「農場から食卓まで(Farm to Fork)」とは、欧州グリーンディールの核となる食料生産についての戦略である。EUは2050年までに気候中立を達成すべく、すでにオーガニック食品の生産や、食品ロスの削減努力をしたりして、持続可能な食料供給に向けて歩み始めている。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
わたしたちの買い物が未来をつくる|NOMAが「ソラルナオイル」を選ぶワケ
Photo by Markus Winkler on Unsplash
「農場から食卓まで(Farm to Fork/ファーム・トゥ・フォーク)」とは、サステナブルかつ公平な食料システムの構築を目指すもので、2020年5月20日に欧州委員会によりEU各国に向けて発表された。
これは、2050年までに気候中立を目指す欧州グリーンディールの中核となる戦略であり、地球・社会・人の健康を保つために、農業や食のあり方を改善していこうといった内容となっている。
1. 持続可能な食料生産
2. 持続可能な食品加工と食品流通
3. 食品ロス発生抑止
慣行農業は農薬に頼りがちだ。使ったほうが楽に農場を運営できるが、⼟に染み込んだ農薬は水脈を伝って地域の水を汚染するばかりか、海や⼤気汚染の原因にもなり得る。
そうなると生物多様性に大きな影響が出ることから、EUでは2030年までに化学的で高リスクな合成農薬の使⽤量を慣行の半分に削減するとしている。それに伴い、すべての農地の四分の一以上をオーガニック農場にチェンジする予定だ。
また食品包装はエコな素材に切り替え、使い捨て容器は使わないようにしていく。そして、1⼈当たりの⾷品ロスの量を50パーセント以下にすることを⽬指している。
Photo by JESHOOTS.COM on Unsplash
Farm to Forkは、最初こそ初期投資が必要ではあるが、長い目でみれば多くのメリットがある。まずオーガニックの畑を欧州全体で増やすことにより、新たな雇用が望める。それに、殺虫剤や化学肥料の使用量を減らせば、地域の生態系を守ることが可能だ。
また食品ロスや廃棄を徹底して管理することにより、将来起こり得る飢餓問題の解決にもつながるはずだ。世界の人口はこれからますます増えていくことが予想されている。
しかし、むやみやたらに森林を伐採して農地を拡大するわけにはいかない。持続可能な食料生産システムを確立するためには、Farm to Fork戦略は大いに役立つと言えるだろう。
欧州では目標の実現に向け、多種多様な取り組みが開始されている。例えば、植物性タンパク質を使った代用肉の商品開発がその好例だ。
欧州グリーンディールの予算には、ベジタリアン食品開発への投資費用も含まれており、肉を一切含まないハンバーグやソーセージなどがすでに多数開発されている。
プラントベースド食品の消費が増えれば、家畜起因で出るメタンガスなどの温室効果ガスの削減が期待できる。また、肥満に悩む人たちの健康改善にも大いに役立つ。
肉の消費が減れば、必然的に家畜の飼料を栽培するために使っていた畑を、人間の食料用に転用することが可能となる。そうすれば、新たに森林を伐採せずとも農地を確保できるようになるのだ。
Photo by Markus Spiske on Unsplash
この取り組みはすでに世界に広がっている。日本では欧州グリーンディールの戦略が発表される前の2015年から、神戸の一般社団法人KOBE FARMERS MARKETが、ローカルのおいしい食べものを通じて「農」について学べるイベントを毎年開催している。
小さい子ども連れでも気軽に参加できる屋外型のイベントなので、食育にもなると人気だ。安心して食べられる材料を使用している屋台も出しているため、毎回多くの人たちで賑わっている。
このような取り組みを通じて、世界のみんなが自分が毎日食べるものに興味を持てば、環境問題や社会問題の解決にも光が差していくことだろう。
EUは世界に先立ち、持続可能な食料生産に向けて動き出している。かくいう日本では、オーガニック食品やフリーレンジの肉などは、まだまだ普及していないうえ、食品廃棄率はアジアトップレベル。
しかし、逆を言えばこれをビジネスチャンスとして捉えることもできる。諸外国の先例を見習い、日本でも是非この戦略を真似していきたい。
※参照ページ
EUの「Farm to Fork(農場から⾷卓まで)」戦略について
https://www.alic.go.jp/content/001184979.pdf
ELEMINIST Recommends