ローカルガストロノミーは、地域の風土、歴史、文化を料理に表現すること。食による地域活性化だけでなく、地域の食環境の保持や伝統の継承を目指している。おいしい料理であることはもちろん、人々の心をも豊かにしてくれる食事を、一度体験してみてはいかが。
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知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート
ローカルガストロノミーとは、地域の風土、歴史、文化を料理に表現すること。2017年にライフスタイル誌「自遊人」が提唱した考え方である。
単に地域の食材を使用するというだけでなく、食を通した文化や歴史の学びの提供や、サステイナブルな食環境の保持、地域のさまざまな営みと連携することによる地域経済の発展など、総合的に地域に貢献していることが特徴として挙げられる。
食を通じて地域の風土、歴史、文化への学びを深め、自然環境に配慮した食料の栽培をおこなえば、持続可能な地域の伝統継承につながる。
また地産地消を意識したレストランが増え、地域の農業や加工業と一体化した取り組みが推進されれば、より広領域においてビジネスチャンスが生まれ、地域の経済発展が期待できる。
そしてローカルガストロノミーが発展することで、地域の食が観光資源化。観光客にとっても、その土地の風土や伝統を体感でき、より旅が豊かになるだろう。
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新潟県は、日本海と雄大な山に育まれた日本でも有数の豪雪地帯。国内で5番目に面積が広く、妙高高原や湯沢高原などの自然豊かなスキー場、越後湯沢や月岡、妙高などの温泉、国立公園など、さまざまな楽しみ方のできる街だ。また、新潟県は国内有数の米の産地であり、その収穫量は日本一。とくに新潟県産コシヒカリは品質のよさが長年認められていることで有名だ。
新潟県には、米のトップブランドであるコシヒカリ、日本海の海産物、地酒だけでなく、数多くの在来種の野菜、発酵食、保存食などの食文化が、現在も深く生活に根付いている。
さらに新潟県では、日本有数の食文化の街を目指し、行政もローカルガストロノミーの推進を後押ししている。新潟県南魚沼市を拠点に出版されているライフスタイル誌「自遊人」の編集長・岩佐十良がプロデューサーを務める事業「日本海美食旅」では、「食を通じて地域を知ること」をコンセプトに、新潟県・庄内の食を育んだ歴史や伝統、暮らし、風土を伝えている。
茨城県は、山あり海ありの農業大国。日本の滝百選に選定されている袋田の滝や伊師浜海岸、岡倉天心ゆかりの地である五浦(いづら)海岸などの広大な自然や、弘道館や偕楽園などの歴史的建造物に溢れる豊かな街だ。
茨城県では、農産物、海産物、畜産物と、新鮮で質のよい食材に恵まれていることから、「関東の台所」とも呼ばれている。メロン、れんこん、白菜、栗などは日本一の収穫量を誇っているほか、アンコウや納豆、常陸秋そばなども特産品として有名だ。
茨城県北地域(日立市、常陸太田市、高萩市、北茨城市、常陸大宮市、大子町)では、「食」を通じて茨城県北地域の魅力発見を目指す「茨城県北ガストロノミー」と呼ばれるプロジェクトを推進している。
今年11月には思想家・岡倉天心のゆかり地である、北茨城市五浦の茨城県天心記念五浦美術館にてディナー会がおこなわれた。岡倉天心「茶の本」から着想を得た茨城県の料理人が、地域の歴史・風土までをオマージュしたコース料理を提供したという。
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ローカルガストロノミーは、人々の心を豊かにする食事体験を与えてくれる。その一皿一皿に込められたストーリーを味わうことで、その地を知り、自然や食材により深く感謝することができるだろう。また、地域活性をサポートする一つの消費手段でもあるため、旅先ではローカルガストロノミーを体験してみてはいかがだろうか。
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