2月22日は猫の日ということで、アニマルウェルフェアの認知度を上げるべく、さまざまなバックストーリーを持つ猫と暮らす人たちにインタビューをすることに。NPO法人 動物愛護・福祉協会 60家(ロワヤ)の木村遼さんは猫中心の生活を送っているというが、いったいどんな様子なのだろう?
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捨てられてしまった、迷子になってしまった、保健所に持ち込まれてしまった……いま、さまざまな理由で多くの猫が保護されている。そんな状況を知っている人はペットショップではなく保護施設やアニマルシェルターへと足を運び、保護猫を家族として迎え入れている。なんらかの理由でお世話ができなくなった知人から、猫を譲り受けたり引き取ったりする人も多いだろう。
2月22日は猫の日ということで、アニマルウェルフェアの認知度を上げるべく、さまざまなバックストーリーを持つ猫と暮らす人たちにインタビューをすることに。家族として猫を迎え入れるには責任を全うする必要があるが、その先には楽しい生活や明るい未来が待っていることも紹介したい。
今回お話を聞いたのは、特定非営利活動法人 動物愛護・福祉協会 60家(ロワヤ)の木村遼さん。保護猫が家族となってから猫中心の生活を送っているという彼の生活は、いったいどんな様子なのだろう?
──保護猫のお名前は?
はじめて一緒に暮らした猫は、現在7歳のロワです。フランス語で王様という意味で、“我が家の王様”になってほしく名付けました。
──いま、運営されていらっしゃる60家(ロワヤ)に通じる名前なんですね。
我が家にいる猫たちは、保護施設から譲渡してもらった保護猫ではなく、自分たちで保護した猫です。ロワは2013年10月に夫婦で車で外出をしているときに出会いました。交通量の多い道路で信号待ちをしていると、道路沿いの溝から薄茶色の子猫が頭を出しているのに気づいたのです。
すぐに近くで車を停められる場所を探し、停車させると、夫婦で子猫のもとへ走って向かいました。危ないから捕まえようと試みましたが、まだ生後1ヶ月程度の子猫は一丁前に「シャーッ」と威嚇をしてくるのです。2人とも猫と一緒に暮らしたことがなかったので怖がりながらも捕まえると、すぐに大人しくなり、意外とあっさり保護ができました。
おそらく親から離れたのだと思いますが……はじめは里親募集をしようとしましたが、あまりにもかわいくて家族に迎えることにしたのです。
──なるほど。
ただただロワがかわいくて、毎日、幸せに暮らしていました。しかし、ロワが生活していた環境で暮らしている猫たちのことを考えた瞬間に、ロワは偶然にも私たちと出会い家猫になったけど他の子たちは過酷な状況で暮らしていると思い、つらい気持ちになったのです。
こうしている間にも殺処分されている猫がいると知り、夜も眠れなくなりました。
──たしかに、すべての子たちが保護されるわけではありませんからね。
そして、自分でできることをしようと決め、夫婦で保護活動を始めることにしました。2018年に自宅とは別の場所に一軒家を借り、保護猫シェルターを構えたのです。長くなりましたが、それが60家のはじまりです。
「60」は「ロワ」に由来があり、「0」には輪をイメージして手を取り合う大切さを込めています。ロワは家族。猫はみんな家族なんだという思いから、「60」に「家」を組み合わせ、「60家」という名前にしました。
──保護してから起きる猫の変化について教えてください。
ロワではなく一般的な話をすると……保護した猫の多くが猫風邪を引いています。涙や鼻水が出て、ひどい子は結膜炎になっているのです。病院で処置をしてもらい、たいていは綺麗な顔になります。なかには結膜炎や鼻づまりが残る子がいるのも現状です。
我が家に4番目に迎え入れたシンバは、涙目が残っています。外の環境は、夏は暑く冬は寒く、とても過酷です。家猫になったことでしっかりとご飯を食べられ、ふっくらとした体型になりました。毛艶もよくなり、保護当時と比べると健康的ですね。
これは保護した猫の多くに言えるかもしれません。
──60家の活動を通して、いつ達成感を覚えますか?
保護の経緯はさまざまです。負傷猫や乳飲子、多頭飼育崩壊などの経緯で保護します。ほとんどの子が最初は体調が悪く、病院で治療をしてもらい、場合によってはつきっきりで看病をすることも。なかには残念ながら助からない子がいるのも事実です。
そんな過酷な状況から元気を取り戻し、家庭に迎え入れてもらい幸せに暮らしているのを知ると、一番幸せに感じますね。
──保護猫を家族に迎え入れる以外に、個人で保護活動に貢献できることはあるのでしょうか?
家族に迎え入れられない方もいますし、もちろん、迎え入れるにも頭数には限界があります。しかし、私たちのような保護活動をしている方々はボランティアを募集しています。シェルターのお掃除ボランティアや譲渡会のお手伝いなど、内容はさまざまです。
しかし、現場で何かをするだけがボランティアではありません。SNSを使い保護猫の譲渡会情報などを拡散したり、チラシを配ったり、隙間時間でもできるアクションはあります。
ひとりでも多くの方に知ってもらうことにつなげてくださるのであれば、それは大切で重要なボランティアだと考えています。
──ロワを迎え入れてから木村さんに起きた変化はありますか?
これまで2人とも猫と暮らした経験がありませんでした。妻は実家で犬を飼っており、私は実家で犬猫などと家族になったことはなかったのです。
ロワを保護したときは新婚でお互いに若く、小さくてまるで天使のようなロワが自分たちの子どものようにかわいく、完全に猫派になりました。もともと犬派だった妻も、です。
毎日、夫婦で猫の話ばかりをして、猫中心の生活を送るようになりました。ロワを保護したことで他の猫たちも気になりだし、弱っている子たちを保護していると……2年後には猫が11匹も家にいました(笑)。
いわゆるサラリーマンだった私と、いわゆる専業主婦だった妻は、猫の生活費を稼ぐために一緒にチラシ配りのアルバイトをはじめました。妻は仕事にも就きましたね。
ロワと出会ってから、本当に猫が一番の生活を送るようになりました。
──保護猫たちと生活をするうえで、工夫をしていることがあれば教えてください。
猫たちが快適に暮らせるように、猫ファーストの生活を意識しています。トイレや寝床などは彼らが生活をしやすいように配置しますね。ほかにも、猫が高い位置に行きたいんだろうなと思ったら、壁にステップをつくることも。脱走対策もしていますよ。
また、食べ物はもっとも重要だと考えているので、いつも勉強をしながらサプリメントを混ぜたりしながら、最適なフードをあげています。
──最後に、多くの人に知ってほしいことはありますか?
たくさんありますが……まずは保護猫と保護犬の存在を知ってもらうことです。ペットショップでお金を出して買うのではなく、保護猫と保護犬を家族に迎え入れて飼うという選択肢があることも。興味があるなら、殺処分やペット産業についても調べてみてください。
そして、家族に猫や犬を迎え入れるときに、ひとつの選択肢として、保護猫と保護犬を引き取ることが当たり前になってほしいですね。まだまだ存在を知らない方もいらっしゃるので、認知度を高める行為もしていきたいと考えています。
木村遼/特定非営利活動法人 動物愛護・福祉協会60家 代表。兵庫県宝塚市の「にゃんこの里60家」という一軒家の猫シェルター(保護施設)を拠点に、「殺処分になる猫」たちの“命の瀬戸際”に手を伸ばし続け、2018年のシェルター創設時より夫婦で約100匹以上の猫たちを救う。
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