在庫を持たない「受注生産」とは 多様な生産方法におけるメリットとデメリット

工場で働く男性

受注生産とは、顧客から注文を受けてから製造を開始する生産形態のこと。主に大量生産をおこなう見込み生産とは反対に、在庫を持たないため売れ残りのリスクがないが、販売効率が悪くなる可能性も。本記事では、さまざまな生産方法におけるメリット・デメリットを紹介する。

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2021.03.03
SOCIETY
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エシカルマーケティングとは? メリットや実例をわかりやすく紹介

生産管理の重要性

工場で働く2人の男性

Photo by Science in HD on Unsplash

生産管理とは、製品における需要や、原材料や人件費などの製造にかかるコストを正確に把握し、販売・生産計画を立てることで、効率的な製造工程を実現させること。製造業における利益向上のためには、適切な生産管理をおこなうことが非常に重要となる。

受注生産とは

受注生産とは、在庫を持たずに、顧客から注文を受けてから製品の製造に取りかかる生産形態のこと。英語では「BTO(Buit to Order)」と表記する。

一般的には多種少量生産が多く、一つずつ生産していく個別生産が主流だが、多くても数個までという小ロットの生産方式もある。また、世界に一つだけの製品をつくる「オーダーメイド」も、受注生産を採用した手法だ。

受注生産のメリット

受注生産では在庫を抱える必要がないため、在庫の保管・管理にかかる費用や売れ残りのリスクがなく、生産した分だけ売上につなげることができる。無駄な生産や廃棄がなければ資源が保全され、環境への負担も少ない。

また、顧客の要望に合わせて手を加えることができることも受注生産の特徴だ。一つ一つの生産に丁寧に対応することで、製品のクオリティや顧客の満足度の向上につながる。

受注生産のデメリット

受注生産では、受注してから生産準備に入るため、生産開始から納品するまでの時間(リードタイム)が長くなってしまう。そのため、市場からの需要があるときにすぐに販売できず、売りのタイミングを逃してしまうリスクがあるほか、顧客側の希望納期が短いと間に合わないこともあり、顧客の満足度が低下する可能性がある。

また、生産過程においては、顧客からさまざまな要望を受けることが予想され、原材料の変更などがあれば追加のコストがかかってしまう場合もある。

受注生産に向いている業態

受注生産は、生産量が少ない製品や、製造原価が高いため在庫を持つことが難しい製品、多様なカスタマイズが必要とされる製品に向いている生産形態だ。

例えば船舶や注文住宅は、基本的に受注生産方式でしか作れない。また、家具や寝具など、オーダーメイドに対応している製品業界、工作機械メーカーや金型メーカーなどでも受注生産方式が採用されている。

受注生産の対義語「見込み生産」

見込み生産とは

受注生産が在庫を持たないのに対して、見込み生産ではある程度の需要を予測して、あらかじめ一定量の生産をおこなう。英語では「MTS(Make to Stock)」と表記する。

見込み生産では、汎用性がある製品を大量生産する場合が多い。製品ごとに一定の数量をまとめて製造するロット生産方式や、同じ仕様の製品を受注の度に製造する連続生産(繰返生産)方式に主に用いられる。

見込み生産のメリット

見込み生産では、受注前に生産を始めるためリードタイムが短くなる。受注してすぐに在庫を出荷することができれば、顧客満足度の向上につながる。また、大量生産しても受注の見通しがつく商品は生産計画通り進みやすく、売れ残りがなければコストの削減にもなる。

見込み生産のデメリット

見込み生産では、販売計画によっては欠品が続いて売れる機会を失ったり、売れ残り(余剰在庫)が発生して在庫管理にコストがかかるといったトラブルにつながる可能性も。また、大量生産によって多くの廃棄が出れば、資源を無駄にし環境破壊にもつながるだろう。

さらに、汎用性のある商品に向いている見込み生産は競合が多く、受注を勝ち取るために無理な納期設定してしまいがちだ。無理な納期設定は現場に負荷をかけるため、作業の精度や商品の品質が落ちる可能性がある。

見込み生産に向いている業態

見込み生産は、ある程度需要が見込める汎用性の高い商品や、製造原価が安く大量生産が可能な商品、顧客との納期調整が難しい商品に主に用いられる。例えば、大量生産される衣料品や加工食品、家電品、建売住宅など、市場に大量に出回っている商品の多くは見込み生産が採用されている。

生産方式の種類

製造工場の様子

Photo by Science in HD on Unsplash

受注生産や見込み生産は、製品の生産量や品種などによって、「個別生産」、「ロット生産」、「連続生産」の3つの生産方式に分類できる。一般的には、個別生産では少量生産、ロット生産と連続生産では大量生産がおこなわれる。

個別生産(受注設計生産/個別設計生産)

個別生産とは、個々の注文に応じて一から設計・開発をおこない製造する手法のこと。特別仕様のオーダーメイドに対応できる一方、生産過程での仕様変更が考えられるためコストや納期の見積もりなど、生産管理が難しいのが特徴。

一度に多くの生産はできないが多様な要望に対応できるため、多種少量生産に適しており、受注生産に多くみられる。主に機械設備や金型、試作品、重工業などのメーカーで採用される。

連続生産(繰返生産/ライン生産)

連続生産とは、同一のプロセスで受注の度に繰り返し製造する手法のこと。定番品などのすでに設計した製品を繰り返し生産するため、作業効率がよく生産性が高いことが特徴。

少種多量生産(大量生産)に適しており、ある程度充分な需要量を確保できる見込み生産に多くみられる。自動車や家電、金属、鉄鋼、食料品、医薬品などの業界で広く採用されている。

ロット生産

ロット生産とは、製品ごとに生産量単位(ロット)を決めることで、複数の製品を交互に生産する手法のこと。一定の数量をまとめて生産することで、作業や売上げの効率化を図ることができるが、ロットサイズを大きくするほど余剰在庫が出る可能性もあるため注意が必要となる。

ロット生産は、さまざまな品種や生産量に対応が可能なため、個別生産と連続生産の中間的な生産方式と言え、受注生産と見込み生産の両方で用いられる。食品、家電製品、さまざまな電子機器の部品など、比較的多くの製造業で採用されている。

高品質・高単価な製品に適した受注生産

生産形態には、受注生産と見込み生産の2種類がある。受注生産は、顧客の要望に一つひとつ丁寧に応えられるため、高品質な製品づくりを目指せる一方、リードタイムが長くなる分、高単価である必要がある。反対に、ある程度の需要が把握できる低単価な製品で、スピーディーな納品が求められる製品であれば見込み生産が適している。

製造業における収益を効率よく上げるためには、製造にかかるコストやリスク、生産量を考慮しながら適切な生産方法を選択することが大切だ。

※掲載している情報は、2021年3月3日時点のものです。

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