1次から3次までを融合する「6次産業」とは 農林水産省が推進、豊かな資源に付加価値を

まるまると実ったたくさんのトマト

6次産業とは、1次産業である農業や漁業において、加工の2次産業、サービスや販売の3次産業まで、1次から3次を融合することで産業の可能性を広げていく取り組みだ。生産物の価値を上げることで、農林水産業の事業者の所得向上や雇用機会の創出につながるとされ、国や地域を挙げて推進されている。

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2021.03.26

6次産業化とは

作物を収穫中のコンバイン

Photo by no one cares on Unsplash

6次産業化とは、農業や水産業の従事者(1次産業)が、加工や商品化を行い(2次産業)、販売・流通まで手がけ(3次産業)、経営が多角化することを指す。産業を融合することで、新しい産業を形成しようとする取り組みだ。

この第1次から第3次までの産業構造は、イギリスの経済学者であるコーリン・クラークが1940年代に説いた分類である。各産業については次の通りだ。

1次産業
第1次産業は、農業・林業・水産業など、自然から資源を採取する産業のことを指す。

2次産業
第2次産業は、1次産業が自然から採取した資源を、加工・生産すること。鉱工業や製造業、建設業などが属しており、それらに従事する工場労働者の多くが青い作業服を着ていたことから、ブルーカラーとも呼ばれる。

3次産業

第3次産業は、流通・販売など目に見えないサービスや情報の生産を行う産業。金融、保険、卸売り、小売、サービス業、情報通信業などが属する。第3次産業の労働者はシャツとスーツを着用しているため、ブルーカラーに対してホワイトカラーと呼ばれている。

6次産業とは、1次から3次までの各産業の一体化を図ること。「6」という数字は、「1次産業×2次産業×3次産業」というかけ算が由来になっている。農林漁業者が、採取した生産物を自ら加工し、販売まで手がけることで、豊かな資源にさらなる付加価値を生み出していこうという取り組みである。

なぜ6次産業が生まれたのか

収穫網一杯の魚を水揚げをする漁船

Photo by Paul Einerhand on Unsplash

6次産業という言葉は、1994年に現東京大学名誉教授の今村奈良臣氏によって提唱された。1次産業から3次産業まで一を融合して農業の可能性を広げるものとして生まれた言葉である。

6次産業は近年、農林水産省などが中心となって国を挙げて推進されている。その背景には、農林水産物の市場規模の低迷という問題がある。

消費者が食料品に支払う金額は増えているものの、食の外部化や簡便化が進み、国産の農水産物のシェアは低下。農林漁業者の所得は伸び悩みを見せている。

6次産業化は、生産物の付加価値を高めることで、農林漁業者の所得向上や雇用の創出が目指すものである。

農林水産省による推進支援

6次産業化を推進するため、農林水産省は「六次産業化・地産地消法」を2011年に施工。農林漁業者は、加工・販売まで進出した事業活動計画を作成し、大臣認定を受けると、種苗法や農地法などの特例が認められる。

また、補助金・助成金のほか、6次産業化プランナーによる事業実施後のサポートを受けることができる。

6次産業の成功アイデア具体例

瓶に入ったオレンジ色のフルーツジュース

Photo by K15 Photos on Unsplash

6次産業化によって、どのような商品や事業生まれているのだろうか。成功事例を3つ紹介する。

有田みかんの魅力を活かした商品開発

みかんの栽培で有名な和歌山県。7戸のみかん農家によって創業された早和果樹園は、みかんを加工した高級みかんジュースの販売をスタートした。

2005年に法人化し、その後もシロップ漬やみかんポン酢など、さまざまな商品開発を行い、補助事業を活用して加工工場まで新設。一環体制を築き上げ、2019年には売上高6億円を超えている。

“クラフト”が人々を惹きつけるハードサイダー

長野県で長年リンゴ農家を営んできた小澤果樹園と宮嶋林檎園によって、2017年にリリースされたハードサイダー「サノバスミス」。

発売前より長野県内の地元飲食店などでイベントを行ったり、フェスに出店するなど積極的な普及活動が功を奏し、多くの人に愛される存在に。2019年に法人化し、自家醸造所を完成させた。

採れたてパクチーを活かした商品化

千葉県八千代市でパクチーなどを生産する立川あゆみさん。パクチーの生産出荷にくわえ、船橋市のダイニングバー「hygge」のオーナーシェフと共同開発したパクチーペースト「PAKUCI SISTERS」を販売している。

畑で収穫したその日にペースト化することで生まれるフレッシュな風味が話題になった。

6次産業のメリットとは

所得の向上

農産物を加工し付加価値をつけて販売することで、1次産業とは別の所得を受け取ることができる。商品化によって販売価格が安定するというメリットも。

新規雇用の創出

自然を相手にする農林漁業者は、農閑期などが発生することもしばしば。その間を加工業務に当てられるため、労働の均一化を図ることができ、雇用創出にもつながる。

ブランディング効果による地域活性化

地域資源を事業化することは、ブランディングによる地域活性化の効果も期待できる。移住者や観光客が増加すれが、地域の伝統や文化などを未来に継承することにもつながるだろう。

現状と課題

農林水産省によると、平成30年度の6次産業化に取り組む農業生産関連事業の従事者は44.2万人。市場規模は2兆円を記録している。

しかし、商品開発にあたり、設備設計など多額の初期費用が必要になる。くわえて、加工や流通、販売の知識を持ち合わせている生産者は少なく、製造技術や販路開拓などが課題となってくる。

6次産業化が農林水産業の未来をつくる

畑から芽吹く植物

Photo by Adrian Infernus on Unsplash

生産から開発、販売まで自営で行い、経営の多角化を目指す6次産業化。決して簡単なことではないが、地方や農山漁村の過疎化が進んでいる昨今、日本の農林水産業の未来をつくり、ひいては地域活性化へとつながることが期待されている。

しかし、現在も人手が不足している状況下において、地域や国による支援は不可欠である。それだけではなく、私たち消費者もまた、消費行動によってできることがあるはずだ。

現状や背景を知った上で、何を選択するのか。一歩踏み込んで考えていきたい。

※掲載している情報は、2021年3月26日時点のものです。

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