海の二酸化炭素吸収量「ブルーカーボン」とは? グリーンカーボンとの違いや吸収の仕組み

太陽光が差す海中の藻場

地球温暖化を緩和する効果があるとして最近よく耳にする「ブルーカーボン」。私たち人間が排出した二酸化炭素の約30%も吸収してくれている。ブルーカーボンの仕組みやグリーンカーボンとの違い、その効果に触れながらわかりやすく解説する。

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2021.01.31
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ブルーカーボンとは

ブルーカーボン生態系である藻場

「ブルーカーボン」とは、海藻などの海洋生物によって吸収された炭素(カーボン=炭素)のことを指す。

ブルーカーボンは、人類の活動などによって排出される二酸化炭素の約30%を吸収しているとされており、地球環境にとってなくてはならない存在だ。

一方、森林の二酸化炭素(CO2)吸収量「グリーンカーボン」は、生物によって排出された二酸化炭素の約12%を吸収しているとされている(ブルーカーボンで約30%、グリーンカーボンで約12%、残りの約57%は大気中に放出されている)(※1)。

森林により吸収された二酸化炭素のことを指す「グリーンカーボン」と区別するため、2009年に国連環境計画(UNEP)により命名されている(※2)。

ブルーカーボンの仕組みと効果

排出された二酸化炭素のうち約30%も吸収してくれるという高いポテンシャルを秘めたブルーカーボンは、海藻や植物プランクトンの光合成によって吸収される仕組みになっている。

このような炭素を吸収してくれる作用をもった生態系はブルーカーボン生態系と呼ばれており、マングローブ林、塩性湿地、藻場、サンゴ礁の4つに分類される。とりわけ熱帯および亜熱帯地域の河口付近にて発達するマングローブ林では、単位面積あたりの二酸化炭素の吸収速度が速いとされている。

ちなみに日本国内に目を向けるともっとも二酸化炭素を吸収しているのは藻場だという(※3)。いずれにせよ、ブルーカーボン生態系が地球温暖化緩和の効果を担っていることに変わりはない。

なぜいまブルーカーボンが注目されるのか

海底に転がる無数の石

Photo by Yannis Papanastasopoulos on Unsplash

二酸化炭素の吸収についての研究は、いままではグリーンカーボンに関連するものがほとんだったことから、ブルーカーボンの研究は遅れていたが、ブルーカーボン生態系が果たす役割は大きいことから、近年ではブルーカーボンに関連する科学的知見も増加してきている。一方で、ブルーカーボン生態系への多大なる負担が問題視されている。

ブルーカーボン生態系によって吸収される炭素全体の約73~79%は、前述した4つの浅瀬に集中しているのにも関わらず、面積としては海洋全体の1%にも満たしていないという(※4)。

ブルーカーボン生態系の頑張りだけで二酸化炭素を吸収することは、海洋酸性化(二酸化炭素が海に溶け込み、海の酸性化が進むこと)の原因とされ、海洋生態系への影響が予測されている。

海水が酸性化、海中の炭酸イオンが減ってしまえば、酸素を必要とする海洋生物はもちろんのこと、炭酸カルシウムでできたサンゴも生きていくのが難しくなるため、地球環境にとっては負のスパイラルに陥ることになる。

ブルーカーボン活用の動き・課題

港湾空港技術研究所、沿岸環境研究チームらが日本沿岸の海藻場が大気中の二酸化炭素の吸収源であることを世界で初めて発見してから、日本でもブルーカーボンを活用するため、NETsと呼ばれるネガティブエミッション技術の研究が進んでいる。

ネガティブエミッション技術とは、大気中の二酸化炭素を除去する技術のことであり、ブルーカーボン生態系の再生技術も含まれている。

ネガティブエミッション技術関連の研究には、ブルーカーボンのポテンシャルに注目したさまざまな企業が参入しており、たとえば日本製鉄株式会社は、製鉄プロセスの副産物である鉄鋼スラグを活用した浅場・干潟・藻場などを造成し、沿岸海域の環境改善を図る研究を進めている(※5)。

ブルーカーボンを温暖化緩和策として定着させるためには、国だけでなく、民間の持続的な活動が不可欠だが、ブルーカーボンは地球温暖化防止のクレジットとして認められてない。持続可能な活動のためには、クレジット化をいち早く推し進め、クレジットへの資金付与制度などを設ける必要がある。

脅威にさらされているブルーカーボン生態系だが、生態系の保全や再生といった取り組みは、地球温暖化緩和の打開策に効果的なのは事実であり、官民ともに協力してブルーカーボンの活用保全に取り組む必要がある。

※1 ブルーカーボンとリソース|日本マリンエンジニアリング学会誌 第52巻 第 6 号(2017)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jime/52/6/52_695/_pdf
※2 ブルーカーボンについて|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001170126.pdf
※3 藻場・干潟の二酸化炭素九州・固定の仕組み|水産庁
https://www.jfa.maff.go.jp/j/koho/pr/pamph/pdf/21-25mobahigatahyouka.pdf
※4 ブルーカーボンとは|国際環境経済研究所
http://ieei.or.jp/2019/05/special201608027/
※5 鉄鋼スラグを活用したブルーカーボンによるCO2固定化|Challenge Zero
https://www.challenge-zero.jp/jp/casestudy/210

※掲載している情報は、2021年1月31日時点のものです。

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