友人がInstagramにポストした旅の写真や、Netflixで観た映画の舞台。さまざまな体験からインスパイアされて、次の旅先への妄想を膨らませている人も少なくないはず。今回はステイホーム中のあなたに、世界中の個性的なサステナブルなホテルを5つ紹介したい。ボンボヤージュ!
Mai Shiratori
トレンドリサーチャー
埼玉県出身。2014年から2019年までアメリカのニューヨークに居住し、トレンドリサーチャーとして衣食住のトレンドをリサーチする。さらに、ニューヨークでヨガ学んだことをきっかけに、ウェル…
知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート
スペインのイビザと聞くと派手なパーティーを想像するだろう。そんなイメージを覆してくれるのが、ラ・グランハ・イビザ(LA GRANJA IBIZA)だ。
フレンズ・オブ・ア・ファーマー(Friends of a Farmer)というイビサ島の持続可能性を高めるために活動する団体と共同運営のホテルである。サステナブルだけでなく、ウェルネスに興味のある方にもおすすめしたい。
2016年にオープンしたこのホテルは、イビザタウンから車で15分ほど離れた静かな場所にある。同ホテルのファームのオーナーであるアンディ・シーマノヴィッチ(Andy Szymanowicz)氏が古い農地を再生。ドイツのデザイン事務所のドライメタ(Dreimeta)が建築を手がけた。
宿泊施設は5つと限られているが、かつての石造り住宅の素材をそのまま生かし、ミニマルで洗練されたデザインが美しい。
ホテル内のファームには、10ヘクタール(100,000平方メートル)の農場と、20エーカー(80,937平方メートル)の柑橘類の農園がある。
そこでは、30種類以上の作物がバイオダイナミック農法(※)で育てられている。そして、宿泊者に提供される食事のほとんどが、ファームで採れた食材を使用しており、大地の恵みを大自然のなかで堪能できる。
持続可能な未来を創造することを目的に、コミュニティーづくりにも積極的に取り組んでいる。アンディ氏によるスローフードやサステナブルに関するワークショップの実施、ウェルネスに関するメディテーションのクラスも開催。同じ志を持つ人々を結びつけるためのコミュニティーのハブとなっている。
※バイオダイナミック農法とは、ドイツの教育者、ルドルフ・シュタイナー氏(Rudolf Steiner)によって提唱された有機農法・自然農法の一種。
スイスのジュネーヴ・コアントラン国際空港から車で1時間半。標高1,400mに位置するのがホワイトポッド・エコラグジュアリー・ホテル(Whitepod Eco-luxury Hotel)だ。夏は緑に囲まれ、冬は雪に覆われ、季節の移り変わりを楽しめるホテルである。
宿泊施設は、解体可能なドーム型のポッド。敷地内に18個あり、それぞれ薪ストーブ、オーガニックの寝具、バスルーム、テラスを完備している。
どのポッドからも雄大なスイスアルプスの山々を眺められる。解体後は、ホテルの痕跡を残すことはない。自然を壊すことなく元に戻すことができる、名前の通りエコラグジュアリーなホテルといえる。
自然と調和する宿泊体験は、施設に到着した瞬間からはじまる。施設内は移動手段が限られているため、レセプションからポッドまで大自然のなかを歩く必要があるのだ。
宿泊施設内の暖房システムは、暖炉と木質ペレットのみを使用。夜間照明の制限や節水装置を設置するなど、「限られた資源の価値」を体感できる。
犬ぞりやハイキング、地元の食材を使ったレストランでの食事など、自然と共存しながら楽しめるアクティビティも充実している。
さらにスイスの森で伐採した木材を使って、地元の職人によって建てられたエコフレンドリーのシャレーが、2020年6月から新たに誕生する。各シャレーには3つのベッドルームがあり、ファミリーでの宿泊にも最適だ。
Les Giettes, Des Cerniers, 1871 Monthey,
Switzerland
ロンドン随一の歌劇場「ロイヤル・オペラ・ハウス」やショップが立ち並ぶコヴェント・ガーデン。ワン オルドウィッチ(One Aldwych)は、そんな市内中心部に構える5つ星ホテルだ。
同ホテルは、歴史的建造物にも指定されているエドワード様式の建物を改装し、1998年にオープン。2019年春には、86室の客室と16室のスイートの全客室デザインを一新し、再オープンしている。
同ホテルが提供してくれるのは、5つ星ホテルならではの最高級のサービスだけではない。環境問題への取り組みにも積極的で、なかでも二酸化炭素総排出量削減に注力している。紙、段ボール、ガラス、プラスチック、食用油、電球、電池などをすべてリサイクルする総合的なリサイクルスキームを構築。
