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ビジネスの成否は環境に左右されるところも大きい。日本のビジネス環境を知る指標の一つが、世界競争力ランキングだ。このランキングから何がわかるのか。ランキング指標やランキング上位国の傾向、そして日本の強みと弱みを解説する。
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エレミニスト編集部
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IMDが発表する「世界競争力年鑑」とは、国の競争力に関連する統計データと企業の経営層を対象とするアンケート結果から作成される競争力指標だ。2020年の調査対象国は世界63カ国だった。
収集される指標は多岐にわたり、それらに基づいて作成される「世界競争力ランキング」は、その国に企業が競争力を発揮できる土壌があるかを測るものさしと考えられる。
IMD(International Institute for Management Development)とは、国際経営開発研究所。経営者と幹部教育に特化した世界的な専門ビジネススクール。拠点はスイスのローザンヌにあり、エコミストやフォーブスなどの経済誌やビジネス誌のランキングでは高評価を得ている。
IMDと他のビジネススクールの大きな違いは、大学などの外部機関と提携せず、独立した存在であることだ。学位授与にはMBAを取得するための経営学修士と、中堅幹部向けのEMBAの2つのプログラムがある。
経済状況 | 政府効率性 | ビジネス効率性 | インフラ |
---|---|---|---|
国内経済 | 財政 | 生産性・効率性 | 基礎インフラ |
貿易 | 租税政策 | 労働市場 | 技術インフラ |
国際投資 | 制度的枠組み | 金融 | 科学インフラ |
雇用 | ビジネス法制 | 経営プラクティス | 健康・環境 |
物価 | 社会的枠組み | 取組み・価値観 | 教育 |
競争力年鑑を作成するために使われるのは、各国の政府が公表する統計と、対象国の企業経営層によるアンケートだ。2020年版のアンケート回答者は、約5,900人だった。
統計データとアンケートデータを元に標準偏差によるスコアリングを行い、それらを分類して合算した結果がランキングとなっている。評価項目の分類は次のとおり。
順位 | 国名 |
---|---|
1 | シンガポール |
2 | デンマーク |
3 | スイス |
4 | オランダ |
5 | 香港 |
6 | スウェーデン |
7 | ノルウェー |
8 | カナダ |
9 | UAE |
10 | 米国 |
11 | 台湾 |
12 | アイルランド |
13 | フィンランド |
14 | カタール |
15 | ルクセンブルク |
16 | オーストリア |
17 | ドイツ |
18 | オーストラリア |
19 | 英国 |
20 | 中国 |
2020年のランキング首位は、2年連続でシンガポール、2位は昨年7位のデンマークだった。スイスやオランダも前年度に比べて大きく順位を上げている。
項目別に見るとシンガポールは1位ではないものの、評価項目のすべてで7位以内の高順位にランキングしている。その他の国については、シンガポールのようにすべての項目で上位に入っている国はないが、下位半分にランキングされる項目もないことがわかる。
日本の総合順位は63カ国・地域中34位だった。
日本は、世界競争力ランキングの公表が始まった1989年からバブルが終わる1992年までは1位に位置していた。しかし1997年の金融危機で17位に急落、その後は基本的に20位台にとどまっていた。2019年に30位、2020年は34位となった。
競争力を測る指標は随時入れ替えられており、過去と現在のランキングの単純比較はできない。近年はグローバル化、ICT化、人材の3点が重視されている。
日本の競争力を削ぐ原因となっているのは、「政府の効率性」の41位と「ビジネス効率性」の55位にありそうだ。とりわけビジネス効率性は2015年以降、大幅に下降している。
他方、評価されているのは雇用の安定や積極的な体外直接投資だ。企業ができる競争環境の整備には、企業内の意思決定のプロセスや、デジタル化への対応を見直しが考えられる。
世界競争力ランキングは、相対的に決まるものだ。どんなに自国ががんばっても、その他の国の環境がよりビジネスにふさわしければ、ランキングは落ちる。
しかし世界の中で日本のビジネス環境がどのような立ち位置にあるのかを把握するには、よい指標であることには変わりない。
日本は2020年のランキングでも明らかになった「政府の効率性」と「ビジネス効率性」低さを真摯に受け止めて、状況の改善に取り組んでいくべきだろう。
※ 参考サイト
IMDについて
https://www.imd.org/country/jp/
IMD「世界競争力年鑑2020」からみる日本の競争力 第1回:日本の総合順位は30位から34位に下落
https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20201008.html
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