2月22日は猫の日ということで、アニマルウェルフェアの認知度を上げるべく、さまざまなバックストーリーを持つ猫と暮らす人たちにインタビューをすることに。猫株式会社 代表取締役の小林一樹さんは3匹の保護猫とどんな生活を送っているのだろう?
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捨てられてしまった、迷子になってしまった、保健所に持ち込まれてしまった……いま、さまざまな理由で多くの猫が保護されている。そんな状況を知っている人はペットショップではなく保護施設やアニマルシェルターへと足を運び、保護猫を家族として迎え入れている。なんらかの理由でお世話ができなくなった知人から、猫を譲り受けたり引き取ったりする人も多いだろう。
2月22日は猫の日ということで、アニマルウェルフェアの認知度を上げるべく、さまざまなバックストーリーを持つ猫と暮らす人たちにインタビューをすることに。家族として猫を迎え入れるには責任を全うする必要があるが、その先には楽しい生活や明るい未来が待っていることも紹介したい。
今回お話を聞いたのは、猫株式会社 代表取締役の小林一樹さん。保護猫との暮らしにハマるあまり、大学を自主退学した彼は、いったいどんな生活を送っているのだろう?
──保護猫のお名前は?
みかんくん、ぽるしぇちゃん、あーるくん、です。
最初の2匹は、保護した日の夜にこたつでみかんを食べながら車の雑誌を読んでいたので、その状況からなんとなく名前をつけました。最初は里親を探すために一時的に預かるつもりだったので、かなり適当に名前を決めましたが、イントネーションや母音が被らないように気をつけた記憶はあります。
──なぜ一時的に預かることに?
ある日、一緒に暮らしていた知人が2匹の子猫を連れて、一晩だけ預かることになったと言って帰宅してきました。3匹の猫を保護して里親を探したところ、1匹はすぐに見つかったものの、顔や柄の整っていなかったみかんくんとぽるしぇちゃんは残ってしまったそうなんです。
その半年後に、あーるくんが家に来ました。知人の勤め先の花壇に放置されていて、一晩だけと預かる予定で我が家に来たのです。
一晩だけが20年に……保護猫などとの出会いにはよくある話かもしれませんが、まさか自分の身に起こるとは思いもしませんでした。
──どのタイミングで3匹を家族として迎え入れたのでしょうか?
彼らを引き離すのはかわいそうだと思い、1匹ずつではなく、一緒に引き受けてくれる里親さんを探しましたが、なかなか見つからず……。何日も一緒に過ごしていくうちに徐々に猫の魅力、というか魔力に魅了されて、どんどんハマっていきました(笑)。
当時はペット不可のアパートに住んでいて、大家さんに見つかり、退去か猫を手放すかを迫られましたが、必ず部屋をもとに戻す約束をして、一緒に暮らし始めることになりました。
──それが覚悟を決めた瞬間だったんですね。
猫を迎え入れたことで私の人生は大きく変わりました。保護当時は授乳や排泄補助などで大学やバイトを休みがちとなり、休学なども経て、最終的には自主退学をすることに。仕事は猫に新鮮な魚を食べさせたいという思いで、小さな割烹料理屋に勤め始めました。
現在は猫に関する仕事をはじめているので、毎日、猫のために働いていますよ。
──なぜ猫株式会社を創業したのでしょうか?
きっかけは、猫たちの嘔吐の回数が多くなったことです。
病院に連れていったところ、腎臓と尿路に炎症を患っており、治療が必要になりました。原因は食事とライフスタイル……。
調べていくうちに募る不安。工場を視察した方がいいのか? 原料の生産過程や保管環境を知った方がいいのか? ペットよりも厳しい基準のある人間用でさえ、トラブルが起きることもあるのに、多くの人が詳しいことをわかっていません。それが食の安全を考えるきっかけになったのです。
私と暮らしている猫たちは幸い何も問題ありませんでしたが、よかれと思って購入したご飯が死亡理由になり得るなんて、そんな悲しいことはありません。
そして、原料を誰が育てているのか、誰が回収しているのか、誰が加工しているのか、すべての人の顔と名前が一致する「人間関係を担保とした品質保証」を実現することを目指し、猫株式会社を設立しました。
構想14年と開発2年の時を経て、2017年、私が自分の猫たちに本当に食べさせたいと思えるフードの開発に成功しました。
──仕事のなかで達成感を覚えるときを教えてください。
やはり私のつくったフードを食べて、猫が元気に暮らしている様子を見ると、とても嬉しい気持ちになります。
また、全国の購入者から喜びの声をいただけるのも嬉しいです。人生でここまで他者から感謝されることはなかったので、多くの家族のために貢献できていると考えるだけで、幸せな気持ちになりますよ。
──保護猫との暮らしで工夫していることはありますか?
「飼う」「従える」のではなく「同居する」という感覚を大事にして、猫としての本能やライフスタイルを尊重するようにしています。
家では猫にとって危険なモノや場所をなくして、すべての部屋や押し入れなど、猫たちが出入りできないところはありません。好きな場所に寝て、好きなときに遊んで、お腹がすいたら食べる──。そうすることで、お互いにストレスフリーな楽しい生活を送れると思います。
──最後に、多くの人に知ってほしいことがあれば教えてください。
一緒に暮らしている猫たちは、常に私たちを頼り、信じています。けっして人間を裏切りませんし、嘘もつきません。だからこそ、信頼にこたえられるような寛容な心で、安心して暮らせる環境を整えてほしいと考えています。
小林一樹/猫株式会社 代表取締役。1日でも長く大切な猫と一緒に過ごすために、安全なフードや生活用品を研究開発し、保護活動を行う、猫のための会社を設立。
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