卵を産み終えた鶏「廃鶏」のその後とは 市場価値や肉用鶏との違い

養鶏場の鶏

「廃鶏」とは、1年〜2年の排卵期間を終えて鶏舎から出される雌鶏のこと。廃鶏は肉用鶏と比べて肉質が固いため、加工肉や冷凍肉、レトルト食品として利用されることが多い。廃鶏の市場価値はとても低く、屠殺時の状況が問題視されている。

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2021.01.31

廃鶏とは

鶏かごの中のにわとり

Photo by Nighthawk Shoots on Unsplash

廃鶏とは、採卵期間を終えて鶏舎から出される雌鶏のこと。親鶏や成鶏と表記されることもある。食肉用のブロイラーや地鶏は採肉が目的であるため、廃鶏とは呼ばない。

廃鶏肉は肉用鶏に比べると肉質が固いため、主にミンチにされて加工肉や冷凍肉、レトルト食品として利用されることが多く、肉用鶏のような値段がつくことはない。

採卵鶏は毎年1憶4千万羽前後が飼育されており、全国で発生する廃鶏の数は計り知れない(※1)。

採卵用鶏が廃鶏になるまで

採卵用鶏は、生後約5ヶ月から産卵を始め、1年~2年の排卵期間を終えて廃鶏となる。廃鶏になっても、産卵も可能で健康だが、歳をとるにつれて殻に異常のある卵が増え、卵の商品価値や生産性が低下する。

こういった理由から、飼育コスト削減のために廃鶏は屠殺されることが多い。

引き取りと処分方法の現状

廃鶏となった鶏は、採卵養鶏農家から廃鶏処理業者に引き取られる。この際、1羽あたり数十円の処理費用がかかるが、廃鶏の市場価値はとても低いため、鶏自身の値段より処理費用の方が高額になるという(※2)。

肉用鶏の場合は、飼育から屠畜までが一貫して管理されている。一方、経済的価値の低い廃鶏の場合、廃鶏処理施設が不足しており、廃鶏を搬入した後の処理場での長時間放置が問題となっている。

鶏たちが詰め込まれた出荷カゴは、何段にも積み重ねられ、輸送中に骨折や打ち身になって苦しむ、または死亡してしまう鶏もいる。糞尿や割れた卵とともに、水や餌が与えられることなく長時間放置される状況は、アニマルウェルフェア(動物福祉)に反しており、迅速に解決すべき問題だ。

肉用鶏との違い・利用方法

日本国内の店で販売されている鶏肉は、一般的には食肉用に飼育されたブロイラーや地鶏である。一方、1年以上採卵を続けた廃鶏の肉は、肉の旨みは強いものの、肉用鶏に比べると肉質が固くなる。

そのため、肉だんごやハンバーグ、ハムなどの加工肉、レトルト食品やラーメン、スープなどの原料に利用されることが多い。また、最近ではペットフードとしても利用されることもあるという。

一般への流通・入手方法

餌をついばむ鶏

Photo by chatnarin pramnapan on Unsplash

現在、廃鶏肉は小売としての流通が少なく、一般消費者が鮮肉を手にする機会は少ない。養鶏農家や食肉加工業者から直接購入する方法もあるが、すでに冷凍加工されたものが多い。

また卸売では多くの場合、廃鶏ではなく親鶏や成鶏と表記しており、若鶏よりも安価なものが大半だ。

近年では、食品企業において廃鶏肉の活用を促すため、廃鶏肉を使用したレシピ本が発売されるなど、廃鶏肉の価値向上とともに流通拡大を目指した取り組みもおこなわれている。

※1 鶏卵|独立行政法人全国農畜産業振興機構
https://www.alic.go.jp/content/000128031.pdf
※2 採卵廃鶏をペットフードに|東京農業大学
http://www.nodai.ac.jp/journal/research/tada/0807.html

※掲載している情報は、2021年1月31日時点のものです。

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