環境修復技術のひとつ「ファイトレメディエーション」 植物の力を活かした土壌浄化の仕組みとは

夕暮れの草原

「ファイトレメディエーション」は、植物を使用して汚染物質を取り除く、環境修復技術のこと。浄化効率の不安定や即効性のなさなどが懸念されるが、低コストかつ環境にやさしい技術であるため、今後のさらなる実用展開が期待されている。この記事では、土壌浄化の仕組みや実例などを紹介する。

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2021.02.09
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ファイトレメディエーションとは

山に囲まれた水田と働く男性

Photo by Sandy Zebua on Unsplash

ファイトレメディエーションは、ギリシャ語「Phyto(植物)」とラテン語「Remediation(修復)」を組み合わせた造語。植物が根から水分や養分を吸収する能力を利用して、土壌や水などの汚染物質を除去する環境修復技術のことを指す。

世界中で問題視されている土壌汚染の拡大や、環境規制の強化をきっかけに運用が開始。1990年代から低コストかつ環境にやさしい環境修復技術として、アメリカをはじめ世界中で研究開発や商業化がされるようになった。

現在、約400種類の重金属高蓄積植物が発見されており、環境修復の現場で使用されている。また、有機性有害物質や放射性物質への有効性も、さまざまな試験から確認されている。

土壌浄化の仕組み

植物は、土壌中に含まれる養分や水分と同時に、さまざまな元素も根から吸収している。ファイトレメディエーションではこの性質を利用し、有機性有害物質や放射性物質、重金属などの汚染物質を土壌中から除去する。

具体的には、草や樹木、根圏に生育する微生物を用いて、土壌、ヘドロ、汚泥、地下水などに含まれる汚染物質を植物内に吸収・蓄積させる。あるいは分解、大気中に蒸散、土壌に固定化させるといった方法をとる。

使用される植物種としては、アブラナ科植物、イネ科植物、ハイブリッドポプラ、ヤナギ、ヒマワリなど。浄化ができる物質は植物によって異なるが、カドミウム、鉛、ヒ素、有機水銀、セシウム、リンなどが挙げられる。

ファイトレメディエーションの実例

草原を歩く羊の群れ

Photo by 童 彤 on Unsplash

国内では、カドミウム汚染農地(水田)においてイネを用いたファイトレメディエーションがおこなわれた。

その方法として、まず高カドミウム吸収品種を汚染された水田にて栽培する。そしてカドミウムを吸収したイネは刈り取られ、最終的には焼却などによって処分される。さらに今後、焼却灰からカドミウムを回収し、工業的に再利用する方法も期待されている。

福島原発事故後には、ヒマワリを用いた放射能物質の除去実験が各地で試みられたが、実証には至っていない。運用には、ヒマワリに吸収された放射性物質の取り扱いに関する法律が確立されていないことや、ヒマワリの安全な収集方法、処理施設の準備などの課題をクリアする必要がある。

課題解決への鍵は、公的機関との連携

環境問題の解決が世界中で重要視されているいま、ファイトレメディエーションは研究開発だけでなく、産業としても成長していく可能性が高い。

今後、実用を進めるにはさらなる研究への投資と、最終処分場の大規模化や年間稼働率を上げる必要があり、公的機関との連携が不可欠であるだろう。

※ 参照サイト
ファイトレメディエーションによる汚染土壌修復の現状と展望
https://tenbou.nies.go.jp/science/institute/region/journal/JELA_2902013_2004.pdf
ファイトレメディエーションによる汚染土壌修復
https://www.pref.saitama.lg.jp/cess/center/kokusai/documents/14974.pdf
ファイトレメディエーションとは|国立研究開発法人 農業環境技術研究所
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/topics/envchemi/phytorem.html

※掲載している情報は、2021年2月9日時点のものです。

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