女性管理職比率の2020年最新データが発表された。政府は2020年までに「女性管理職比率30%」を掲げているが、結果は達成率7.5%。女性の労働参加は、新たな視点の創出が期待されている。しかし、女性が社会で活躍していくためには、働き方改革など解決すべき課題が多そうだ。
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近年、就業人口の減少や共働き世帯の増加から、職場における女性の存在感が高まっている。政府は2003年に「2020年までに指導的地位の女性割合30%」を目標に掲げ、2016年4月には「女性活躍推進法」が全面施行された(※1)。
こうした背景から、帝国データバンクは「女性登用に対する企業の意識調査」を実施。その結果、企業の女性従業員の割合は増えているものの、管理職(課長相当職以上)に就く女性の割合は平均7.8%であることがわかった。この調査は2013年から行われており、過去最高を更新したが、前年比はわずか0.1ポイント増であった(※2)。
先述の帝国データバンクによる調査で「女性管理職30%」を達成している企業を見ると、規模別では「小規模企業」がもっとも多く、業界別では「小売」「不動産」「サービス」「金融」が上位という結果だった。下位に並ぶ「製造」「運輸・倉庫」「建設」などの業種は、肉体労働を要するため女性を採用する段階から苦心しているとの声があった。
一方、厚生労働省が2020年7月に発表した「令和元年度雇用均等基本調査」の結果概要によると、女性管理職割合の多い産業は「医療、福祉」が突出して高く、「教育、学習支援業」が続いた(※3)。いずれも女性従事者の多さが関係していると考えられる。
海外にも目を向けてみよう。国際労働機関(IL0)が2019年3月8日の国際女性デーに合わせて発表した女性の労働に関する報告書によると、2018年に世界の管理職に占める女性の割合は平均27.1%であった。しかし、当時安倍晋三政権下で女性活躍推進を掲げていた日本は12%にとどまるという結果に。
この数値は日本企業と外資系企業の総計でありながら、アメリカ・フランス・イギリス・イタリア・ドイツ・カナダ・日本の主要7カ国(G7)で最下位だった。世界的と比べても日本が大きく遅れをとっていることが読み取れる。
ILOによる報告書では、世界的に女性の管理職登用が進んでいない理由として、女性が家庭内で育児や介護などの無給の仕事に追われていることと言及している。日本国内ではとくに、次のような理由が挙げられる。
・家事育児における女性側の負担
・社会での男女格差
・年功序列が前提となった昇進制度
・子育てサービスや支援の不足
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女性が仕事で活躍する社会をつくるため、どのような課題があり、それに対して考えられる対策があるだろうか。具体的に紹介していく。
日本はいまなお家事育児は女性が中心で、会社やパートナーからの協力が得られず、第1子出産を機に離職する女性の割合は2018年度時点で46.9%いるのが現状(※4)。女性の働き続けたいという希望と現実の間に大きなギャップがある。
企業が産休育休制度の付与要件や期間などを見直し、女性が働き続けられる環境を整えることが重要だ。加えて、家のことは女性がするものという意識を取り払い、パートナーである男性が家事育児も参画することも対策としてあげられる。男性の育児休暇の取得しやすさを促進することで、女性の社会参加への後押しとなるはずだ。
管理職への昇進には、プライベートの犠牲が伴うイメージが往々にしてある。育児期で長時間労働や残業ができない女性には負担が大きく、向上意識そのものが薄れてしまいがちだ。また、女性に気を遣って本人の意向も確認せずに負荷の軽い仕事ばかり任せては、働く意欲や成長機会を阻害しているともいえる。
女性は出産後に職場復帰をしても、それまでのような勤務スタイルが容易ではない。長時間労働の削減やフレックスタイム制度、テレワークの導入・拡充によって、職場復帰への風当たりを軽減することが大切だ。働き方の自由度を上げ、会社全体のワークライフバランス改善に取り組めば、管理職のイメージ払拭にもつながるはず。
オランダでは男女ともに短時間勤務しやすい制度を整えたところ、男性の育児参加が進み、結果的に女性の離職率の軽減や登用が増加したという。
育児と仕事を両立させるための課題は、会社の内部だけでない。保育サービスを充実させ、待機児童などの問題を改善していくことが重要だ。保育士の人手不足の解消や、休業中の所得保障を整えていくために、国や地域も一丸となって取り組んでいく必要がある。介護問題も同様だ。
また、政府目標である「女性管理職30%」を達成している企業は7.5%にとどまることが同調査の結果からわかった。前年比は0.4ポイント上昇。さらに、管理職に女性がいないと回答した企業は約半数の46.9%だった。
まずは、育児・介護業界の労働環境を変え、人手不足を解消することが急務。例えば、日本では保育園や学校での手続きにはいまだ手書きが求められることが多いが、アメリカでは各種手続きを電子化されてる。学校と両親をつなぐツールにメールやオンラインシステムを用いるなど、双方に負担が少ないシステムが構築されている。
時代の流れに沿ったシステム改変や働き方改革の採用が、社会全体での意識改革の推進にもながるといえる。
また、国内では2021年1月1日に「育児・介護休業法」が施工され、子どもの看護休暇や介護休暇が時間単位で取得できるようになる(※5)。国から受けられる経済支援なども積極的に活用していきたい。
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「女性管理職30%」を目標としていた2020年も終盤。国や企業による女性管理職の必要性は認識されてはいるものの、解決すべき課題がいまだ多いのが現状だ。しかし、2022年4月には「女性活躍推進法」の改正されるなど、女性の労働参加は大きな変革期を迎えている。
女性による社会活動の参画は、単に人手不足に対する労働力確保だけでない。新たな視点の導入にもつながるはず。多様性を受け入れる社会のため、私たち一人ひとりが仕事と家庭のあり方を捉え直す必要がありそうだ。
※1 女性活躍推進法特集ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
※2 女性登用に対する企業の意識調査(2020年)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p200803.html
※3 令和元年度雇用均等基本調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r01.html
※4 「共同参画」2019年5月号
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/201905/201905_02.html
※5 育児・介護休業法について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
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