さらにEVAC社の排水システムを利用し、従来よりも70%少ない水で効率的な排水を行う。トイレは一回の洗浄で約1リットルの水しか必要としないのだ。
また客室のアメニティは、生物分解性のあるパッケージを採用し、バスルームのアメニティはミッチェル&ピーチ(Mitchell & Peach)社のナチュラル化粧品を使用している。
ホテルのレストランで使用する食材はフェアトレードや有機栽培の食材を中心に、可能な限り地元の旬な食材を使用。
ホテルの取り組みが評価され、サステイナブル・トラベル・インターナショナルのラグジュアリー・エコ認証基準など、数々の称号を獲得している。
1 Aldwych, London WC2B 4BZ
2011年、北海道広尾郡大樹町芽武に環境に配慮した寒冷地実験住宅施設「メムメドウズ」が誕生した。ここはかつて、サラブレッドの生産牧場「大樹ファーム」のトレーニングセンターだった場所だ。
約5万6,000坪の面積を誇る敷地には、隈研吾氏や伊東豊雄氏といった建築家によって手がけられた建築物や、「国際大学建築コンペ」受賞作品が立ち並ぶ。それらの建築物で宿泊体験ができる施設として、2018年11月にメムアースホテル(MEMU EARTH HOTEL)は誕生した。
ホテルのコンセプトは、「地球に泊まり、風土から学ぶ」。地域資源と人との共生について考え、体験とデータ化を通じて世の中に発信していくプロジェクト型のホテルである。リゾートホテルのような贅を尽くしたサービスではなく、“持続可能なくらし”の体験を提供してくれる。
宿泊施設は現在5棟あり、それぞれが違ったテーマやサステナブルな取り組み、そして美しいデザインを持つ。このMêmeという名の宿泊施設は、隈研吾建築都市設計事務所によって設計され北海道古来の住宅をモチーフにした実験住宅だ。(技術支援:東京大学生産技術研究所 野城研究室)
冬場は地熱を利用した蓄熱式床暖房や、膜の間に熱を循環させる仕組みによる断熱性能の向上、炉と煙突からの輻射熱で室内を効果的に暖めるといった先進の機能も備えている。また室内には、CO2排出に伴う熱負荷などの温熱環境の変化や、地震発生時のデータを自動計測するセンサーを数箇所設置。長期的なデータ収集と蓄積が可能な研究棟としての役割も担っている。
夜明けとともに天窓から差し込む朝日で目を覚まし、部屋を一歩出た瞬間から動物の鳴き声が聞こえ、緑の香りを感じる。そしてホテル内のレストランでは、地域の食材を活用した、ここでしか味わえない食の体験も可能だ。
都市での暮らしでは味わえない自然本来の美しさを五感で感じ、美しい建築に触れるという学びのある体験。私たちに“未来の暮らしを考えるきっかけ”を与えてくれるだろう。
北海道広尾郡大樹町芽武158-1
2013年にオープンした、パークロイヤル・オン・ピッカリング・シンガポール(PARKROYAL COLLECTION Pickering, Singapore)。シンガポールを拠点とし、環境に配慮したデザインを得意とする建築事務所WOHAによって設計された、アーバンリゾートホテルである。
ホテルのシンボルは、約50種類の植物で覆われた15,000平方メートルの高層庭園だ。エネルギー消費に代わり、広大な緑が根から水を吸収。葉から発散させ、植物によって周囲の温度を下げる。自然の力を使った、熱帯都市ならではの環境に配慮したデザインである。
さらに、客室へつながる廊下に設置された、緑と苔玉でつくられたグリーンの壁。ロビーからレストランまでの通路に小川のように流れる水など、室内にいながら自然を感じられるデザインも見ものだ。
合計367室ある客室は、グリーンとアースカラーでまとめられ、自然のぬくもりを感じながら心地いい時間を過ごせる。「ウェルネスフロアー」と名づけられたフロアでは、プール、ジャグジー、ジム、スパサービスを利用でき、都会の喧騒のなかでリラックスできるオアシスとなっている。
ホテル設備としてソーラーパネルを設置し、自家発電にも取り組む。さらに雨水を活用したり環境にやさしい再生プラスチックでつくられたボイドフォーマーを配置。コンクリートの使用を減らしたり、省エネ機能を取り入れている。
環境に配慮したデザインと取り組みが認められ、ワールド・トラベル・アワード2019で「ワールド・リーディング・グリーン・シティ・ホテル」の称号を獲得。またシンガポール主宰の建物へのエコマーク制度「グリーンマーク」では、最高点「プラチナ賞」を受賞している。シンガポールを代表するサステナブルなホテルである。
3 Upper Pickering Street, Singapore 058289
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