地域を越えた問題解決に取り組む「グローバル・ガバナンス」 3つの取り組み事例と実行の課題 

国旗

グローバル・ガバナンスが注目されている。環境問題や平和、テロなど一国では対応できない問題が増えているからだ。人の移動や経済活動が一国にとどまならい現代社会で、この傾向が逆方向に進むことはないだろう。グローバル・ガバナンスとは何か、事例を交えて解説する。

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2021.03.15
SOCIETY
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グローバル・ガバナンスとは

各国の代表が集う会議の様子

Photo by Matthew TenBruggencate on Unsplash

グローバル・ガバナンス(global governance)とは、世界で起こる多様な問題に対して、一国では解決できない問題を地域や国境を越えて解決するための政治的相互作用のこと。地球規模の諸問題を解決するための国際的な意思決定の仕組みとも言える。

地球規模の諸課題とは、貧困、飢餓、感染症、人権、環境、テロなどが挙げられる。一国では対応が難しい問題に、グローバル・ガバナンスのアプローチが期待されている。

「SDGs(持続可能な開発目標)」の目標16のターゲットには、「包摂的な(inclusive)という言葉が入っており、すべての人が一つになって課題に取り組む必要がある。

グローバル・ガバナンスの機関は次の11の国連機関だ。

・国連総会
・国連安全保障理事会
・国連経済社会理事会
・国連通貨基金
・国連復興開発銀行
・国際金融公社
・アフリカ開発銀行
・アジア開発銀行
・米州開発銀行
・世界貿易機関
・金融安定理事会

2020年3月6日現在、外務省の発表によると世界には196の国がある。そのうち国連に加盟するのは193カ国。国連総会ではすべての加盟国がそれぞれ1票の投票権を持つことを定めている。

グロ−バルガバナンスの問題点

1997年のアジア通貨危機と2007年のリーマン・ショックを経て、世界規模の経済問題に対応するにはG8では不十分という認識が共有されるようになった。

経済だけでなく、コニュニケーションのあり方も国境は関係なくなりつつある。しかし、国連の決定には基本的に強制力がないため、グローバルな問題に対処するには無力である。

軍事力や経済制裁のほかに強制力を行使するには、攻撃的なナショナリズム、文化的な閉鎖、宗教的な差別などがあるが、悪い影響を及ぼしかねない。

一方、国家間の直接的な交渉は、不完全ながらも国際的な機関を通じて不完全ながらも機能している。

多様化の進む現代社会では、さまざまな利害関係者をコントロールするのはほとんど不可能に近いことを前提に、いかに国際機関を効果的に機能させられるかが将来のテーマとなるだろう。

グローバル・ガバナンスの3つの事例

デモで掲げられたプラカード

Photo by Markus Spiske on Unsplash

ジェンダー平等推進

国際的なジェンダー平等の取り組みは、女性の地位向上への動きとして1970年代以降大きな成果を上げている。社会の女性の役割は、国連やその他の国際機関の活動に限られるものではなく、NGOの活動や、国際的な経済活動に関わるルールや規範も含めるべきという考え方に基づく。

国連の経済社会理事会の機能委員会にある女性の地位委員会を中心に、大規模な女性会議が各地で開催された。会議は国連主導で行われたものであったが、市民団体も多く出席している。

世界レベルで見ると、ジェンダー平等の達成度は不十分だが、女性の権利獲得に貢献している活動だ。

平和構築

国連で設立された平和構築委員会は、近年の国連の改革でもっとも成果の上がった活動の一つ。

それまでは、平和の維持に活用されていた手段は、軍や警察の介入、法の支配構築が中心だった。日本は長期に渡って内戦が続いていたシエラレオネで統合的なアプローチをとることを提案し、電力供給を優先分野に加えた。

諸外国からは、平和構築ではなく開発の話ではないかと反対があったが、現地の人にとっては生活がもっとも大事なことであると考え推進。

民間セクターや世界銀行、国際通貨基金との連携強化に努めたこの取り組みは成功し、各国が競ってシエラレオネの電力開発に協力している。

資源の開発

エクアドルのヤス二国立公園は、アマゾン熱帯雨林にある地球でもっとも多くの生物種が生息していると言われる。国立公園の地下には石油があり、石油掘削と森林保護のどちらを優先させるかは長年、議論の的となっていた。

そこで政府は、開発しない代わりに石油から得られるであろう収入の半分を基金として集め、現地の生態系の保全や原住民の生活保障に使うことを約束した。日本企業としてこの問題に行動したのは、無印良品を展開する良品計画。日本企業として初めて20万ドルを出資した。

ところが、基金集めは失敗。2013年、油田開発を再開する方針を発表した。計画が失敗したのは、先進国が保護を説きながら、行動しなかったからであり、とりわけ三大石油消費国の米国、中国、日本がプロジェクトを支援しなかったためと言われている。

現代社会で、さまざまな関係者の利害を完全に一致させることは不可能だ。しかしグローバル・ガバナンスは無意味ではない。

私たちは、放っておくとついつい目の前のことに追われてしまう。ヤスニ油田開発のように十分機能しないこともあるが、未来に目を向ける組織的な活動が求められている。

※ 参照サイト
21世紀の幕開けにおけるグローバルガバナンスの問題と展望
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsr1950/53/1/53_1_13/_pdf/-char/ja
世界と日本のデータを見る
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html
グローバル・ガバナンスにおけるジェンダー平等:発展途上国援助との関係から(P6)
https://core.ac.uk/download/pdf/71790121.pdf
グローバル・ガバナンスと人間の安全保障
https://www.jcie.org/japan/j/pdf/csc/takasu/takasu2010.pdf

※掲載している情報は、2021年3月15日時点のものです。

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