地球にやさしい「スマートガラス」の需要高まる 環境配慮と快適さを実現する仕組みとは

太陽光を浴びるビル外壁のガラス

ガラスは断熱性が低い素材というのが一般的な認識なのではないだろうか。ところが、近年環境へのやさしさも快適さも追求できるスマートガラスに注目が集まっている。スマートガラスの仕組みや特徴、将来性などを解説する。

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2021.01.31
SOCIETY
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スマートガラスとは

ビル外壁のガラス

Photo by Louis Charron on Unsplash

スマートガラスとは、アメリカの建材スタートアップ「View」が2012年に開発したIoT窓ガラス。基礎技術はローレンス・バークレー国立研究所で生まれた。2018年には、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが1,200億円の出資を発表している。

スマートガラスのコストは通常の窓ガラスの約4倍かかる。その一方で、消費エネルギーを約20%削減できると言われている。

スマートガラスの仕組み

複数のガラスを積層させたスマートガラスは、調光・遮熱などの機能を持つ。主な用途は外壁の窓、天窓、室内パーティションなどと多岐にわたる。それぞれの窓にマイクロチップが埋め込まれており、ガラスの置かれている環境情報をクラウド上で一括管理できる。

インターネットに接続することで、スマートフォンやタブレットなどの端末から性能を操作できることが特徴だ。太陽光を調節できるガラスは半世紀以上前から考えられてきたが、実用化に近づいたのが「View」だ。

製造法と技術

現在、スマートガラスを製造するメーカーは複数ある。日本ではAGC(旭硝子株式会社)が有名だ。同社がつくるスマートガラス「WONDERLITE」は2枚のガラスからできている合わせガラス。

ガラスとガラスの間には、目に見えないほどの小さな物質が詰まっている特殊なフィルムが挟まれている。2018年に米キネストラルはAlexa対応のスマート調光ガラスの向上を台湾に完成させた。適切な立地と技術のある工場の選定に2年かかったと報じられている(※1)。

スマートガラスを活用した具体例

車のフロントガラス

Photo by Robert Bye on Unsplash

自動車のフロントガラス

透明モードで開放感が得られ、調光モードではプライバシー性を確保しながら日差しを遮ることができるスマートガラス。サンルーフ、フロントガラス、レビューミラー、窓などさまざまな用途で使用されてはじめている。

現在、複数の自動車メーカーがスマートガラス導入に関与しているが、個人の可処分所得の増加や高級車の需要の増加などが顕著なアジアにおけるスマートガラス市場の拡大が見込まれているという(※2)。

新幹線のガラス

AGCのスマートガラスは、薄くて強い化学強化ガラスと組み合わせて新幹線のガラスにも搭載されている。

北陸新幹線では、客室車両の窓ガラス以外にも、運転席や車内で使用されているインテリアガラス、先頭車両のライトのカバーガラスなどすべての車両のガラスにスマートガラスが採用されている(※3)。

スマートガラス市場の将来

一説によると、スマートガラスの市場は北米の商業ビルだけで約7兆円規模。時代とともに外壁に使われるガラスの割合は増えている。

近年は太陽光を室内に取り入れる重要性も高まっている。スマートガラスはボーイング787にも使われているように、ビルの窓ガラスだけでなく航空機や自動車など裾野は幅広い。

※1 AGCの調光ガラス WONDERLITE® Dxがトヨタ自動車株式会社 新型ハリアーに世界初採用|AGC
https://www.agc.com/news/detail/1200903_2148.html
※2 世界の自動車用スマートガラス市場
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000507.000059861.html
※3 どこにAGCのガラスが使わているの?|AGC
https://www.agc.com/hakken/norimono/019_hokuriku.html

※掲載している情報は、2021年1月31日時点のものです。

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