合のアセクシャルとして、ロマンティックアセクシャルとも呼ばれる。

アロマンティック・アセクシャル

アセクシャルは、恋愛感情の有無に関係なく、他者に性的欲求を抱かないセクシャリティを指すが、恋愛感情と性的欲求のどちらも抱かない場合はアロマンティック・アセクシャルと呼ばれる。

アセクシャルの結婚観

重ねた手と手

Photo by Shelby Deeter on Unsplash

アセクシャルの人は、他者に性的欲求を抱くことはないが、決して人に対する愛情がない、結婚願望がないというわけではなく、他のセクシャリティの人と同じように感情があり、友人やパートナーに対して愛情を抱く。

アセクシャルで結婚している人もいれば、友情関係としてパートナーを持つ人もいて、結婚観は人それぞれ。セクシャリティで人の恋愛観や結婚観などをジャッジすることはできないし、するべきでもないだろう。

誤解や無理解による苦悩

アセクシャルであることで、周囲の人からの誤解や無理解によって傷つくことは少なくない。例えば、友人たちが恋愛関連の話で盛り上がっている中、興味・関心を持たないことで珍しがられたり、異常だとジャッジされる。また、パートナーとの性行為を求めないことで、愛情がないと誤解されてしまう場合もある。

周囲の人々は、恋愛や性的嗜好の価値観が自分とは異なるからといって、偏見を持ったり価値観を押しつけるべきではない。

また、「まだ本当の恋愛を経験していないだけだよ」「恋愛感情や性的感情がないなんて、人生損してる」などといった、相手のセクシャリティを無視した発言にも気を付けたい。誤解・無理解によって相手を傷つけてしまうことのないよう、相手のセクシャリティを理解し尊重することが大切だ。

アセクシャルを正しく理解し、すべての人が生きやすい社会へ

セクシャルマイノリティについて語るとき、「恋愛の形は自由であるべきだ」と言われることが多いが、アセクシャルのように、必ずしも全員が恋愛感情や性的感情を抱くわけではないことを覚えておきたい。恋愛の形は自由であるのはもちろん、「愛し方も人それぞれ」だということを理解し、すべての人が生きやすい社会を形成していくことが大切だ。

※ 大阪市民の働き方と暮らしの多様性と共生にかんするアンケート」結果速報
http://www.ipss.go.jp/projects/j/SOGI/%E7%B5%90%E6%9E%9C%E9%80%9F%E5%A0%B120190425%E5%85%AC%E8%A1%A8%E7%94%A8.pdf

※掲載している情報は、2021年4月30日時点のものです。

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