環境負荷を削減する仕組み「環境マネジメントシステム」とは コスト削減や業務効率の改善も解説

煙を排出する工場

環境マネジメントシステムとは、企業や自治体などの組織が、事業活動の過程で発生する環境負荷を把握し、活動を継続的に改善するための仕組みのこと。このシステムを導入することによって、環境問題の改善を図るだけでなく、コストの削減や業務の効率化が期待できる。

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2021.03.29
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環境マネジメントシステムとは

工場から出る煙

Photo by Alexander Tsang on Unsplash

「環境マネジメントシステム(EMS)」とは、企業や自治体などの組織が、事業や活動を通して発生する環境負荷を見直し、継続的に改善を図るための仕組みのことである。この環境負荷というのは、大気、水、土地、天然資源、植物、動物、人といった組織の活動過程に関わるすべてに対して発生する負荷のことを指す。

業種や組織規模にかかわらず、事業をおこなうすべての組織がこの環境マネジメントシステムを導入することによって、より効果的に地球環境問題の改善を目指すことができる。

環境マネジメントシステムの仕組み

環境マネジメントシステムは、計画から検証までの一連のサイクルを繰り返しおこなう「PDCAサイクル」という仕組みが一般的だ。PDCAとは以下のような4段階のことである。

PLAN(計画):どのような環境負荷をどれほど削減するのか、目標と方法を設定する。
DO(実施):計画に基づき活動を実践する。
CHECK(分析・評価):活動の成果を測定・分析・評価する。
ACTION(検証・改善):評価に基づき計画を見直し、改善する。

例えば、環境マネジメントシステムを取り入れたアパレル企業においては、原材料の調達、生産、販売、リサイクル、廃棄といった、自社製品に関わるすべての過程で発生する環境負荷を見直す。

「製造に使用される資源の量を5%減らす」という目標を立てた場合、その目標を達成するために「製造工場から出た端切れとしてリサイクルコットンを使用する」という計画を立てて実践する。その結果、前年比でどれほどの資源削減を達成したのかを分析し、改善点を次の計画に反映させる。

このようなサイクルを繰り返しおこなうことによって、事業活動の継続的な改善と、環境負荷の削減が期待できる。

環境マネジメントシステム認証規格の種類

環境マネジメントシステムは、独自に構築・運用することもできるが、外部機関によるシステムを採用し、審査・認証を受けることでより効果的なシステムを運用できる。

また、第三者からの評価も加わるため、社会的な信頼も得られるだろう。外部機関によって定められた環境マネジメントシステム認証規格には、以下のような種類がある。

ISO14001

ISO14001は、国際標準化機構(ISO)が定めた環境マネジメントに関する国際規格である。もっともメジャーな認証機関であるため、認証を取得することで得られる社会的な信頼性は高い。

また国際取引おいても通用するため、海外で事業展開している企業にも適している。システムの管理や維持には膨大な労力や費用がかかるため、主に大企業が取得することが多い。

エコアクション21

ISO14001を参考に、環境省が定めたEMS規格。国際取引には通用しないが、審査にかかるコストが低いため中小事業者などの小規模な組織においては、比較的導入しやすい。認証取得と更新の際には環境経営レポートの提出が必要となり、このレポートはサイト内で閲覧することができるようになっている。

エコステージ

一般社団法人・エコステージ協会が定めたEMS規格。エコステージ1からエコステージ5までの5段階のレベルを備えており、エコステージ2はISO14001とほぼ同水準とされている。そのため、組織は労力や目的に合わせてステージを選択でき、無理なく認証を取得できる。また、エコステージの評価員によってコンサルティングを受けることも可能。

環境自治体スタンダード(LAS-E)

環境自治体会議の環境政策研究所によって定められた、自治体専用のEMS規格。市民による監査を取り入れているため、より市民が望む環境自治体のかたちに近づけることができる。2016年4月には、取り組み内容や監査の自由度を高めた「LAS-E Ⅱ」が制定されている。

KES・環境マネジメントシステム・スタンダード

京都市が開発したEMS規格。ISO14001を参考に、シンプルで低コストなシステムを構築している。組織の規模や環境負荷の大きさに合わせて4つの段階から選択できるため、大~中小企業や自治体、学校など、あらゆる規模や業種の組織が導入しやすい。

環境マネジメントシステムを導入するメリット

工場と夕焼け空

Photo by Chris Liverani on Unsplash

社会的な評価や信頼が得られる

世界で人々の環境意識が高まっているいま、環境にやさしい製品の購入や、企業の環境問題への取り組みを意識する消費者が増えている。環境マネジメントシステムの導入は、消費者や取引先からの評価や信頼度を高め、ビジネスを成功させることにつながるだろう。

環境関連の規制や要請に対応できる

環境問題への懸念は深刻化しており、環境保全に関する規制や要請は、今後ますます強化されるだろう。また、環境に関する法律に違反すれば、損害賠償といったリスクが発生する恐れもある。事業の体制を整えて環境への影響をしっかりと管理しておけば、そういった事態に対応して組織を守ることができる。

業務の効率化・コストの削減につながる

環境マネジメントシステムの導入を通じて、資源やエネルギーの消費が低減されれば、経営におけるコストの削減につながる。また、環境への負担を減らすということは、組織内の業務の無駄を省くことでもあるため、業務の効率化が図られる。

労力と費用がかかるデメリットも

種類にもよるが、環境マネジメントシステム認証規格の審査や更新にはかなりの費用がかかる。また、文書や記録も多いため事務作業の負担も増えてしまうことがデメリットとして挙げられる。

EMS導入までの流れと費用

環境マネジメントシステムを導入するには、組織規模や事業内容に合ったEMS認証を選択して、審査を申請する必要がある。認証機関から審査員が介入しながら約6ヶ月〜1年にわたって審査をおこない、必要に応じてコンサルタントを取り入れる。審査が通れば認証証や登録証が発行され、1〜3年毎に更新が必要となる。

費用は認証機関や組織の規模によってさまざまだが、各自治体に申請すれば、認証取得のための補助金を受けられる場合もある。

環境マネジメントシステムの導入は今後ますます増加

環境問題への人々の関心が高まるいま、環境マネジメントシステムを取り入れる企業はますます増加することが予想される。実際に、国内におけるEMSの認証件数は現在、ISO14001だけで14,638件とされている(2021年3月16日現在)。

大手企業だと、富士通やサントリーグループ、積水化学などがすでに取得している。また、サプライヤーや取引先にも環境マネジメントシステムの整備や環境負荷削減の取り組みを要請している企業も多い。

一方、規模の小さい組織にとってはEMS認証の審査費用や事務作業などの負担は懸念のポイントだろう。しかし、導入によってエネルギーや資源のコストを削減し、業務の効率化を図ることができれば結果的に負担は軽減されるため、環境マネジメントシステムを取り入れる価値は大いにあると考えられる。

※ 参考サイト
環境マネジメントシステム|環境省
https://www.env.go.jp/policy/j-hiroba/04-1.html
ISO14001|環境省
https://www.env.go.jp/policy/j-hiroba/04-iso14001.html
適合組織統計データ|公益財団法人日本適合性認定協会
http://www.jab.or.jp/system/iso/statistic/iso_14001.html

※掲載している情報は、2021年3月29日時点のものです。

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