世界と日本の「環境税」の現状 支払金額の目安とその使い道とは

空を背景に下から見上げた工場の外観

環境税とは、エネルギー税や炭素税などといった、環境保全を目的として課される税金のこと。税収は、再生可能エネルギーの開発や省エネ推進などに活用される。世界各国では多様な環境税が導入されており、日本でも2024年から森林環境税を導入予定。

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2021.04.06
SOCIETY
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環境税とは

木々の間から見える日差し

Photo by Dan Stark on Unsplash

環境税とは、環境保全を目的として課される税金のこと。身近なもので言えば、車や電気の使用によるエネルギーの消費量や、それによって発生する二酸化炭素量などの環境負担に課される税金のことを指す。

環境負荷が掛かるほどより高い税金が課され、環境保全に有益なものに対しては免税・減税がされることで、社会の行動パターンを環境にポジティブな影響を与えるものへと変化させ、地球温暖化の防止やエネルギー消費の抑制などを図る。

近年では二酸化炭素の排出量に対する課税、いわゆるカーボンプライシングが世界各国で広がっている。1990年代にフィンランドやスウェーデン、デンマークといった北欧諸国で炭素税が導入されると、2000年代にはドイツ、イギリス、イタリア、フランスなどに拡大。2012年には日本でも「地球温暖化対策のための税(炭素税)」が導入された。

ただし、日本の環境税率は諸外国と比べるとかなり低く、環境省は今後、税率を段階的に引き上げていくことを検討している。

世界の環境税の現状

スウェーデン

スウェーデンでは、エネルギー税や炭素税のほか、水質汚染、核燃料、放射性廃棄物などに対して環境税が導入されている。2021年現在、スウェーデンの炭素税率は世界でもっとも高く、暖房用・輸送用の化石燃料消費によって排出されるCO2排出量に対して、1tあたり114ユーロ(約14,500円)の炭素税が課されている(※1)。

その一方、再生可能エネルギーであるバイオガスや、環境配慮型の発電システムの開発に使用される燃料など、環境負荷が少ないものに対しては税金の引き下げられている。

また2007年にストックホルムでは、大気汚染やCO2排出量などの削減を目的とした渋滞税が導入された。スウェーデンではこのような環境税の引き上げとともに、2045年までに温室効果ガス排出量をゼロにすることを目指している。

デンマーク

デンマークでは、エネルギー税、炭素税、車体課税のほか、大気汚染物質や、水質汚染物質、有害化学物質といった環境汚染物質への課税を積極的に導入している。

また温室効果ガスの削減を目的としたフロン税や、プラスチックや紙、アルミニウムといった容器包装材全般の使用や、廃棄物の削減を図る包装物税に代表される環境税もいち早く導入している。

フランス

フランスでは、2014年に炭素税を導入。ガソリン、石炭、軽油といった化石燃料消費に対し課税されるが、バイオ燃料は減税、ジェット燃料、ブタン、プロパンは免税となる。徴収した税金は、所得税や法人税の控除、環境に配慮したインフラへの整備、再生可能エネルギーの開発などに充てられる。

2020年には、フランス発の国際便に課税する「環境貢献税」を導入。乗客一人当たり1.5~18ユーロが課される(※2)。また、フランスでは2030年にはCO2排出量1tあたりの炭素税率を100ユーロ(約1万2000円)にまで引き上げることを目標としている。

日本

日本では主に、化石燃料やエネルギー消費、自動車の所持・保有などに対して環境税が課されていたが、2012年10月からは新たに「地球温暖化対策のための税(炭素税)」が導入された。

石油・天然ガス・石炭といったすべての化石燃料の使用によるCO2排出量に対して課され、1トン当たりの税金は289円とされている。例えば、原油や石油については1キロリットルあたり760円、ガス状炭化水素は1tあたり780円、石炭は1tあたり670円の炭素税がエネルギー税に上乗せされる(※3)。

その一方で、再生可能エネルギーやバイオ燃料、エコカー、省エネ住宅へのリフォームにかかる費用の減税をおこなうことで国民や企業への課税負担の緩和をおこなっている。

また、地方の特性に合わせた環境政策がおこなえるよう、森林環境税・水源税 産業廃棄物税・地方炭素税などといった、自治体が課税主体となる地方環境税も導入している。

環境税の使い道

風力発電所

Photo by Jason Blackeye on Unsplash

環境税の税収は、省エネ促進や再生可能エネルギーの普及・開発など、環境保全費用として活用される。例えば、リチウムイオン電池などの低炭素技術を開発する産業の発展や、中小企業や公共施設への省エネ設備や再生可能エネルギー導入の推進といった政策が図られている。

日本では、このような環境税の導入や環境保全対策を進めることで、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目標としている。

森林環境税とは

森林環境税はもともとは地方税として、名称は異なるがいくつかの自治体で徴収されてきた。しかし、2024年からは国税として、一定の所得があり個人住民税を納める全国民に対し、年額1000円が課されるようになる。

森林環境税の税収は、人工林を保全する新事業「森林バンク」の運営財源に充てられ、間伐、林業の担い手育成、木材利用や普及の促進などに活用されるという。これまで手の行き届いていなかった山村地域の森林整備が進むとともに、林業の発展や山村の活性化が期待されている。

一方、すでに森林環境税を課税している自治体と国で「二重課税」になるという懸念の声も少なくない。

メリットとデメリット

環境税が導入されることで、環境に負荷が掛かるものに対して多く課税され、環境に配慮したものに対しては減税・免税となる。このように「より環境に配慮した人が多く節税できるしくみ」ができることで、環境にポジティブな影響を与える行動が増えていくだろう。またその結果、資源の消費やCO2排出量の削減が進み、環境負担の軽減も期待できる。

環境税の導入によって、企業の経営負担が大きくなる可能性がある。とくに中小企業においては、企業発展のための開発資金が減り、雇用を取りやめたりすることによる経営悪化が懸念される。また、環境税を導入していない国との国際競争力にも大きな影響が出てくるだろう。

環境税の導入成功は環境と経済のバランスが鍵

森林の道路に差し込む一筋の光

Photo by JOHN TOWNER on Unsplash

環境税の導入や税率の引き上げは、環境に配慮した社会のしくみをつくるのに効果が期待できる。しかし、企業への課税負担を減らすためにも、化石燃料を使用しない技術への切り替えが難しい業界や、国際競争に悪影響を及ぼす可能性のある企業に対しては減免・還付措置をおこなうなど、経済と環境の両方のバランスを保つ必要があるだろう。

※1 Government Offices of Sweden「Carbon Taxation in Sweden」(p.12)
https://www.government.se/48e407/contentassets/419eb2cafa93423c891c09cb9914801b/210111-carbon-tax-sweden---general-info.pdf
※2 環境省「国内外における税制のグリーン化に関する状況について」(p.59)
https://www.env.go.jp/policy/05_%E3%80%90%E8%B3%87%E6%96%99%EF%BC%95%E3%80%91.pdf
※3 環境省「地球温暖化対策のための税の導入」
http://www.env.go.jp/policy/tax/about.html

※参考サイト
環境省「諸外国における温暖化対策税の主な減免・還付措置等の概要」
https://www.env.go.jp/council/16pol-ear/y161-12/mat_01_2/04_3.pdf
環境省「諸外国における税制全体のグリーン化の状況等」
https://www.env.go.jp/policy/tax/conf/conf01-08/mat04.pdf
林野庁「森林環境税及び森林環境譲与税」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/kankyouzei/kankyouzei_jouyozei.html

※掲載している情報は、2021年4月6日時点のものです。

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